電気街駅前広場から西に少し歩くと中央通りにぶつかる。
 その通りを北へ進むこと数分、蔵前橋通りとの交差点の所に営団地下鉄銀座
線の末広町駅がある。
 今、由宇、詠美、彩の三人は、そんな所を歩いていた。
 三人は末広町駅の交差点を西に折れ、蔵前橋通りを湯島方面に向かって歩い
ている途中だった。
 目指す目的地は、蔵前橋通りと不忍通りとがぶつかる妻恋坂交差点にあるフ
ァミリーレストラン《ジョナスン》。
 そこは、飲食店が少ない電気街に於いて、落ち着ける数少ない場所といえよ
う。
 ただ、難点を上げるとすると、電気街から少し離れた所にあるということだ
ろうか。

 ジョナスンに行こうと言ったのは由宇だった。
 どうやら彼女は朝から食事を摂っておらず、腹ごしらえをしたいと二人に申
し出た。
 詠美も彩も涼しい所で休憩したかったので、由宇の申し出を受け入れた。

 更に言うなら、今回、二人を電気街に呼んだのも由宇だった。
 彼女は、明日のこみパの為東京に出てきていた。
 既に準備を終え暇を持て余していた由宇は、彩と詠美に連絡を取った。
 すると、丁度二人も暇だということなので、由宇の提案で電気街へ繰り出そ
うという話になった。
(その際、詠美だけはかなり渋ったが、結局、由宇に話し負ける感じで折れた)

 蔵前橋通りをジョナスンに向かって歩く三人。
 先頭を彩、真ん中に由宇、しんがりが詠美だった。

「ねぇ…」

 後ろを歩く詠美が、前を行く由宇に声をかけた。

「あん? なんや?」

 歩きながら後ろを振り返る由宇。

「なんでアキバなのよ…」

《アキバ》とは、電気街の事を指すオタク用語の一つだ。
 もっとも、一般人の中にも《アキバ》と呼ぶ人はいるので、一概にそうとは
言えないのだが。

「なんで…って、東京のオタクが休みに行く場所言うたら、やっぱりアキバや
ろ?」

 詠美の質問を、不思議そうな面持ちで答える由宇。

「そうじゃなくて、どうしてあたし達みたいな年頃の乙女が、なにを好きこの
んでアキバまで来なくちゃならないのよ〜! もっと他に行く場所あるでしょ!
原宿とか表参道とか…」

 由宇は詠美に向かって、「ハン」と小馬鹿にしたように笑った。

「アホ、なに今更カッコつけてんねん! ウチらみたいな人間がそんなトコ行
ったっておもろないだけや! …ええか詠美、一度この道に足を踏み入れた以
上、そんな人並みな青春は送れんのや! それがオタクの持つ業なんや!」
「うにゅ〜」
「…けど、そんなに悲観することやない。何故なら、その業のおかげで、ウチ
らオタク女達は、普通の女の子が経験出来ない青春を満喫することが出来るん
やからな!」

 自分がオタクということに、ポリシーというか美学というか、とにかくそう
いうものを持っている由宇らしい意見だ。

「そ、それはそうかもしれないけど〜、でもぉ〜…」
「でもやあらへん! 大体あんた、原宿とか表参道とか言うたかて、原宿が何区
にあるか知ってんのか?」
「そ、それくらい知ってるわよ!」

 ぷう、と頬を膨らます詠美。

「ほう〜、なら何区や? 詠美ちゃん?」

 意地悪そうに目を細めて訊く由宇に、詠美は胸を張ってこう答えた。

「原宿区に決まってるじゃない! いっぱんじょーしきよ、そんなの」

 由宇は頭を押さえ嘆息をつく。

「アホ! 渋谷区や! 大体、神戸のウチが知ってんのに、なんで東京モンの
あんたが知らんのや!」
「い、いいじゃないよ〜、別に…」
「良くあらへん! ちょっと彩! この脳味噌スポンジ娘になんとか言ってや
ってぇな!」

 ワンピースの裾を揺らしながら、くるりと振り返る彩。

「なんとか」
「いや、そうやのうて……」

 素のままで言う彩。これには、さしもの由宇もリアクションに困った。

 そうこうしている内に、三人はジョナスンに辿り着いた。



「いらっしゃいませ〜」

 ドアを開けて中に入ると、ウェイトレスの娘が営業スマイルで迎えてくれる。

「何名様ですか?」

 ウェイトレスに向かって右手で“3”を作り、「3人や」と答える由宇。

「少々…お待ち下さい…」

 軽く店内を見渡すウェイトレス。その後、すまなそうな顔を作る。

「申し訳ございません、只今空いている座席がございませんので…」

 時間帯が時間帯故に、彼女の言うとおり店内はほぼ満席状態だった。
 しかし、現在座席待ちは由宇達だけだったので、3人は暫く待つことにした。

「それでは、こちらのノートの方にお名前をお書き下さい」

 そう言って、レジの方を手で案内するウェイトレス。
 そこには、オーケストラの指揮者が楽譜を乗せるような台が備え付けてあり、
台の上には一冊のノートが開かれて置かれていた。
 混雑時の座席予約用のノートだ。

