《魔術師は馴れ合わない》


 さて。
 物事に向き合うということは、往々にして辛いものだ。
 けれども、逃げ回っていて時間が解決してくれることは少なく、大体にして時間の経過が致命的な手遅れという状態を引き起こすことになる。
 この場合、それが当てはまるのはまた、部外者に成り果てて終わることだ。最初からそうだったのではなく、途中下車を余儀なくされる、もしくは仲間外れにされることになって、甚だ面白くない。まだ君は子供だから―――そんなことを物知り顔の大人たちに言われて反発を覚えない子供がそういないように、事態に一人置き去りにされるのはあれっきりにしたい。
 それだけが、ただ唯一の俺の命を全うする道だったとしてもだ。
 幾多もの犠牲を払って俺だけが、日常の揺り籠で眠っていられる構図は、我慢がならない。
 行動を起こさなくてはいけない。
 せめてもの目標、最後に残った俺の立ち入れる行動、それは聖杯戦争の完全終結。
 どうしたらそうなるのか考える。
 七人のマスターとサーヴァントのうち生き残っているのはマスターで三人。サーヴァントで二体。俺自身は聖杯を望んでいないので、キャスター達とアサシン達の争いになる。
 まず動いているのはキャスターと葛木。聖杯戦争の正規の生き残りである彼らが聖杯を手にする権利という点ではあるのかも知れない。現に今も動いている。正当性を云々するつもりは全くないのだが、あの二人には何故か聖杯に関して不安は感じなかった。葛木という知った顔がいたからというわけでもないのだが、彼らが聖杯を手にすることでトンデモないことになるとは思えない。彼らの善性を信じると言うよりも、その行動目的に大それたものを感じない。
 問題はアサシンとそのマスターだ。
 アサシンは元々はキャスターが呼び出したと言っていたが、その割には実際に現れたアサシンに対してあまりに無防備だったように思える。本当にあれは彼女が呼び出したものなのだろうか。直感だが、違うと感じた。
 そして謎のマスター。
 一目見た時から、この相手は危険だと感じていた。存在すら許してはいけないという気がして仕方が無い。サーヴァントであるアサシンに対してはそんなことは思わなかったくせに、俺はあのマスターを怖れていた。あれに聖杯の力を渡しては絶対にいけない。わからないが、そう思える。外見ではなく気配ではなく彼女の奥底の何かを感じたのだ。魔術師としては半人前だが、直感を信じるぐらいに端くれの自負はある。
 最後に、葛木を訪ねて来た老人。
 胡散臭さと怪しさは一番だったが、あのやり取りを信じる限りは聖杯戦争には関わっていなかったようだ。あくまで目的は葛木だったらしい。でも聖杯の欠片とやらに関心を示していた点からしても危険な存在だった。あの状況で平然としていられるだけでも只者ではないのだろう。ただ聖杯に関しては脅威は感じない。マスターではないからだ。仮に手に入れても実現の術を知らないだろう。あの言葉は葛木に対する牽制で言ったようにも思える。肝心の葛木は全く興味を示そうとしなかったが。
 そして聖杯。
 アーチャーが壊したといい、欠片があるとかないとか。
 あの状況を信じるなら、聖杯の欠片とやらが存在するのは間違いない。
 それを、生き残りたちは狙っている―――だからまだ聖杯戦争は終わっていない。
 その欠片にどんな力があるのかはわからない。キャスターは俺にそんなことは一言も言わなかった癖に、老人が知っていたというのは葛木に話しているのを唇の動き読んだか、何か俺の知らない理由で知ったのだろう。
「あっ」
 そこで、キャスターのヤツがどうして俺の記憶封鎖を解いたのか今頃になって理解できた。
 あの女は俺の記憶を盗み見たのだ。自分の奔流するかつての記憶に振り回されていたせいで気づかなかったが、俺しか知らないことまであいつは知っていた。
 記憶を封じられていたことすら知らなかったくせに、後ではそれが遠坂の手によるものだとわかっていたのはそれが原因だ。
「くそっ」
 今更罵ったところで後の祭りだ。
 状況を全て並べたところで、まずは俺はどう動きべきかを考える。
 知ることが大事だ。
 だが、キャスターは俺が呼びかけても応えてくれないだろう。彼女にとって俺は用済みなのだから。かといってあの魔術師と接触を取るのは自殺行為だ。
 そうなると、どうしたものか……。
 そんな考えで俺が訪ねて行った先は教会だった。
 何せ言峰綺礼という前任者が物語るように、中立の審判役なんて言っても丸っきり信用できない存在ではあったが、他に頼るべき筋もない。
 かなり身構えつつ向かったのだが、いけ好かないが第一印象でそれを払拭することなく姿を消したあの男の後釜の神父は、これまたどこをどうとっても善人としか言いようが無い爺さんだった。綺礼で懲りたのか、極端な人材しか揃っていないのか、どっちかはわからなかったが、俺にとって本当に幸いした。
 そしてそこで初めて俺は、言峰綺礼がただのいけ好かないでは済まない奴だと知った。最初にあいつも実はマスターだったと聞かされた時は、腸が煮えくり返るような気持ちだった。初めて教会に足を踏み入れた時、もうあの時既に俺たちは謀られていたのだ。
「あいつ……」
 今更歯噛みしても吠え立てても仕方がない。
 仕方がないのはわかっているのに止まらない。
 あいつは、敵だった。
 セイバーが足を踏み入れなかったのも、遠坂が信じていないと言っていたのも当然だった。俺は彼女らの考えに頷きながらも、嫌悪し憎みながらも、どこか甘いところがあった。奴に対して徹底しきれていなかった。
「………」
 頭を抱え、項垂れる。何もかにもが遅過ぎた。
 終わってしまってから知ったところで何の意味があるというのだ。
 未然に防ぐ、または起きた直後に対処しなくてはどうしようもない。
 こんな後始末まで済んだ後で暢気にお茶を飲みながら話すのは完全に部外者ではないか。
 大きく息を吐いて、もう一度最初から自分を見つめ直す。
 そう、物事に向き合うということは、往々にして辛いものなのだ。
 今こうして辛さを味わっている。かみ締めている。
 二度と、二度と、二度と、そう思ってなんど躓いてきただろう。
 次こそは、次こそは、次こそは、何度誓い直してきたことだろう。
 きっとそれは反省の言葉ではなく、後悔でも嘆きでもなくて――――。
「また一つ……」
 心の中に積み上げた。重く、大きなものを。
 そして、俺はまた衛宮士郎に戻る。
「それで、聖杯戦争の方は……」
 俺を心配する相手に質問を促した。落ち込むにしても悔やむにしても、ここですることではない。
 そんな調子で話を続けて貰うと、聖杯戦争について協会と教会としては決着済みになっているらしい。参加者は全員死亡、聖杯は十年前と同様に損壊して消えたと判断されている。どうしてこうなったかといえば生き残りのマスターが全員正式な存在ではなかったからだ。協会に登録されていない魔術師である俺、魔術師ではない葛木、そして正体不明の魔術師の三人しか残っていない。報告書によると元々のキャスターのマスターは魔術協会から派遣された魔術師だったらしい。教会側の報告書だからどこまで本当かは分からないが、協会として正式の代表ではなく、数合わせの為に呼ばれた人材らしい。協会からすると本命のマスターの負担を減らす為に雑魚を一組用意したというところなのだそうだ。それを聞いてキャスターがルールなんてものはないと嘯いていたのが何となくわかった。彼女自身が、当て馬扱いされていたのだから。葛木に乗り換えたのも当然だ。そしてアサシンのマスターは不明とされていた。いつの間にか召還されて、いつの間にか消えていることになっている。修復作業中の教会から発見された恐らく綺礼によるものと思われるメモによるとアサシンのサーヴァントは侍の姿をしていたらしい。俺たちが見たアサシンとはやはり別人だった。因みに協会から派遣された魔術師は勿論綺礼ではなく、その魔術師は俺より先に敗退したことになっていた。先の言う通りならば綺礼の手で討たれたのだから当然だろう。そのランサーのマスターだったとされる人物の名前を見て驚いた。
 バゼット・フラガ・マクレミッツ。
 俺に名乗ったあのアサシンのマスターと同じ名前だったから。