「あたし書く〜」

 妙にウキウキした感じで、ノートの置いてある台へ向かう詠美。
 座席予約は詠美に任せて、由宇と彩は入口にある椅子に腰を下ろした。

「フンフン〜フンフンフン〜…ラララ〜ララララ〜♪」

 鼻歌混じりにペンを走らせる詠美。
 彼女はとてもご機嫌のようだった。
 由宇は、そんな詠美の姿を呆れるような眼差しで見ていた。

 ――あのボケ娘、スケブかなんかと勘違いしてるんやないやろな…。

 事実、彼女は勘違いしていた。
 詠美は座席待ちのノート一面に、まるでファンの為に書くような感じで、大
きな絵を描いていた。
 最近大手18禁ゲームメーカーから発売された、純愛&鬼畜シミュレーショ
ンゲームに出てくるヒロインの絵だ。
 さすが詠美、オタク文化の流行には目ざとい。

「ランランラン〜っと!」

 しかし、この短時間の間に、ボールペン一本だけでスラスラと絵を上手に描
いてしまう彼女の才能は賞賛に値する。

「うふふふ、やっぱしぃ〜、あたしってばちょぉ〜天才ちゃんね!」

 無論、この性格を除いてだが。



 数分後――。

 店内に動きがあった。
 何人かの客が席を立ち、レシート片手にレジに歩いて行く。
 入れ替わるように、空いた席へウェイトレスが向かい、食べ終わった食器類
を片づけ、タオルでテーブルの上を拭いていく。

「いよいよ…ですね」

 それを見ていた彩が、誰に言うともなく呟いた。

 別のウェイトレスが座席待ちのノートを手に取る。

「…っ!?」

 そのウェイトレスの目が驚きに見開かれたかと思うと、いきなり彼女は「プ
ッ!」と吹き出した。
 そして、笑いを堪えながら震える声で座席待ちの客の名を呼ぶ。

「さ、3名でお待ちの、《大庭詠美ちゃん様と愉快なシタボクの二人》様」

 店内に走るざわめき。こぼれる失笑。
 由宇はポカンと口を開けていた。
 詠美は名前を呼ばれた小学生のように、「ハイッ!」とニコニコした顔で立
ち上がる。
 彩は、相変わらずなにを考えているのか判らなかったが、椅子からゆっくり
と立ち上がった。



 笑いを噛み殺したウェイトレスに連れられ、座席へと向かう三人。

 時折、他の客からクスクスと笑い声が聞こえる。
 由宇は、彼女にしては珍しいほどに顔を真っ赤にしながら俯き歩く。
 詠美は、まるで女王の行進のように鼻高々だ。
 彩だけは、別に普段と同じだった。

「そ、それでは、こ、こちらメニューになります…」

 座席に着いた三人に、メニューを差し出すウェイトレス。
 メニューはプルプルと震えていた。

「ち、注文がお決まりになりましたら、お、お呼び下さい…」

 それだけ言うと、ウェイトレスはそそくさと厨房の方へと消えた。
 やがて、そちらから大きな笑い声が聞こえ、由宇はますます自分の頬が熱く
なるのを感じていた。

「さ〜て、なににしようかな〜…」

 そんな由宇の事など何処吹く風のように、パラパラとメニューを開く詠美。

 ちなみに、座っている席は通りに面した窓際の禁煙席で、座席は詠美と由宇
が並んで座り、対面に彩が座っていた。

 無言のまま、隣に座る詠美の頭をゲンコツで殴る由宇。

「ふにゅ!? いったぁ〜い! なにすんのよ〜、温泉パンダ〜!」
「『なにすんのよ〜』…やない! こんのおーばか詠美! 今度また今みたい
なオモロイ事やってみぃ! 簀巻きにして有明の海に放ったるさかい! よう
覚えときぃや!」

 由宇は、目に涙を浮かべて抗議する詠美に向かって、有無を言わせぬ迫力の
オーラを体中から吹き出させながら言った。
 その雰囲気に圧倒され、「う、うん…」と首を縦に振る詠美。
 しかし恐らく、彼女の頭はどうして怒られたのかを理解していないだろう。
 何故ならば、それが大庭詠美という少女なのだから。