 彼女のことを神父に聞くと、生死は不明との事だった。彼女こそが協会の本命で、封印指定を受けた魔術師を捕縛するような武闘派として、魔術は勿論格闘能力もかなりのものだったのだそうだ。キャスターのマスターのことも含めると協会が今回の聖杯戦争に賭ける意気込みと、その失敗からの失望は何となく想像できた。
 綺礼に不意打ちで討たれたという彼女が今もまだ生きていて、キャスターが召還していたアサシンを奪ってまだこの町にいる。そう考えるのが普通だが、だとすれば協会に連絡を取らないのは何故だろうか。失敗したからもう終わりとか、そういうものなのだろうか。その辺の疑問を神父にぶつけると、爺さんは士郎君はその魔術師らしくないところがいいなんてピントの外れたような返事が返ってきただけだった。そんな風に言われて普通なら腹が立つところだが、人の良い爺さんの魅力はそうならないところだった。実際、俺も黙っている筈のことまで喋ってしまっていたし。向こうも俺を気に入ってくれていて、俺が魔術師だということを協会に黙っていてくれるというのは勿論、色々と便宜を図ってくれることを約束してくれた。協会と教会の対立を利用して付け入ろうと考えて乗り込んできた自分が恥ずかしくなるぐらいに、いい人だった。これでもし実は……なんてことになったら、もう笑うしかない。
 その神父さんは当然ながら魔術師ではなかったものの、魔術というものを多少は心得ているようで、俺の体調についてもズバリと言い当ててくれた。あの一晩限りの居候の置き土産の役割は俺の魔術回路のスイッチを入れるものだったらしい。何でも俺の魔術のやり方は間違っていて、普通の魔術師では有り得ないような状態だったそうだ。言葉では意味が分からなかったが、体の中の状態と頭の中のイメージが重なった時に、何となく理解できた。これまた教会の資料として幾つか魔術に関する基本的な資料を渡されたので、有難く戴いた。
 そんな至れり尽くせりの扱いを受け、お土産まで貰ってしまった俺にその老人はいつでも遊びに来て欲しいと最大級のお言葉を賜った。
 綺礼に対することへの葛藤はあったが、結果としては最上で、これで一気に道が開けた気分だった。ただ最後に、
「士郎君の言ってたキャスター、実は君が今日来たみたいに僕に挨拶に来たよ」
 と言われたのには参ったが。出し抜くどころか、俺の道は既にあいつが通った道らしい。しかも神父は彼女とも何やら秘密の盟約を結んだらしい。内容は聞けなかったので、悪いことにはならないという爺さんの言葉を信じるしかなかったが、酷くがっかりした。
「はぁ……」
 やっぱり俺は部外者に押しやられそうになっていた。
 このままだと、そうなる。
 俺のいないところで、話が終わってしまう。


「やばっ」
 朝を久々に土蔵で迎え、起こしてくれるものもいなかったせいで、家を出るのが遅くなった。最近は早めに出ていたことで普段以上に遅刻の心配など全くなかったから、余計に焦ってしまう。
「うっわー、もう生徒いないし」
 坂道はひどく静かだ。
 結構人通りの少なくない通学路だというのに通りを歩く生徒の姿が見えない。
 時間はまだ余裕がある筈だが、こんな時間に出ることは滅多に無いのでこんなものなのかも知れない。小走り程度に急ごうと足を速めることにする。
「おまえ―――」
 途中、電柱に寄りかかっていた人影を見るまでは。
「君と話をしたいと思っていた。それだけではいけないかね」
 先日と変わらぬ格好をした、バゼット・フラガ・マクレミッツと名乗った女魔術師が俺を見て笑う。
「話だと」
「ああ。先日見たところキャスター達と共同歩調は取っていないように見えた。接触してみるのは当然だろう?」
 電柱から体を離して、俺に近づいてくる。
「そう身構えないで欲しいものだ」
「無茶を言うな」
「一応、警戒しているということか」
 一応どころじゃない。
「まあいい、ちょっと話さないか」
「そりゃあ良かった。俺も聞いておきたいことがある」
 内心で『同調、開始トレース オン』と、背中に隠しておいた短めの木刀に魔力を通す。美綴との稽古の際にお古として貰ったものだ。
 昨晩土蔵で練習した甲斐あって、息をするような自然さで、“強化”が成功する。