「…ん〜、ほなら、ウチは冷やしパスタセットとアイスコーヒーにしよか?」

 注文する品を決め、メニューをパタリと閉じる由宇。

「…え〜と、それじゃあたしは、このパンケーキ! それとジンジャーエー
ル!」

 同じように詠美もメニューを閉じた。
 そして、二人は同時に「彩は?」と訊く。

「わたし…その、余り…お腹すいてないから、野菜ジュースだけで…いいです…」

 三人のメニューが決定したところで、由宇が手を挙げ「スンマセン!」とウ
ェイトレスに呼び掛けた。

「あ…そや!」

 呼び掛けた後で、由宇はなにか思い出したように席を立つ。

「ウチ、ちょっと家に電話してくるさかい、詠美、ウチの分頼んどいてや」
「ええ〜!? なんであたしが〜」

 不満の声を漏らす詠美。だが、そんな彼女の不平など全然耳の中に入れず、
「ウチは冷やしパスタセット、サラダとパン付きのヤツな。それとアイスコー
ヒーも頼むで! あ、アイスコーヒーは食後に持ってきてもらうようにしてや」
と、まくし立てるように喋ってから席を離れていった。

「んもう! パンダのクセに、この詠美ちゃん様を使いっぱにするなんて、ち
ょ〜なまいきぃ〜!」

 と文句をいいながらも、メニューを開き、由宇の注文する品を確認しつつウ
ェイトレスを待つ詠美。

 その時、「あの…すみません…」と彼女は後ろから誰かに呼ばれた。
 振り返る詠美。そこには、自分と同じくらいの年齢と思われる少女が立って
いた。
 髪をショートにし、ピンク&ホワイトの半袖ベースボールシャツにライトブ
ラウンのズボンといった格好の、可愛らしい少女だった。
 自分の知り合いではない。詠美は首を傾げた。
 そんな詠美に向かって、少女はおずおずと話し始める。

「さ、さっきウェイトレスに名前呼ばれてましたけど、あ、あの…大庭詠美さ
ん…ですよね?」

 コクリ、と頷く詠美。
 少女が「良かった〜」と笑顔をこぼす。

「私達、あなたのファンなんです! もし良かったら、スケブにサインとか貰
いたいんですけど…」

 そして、上目遣いで訊いてくる。

「私…達?」

 再び首を傾げる詠美。
 どう見ても、目の前には女の子一人しかいない。
 それなのに複数形とは、これ如何に?
 いくら詠美とはいえ、そのくらいのことには気付く。
 詠美の意を「あっ!」と察知した少女は、後ろを振り返る。
 彼女の視線の先を追う詠美、すると、ここから少し離れた席にもう一人の少
女が詠美達を伺い見ていた。
 もう一人の少女は詠美と目が合うと、照れながら会釈した。

 詠美の頭から疑問が氷解した。

 つまり、彼女達は自分達と同じ趣味の人間で、しかも自分のファンであると。
 彼女らはたまたまジョナスンに来ていて、そして同じようにたまたま来てい
た自分達を見つけたと。

 解けた疑問という名の氷の中から、《こみパの女王》という変な自尊心が姿
を現し、詠美の中で鎌首をもたげた。

「まぁねぇっ! あたしってば、ちょ〜ゆーめーじんだしぃ〜!! いいわ
よ、スケブでもサインでも、なんでもおっけぇよ!」

 お約束の台詞と共に立ち上がる詠美。
 そして、「行きましょ」と少女を促し席を離れようとした時、彼女は一人、
座席に残っている彩の方に頭を向けた。

「…と、言うわけでぇ〜、あたしはファンサービスしてくるから〜、彩、あん
たは温泉パンダとあたしの分、注文しといてよね!」

 それだけ言うと、詠美は少女と一緒に彼女の連れが座っている席の方へ歩い
て行った。

「あ…」

 残された彩は、去りゆく彼女に手を伸ばしてなにか言おうとしたが、詠美と
入れ替わるように、ウェイトレスがハンディー・ターミナルを片手に彩の脇に
立つ。

「ご注文はお決まりですか?」

 ピッピッピッ、とターミナル上のキーを叩きながらウェイトレスが訊く。

「え…あ…っと…その…」

 言葉に詰まる彩。
 彼女の頭の中からは、既に自分以外の人間が頼んだメニューの事など綺麗さ
っぱり消えていた。

「ご注文は?」
「…あ…そ、その…えと…」

 ゴクリ、と彩の喉が音を立てる。
 心臓は、バクバクと普段の倍の速度で鼓動を刻んでいる。
 額から汗が滲んで来ているのが自分で感じられた。

「……」
「……」

 気まずい沈黙。

『駄目よ、彩! こんなことで挫けてしまっては!』
『そうだよ、彩! さぁ、勇気を出して…』
『彩! 頑張れ!!』

 ――みんな!?

 彩は、自分の漫画に出てくるキャラクター達の声を訊いた気がした。
 彼らは、皆、彩のことを励ましていた。

『さぁ! 彩!』

 ――うん! わたし、頑張る! みんな、ありがとう!!

「す、すいません…注文お願いします」
「はい…」

 唾を飲み込む彩。

「あ、あの、もずく…三人前…大盛りで…」



「おっまったせ〜!」

 由宇が席に戻ってきた――と、自分達の席に彩しか座ってないのに気付き、
その彩に「詠美は?」と訊く。
 すっ、と店内のある一点を指さす彩。
 彼女の指の先には、由宇の知らない女の子達と楽しそうに談笑している詠美
の姿があった。

「詠美の友達?」

 由宇の問いに、彩は首を横に振る。

「詠美ちゃんのファン…らしいです…」
「なるほど…」

 納得して席に座る由宇。

「ふふふん♪ やっぱ、ゆーめーじんはつらいわよね〜」

 やがて、詠美が意気揚々で戻ってきた。向こうで余程嬉しいことがあったの
だろう。その顔はこの上ない程に緩んでいた。

「お待たせしました」

 そこへ、ウェイトレスがトレイに食事を乗せて三人の席の前に立つ。

「待っとったで〜! ウチのまんま!」

 胸の前で手を摺り合わせながら、自分の前に器が置かれるその時を待つ由宇。
 ウェイトレスが慣れた手つきで、三人の前に割り箸を並べ、その後、器を出
した。
 つーんとした酢醤油の匂いが三人の鼻腔を刺激する。

「大盛りもずく三人前です。…ごゆっくりどうぞ」

 くるくるっとレシートを丸め、ウェイトレスはテーブルの隅にあるレシート
入れにそれを置いた。

「そうそう、大盛りもずく! ウチはこれを待っとったんや…って、ちょい待
ちぃっ!!」

 由宇が厨房へ戻ろうとする彼女を呼び止めた。
「はい?」と振り返るウェイトレス。

「ウチは冷やしパスタセットを頼んだんやで! それなのに、なんでもずくが
出て来るんや!? しかも大盛りで!」

 席から立ち上がり、もずくの入った器をウェイトレスに突き出す由宇。

「そ、そうは申されましても…」

 ウェイトレスは困った顔で、今し方自分が置いたレシートを由宇に見せた。

「私どもは、大盛りもずく三人前と伺っておりますので……」

 レシートにはタイプされた文字で、《モズク オオモリ 3》としっかり刻
まれていた。
 由宇は座席ナンバーを確認する。
 間違いない、自分達の席だ。
 店の方に落ち度は無い。彼女らは自分の仕事をまっとうしただけだ。
 となると、こちらの注文ミスとなる。
 電話を掛けに行くとき、自分が注文を頼んだのは?
 答はすぐ出た。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇいぃぃぃぃぃぃぃぃぃみぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 長年追い求めた親の仇を見つけたかのように、物凄い形相で詠美を見る由宇。
 由宇の身体から立ち上る凄まじい殺気に、店全体が細かく震えた。

「な、ち、違うよ! あ、あたしじゃないもん!! これは、彩が……」

 びくっ、と身を竦めながら、嫌々するように首を左右に降り続ける詠美。
 そんな彼女の頭に、由宇は「言い訳すんな!!」とゲンコツをくれる。

「こんのボケナスゥッ! さっきウチが言ったこともう忘れよってからに! 
今度という今度は許さへんで!!」
「なによ! あたしじゃないって言ってるでしょ!! 大体パンダだって、
さっきあたしにジュース引っかけたじゃない! これでおあいこよ!!」

 売り言葉に買い言葉。

「はん! あんなの引っかかるヤツが悪いんや! だからアンタは、いつまで
たってもおーばか詠美なんや!!」
「むっきぃ〜!! なんですってぇ〜!! このツルペタ温泉パンダ!! も
う一回言ってみなさいよ!!」
「ああ、何度でも言ったるわ! それこそコピー&ペーストでな! 行くで!
このおーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーば
か、おーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーばか、おーば
か詠美ッ!!」
「もう、あったまきた!! 泣かす!! どつく!! ブチのめす!! あん
たなんかボコボコにしてやるんだから〜!!」

 たちまち店内は大乱闘。
 響き渡る悲鳴、砕け飛ぶ食器、飛び散る食べ物。

「うりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 ガッシャン、ガッシャン、ドッカン、ドッカンと次々破壊されていく店内。

「あ、あのお客様!!」
「邪魔すんな!」

 どげしっ!

「あぐっ」

 店長とおぼしき人物が止めにはいるが、由宇の裏拳一発で沈む。
 例えるなら、今の二人は荒れ狂うサイクロン。
 こうなった以上、もはや、誰も彼女らを止めることは出来ない。

 そんな嵐の中、彩は一人でもずくを「ちるちる」と啜っていた。

「美味しいのに……」





NEXT

BACK