 教会で貰った神父向けの魔術教本は、魔術を使えない神父に対して仮想敵としての魔術師の仕組みを解説してあった。大まかに仕組みも体で理解した。あと、先日屋上で使った俺の魔術は強化というよりも“変化”だったらしい。知らず一段階上の魔術を行使していたようで、多少の自信にはなっている。
 尤も今、この木刀を強化したところで、この目の前の魔術師に対抗できるとは思えないが。ただ、小規模の魔術ならこれで一度凌げればいい。多くは期待していない。
「おいおい、そんなに警戒しないで欲しい」
「おまえはランサーのマスターだったそうじゃないか」
 肩を竦める彼女の反応を無視して、問う。
「ほう、キャスターから聞いたのか?」
 その反応からして、俺たちの普段の動きは把握していないらしい。好都合だった。
「言峰綺礼に殺されかけて令呪を奪われ……どうして今更こんなところにいる?」
「事情を知っていてなおそんなことを聞くのか?」
「ああ。おまえがうろちょろしなければ聖杯戦争は終わってるんだ」
 実際は違うのかもしれないが、それは後回しだ。
「騙されました。負けました。ごめんなさい。それでノコノコと協会に戻れると君は思っているのかい?」
「ふん、戻ればいいだろ」
 失敗失態は誰にでもある。それをどう次に生かすか、繰り返さないかが大事なんじゃないか。
「やり直しが利かない事は世の中には沢山ある。今回のこともその一つだ」
「ならなおのこと、今更聖杯に執着する理由がわからない」
「君は聖杯を求めてこの戦いに参加したのだろう? だったら私がこうしているのもわかる筈だと思うが」
「違う。俺は聖杯を欲してなんかいない」
「なに?」
「聖杯が悪しき手に渡らないように、無駄な血を流さないようにと思っているだけだ」
「そうか……そういうことか……」
 それを成すことが遠坂やセイバーに対する餞になるとは思っていない。
 ただせめてものけじめはつけておきたい。
 俺は参加したのだ。
 傍観者でも、被害者でも無い。参加者なんだ。
 参加者として、その動機に沿うだけの行動は最後まで取りたいと思う。
「おまえが聖杯に望むのは一体なんだ。そして最近は沈静化しているとはいえ、この町の騒動におまえはどう関わっているんだ?」
「私よりもキャスターを問い詰めたらどうだ」
 そうしたいのは山々だが、あいつらは捕まらない。
 それに俺にはわかる。こいつこそが一番の敵なのだと。
 目の前にしてヒシヒシとそれを強く感じる。
 絶対に倒さなければならない。
「どうやら、お前もコルキスの穢れし女に誑かされたか」
「なんだと」
「自分に刃を向けられなければ信用万歳か。お目出度い」
「そんなことはない。俺だって考えてる」
「考えてる、か。こんなところで暢気に過ごしているようだからてっきり何も考えないで動いているかと思ったが、そうではなかったのだな」
「くっ……」
 相手は非日常に身を置いていることを揶揄っている。
 落ち着け。
 所詮、詰まらない挑発だ。
 大方話好きの奴でロクな奴などいない。
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
 □□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□。
「□□□□□」
「□□□□□。□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□」
「□□□□」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□?」
 □□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□。
「□□□□」
 □□□□□□□□□□□□□。
「□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□?」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
 □□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
 □□□□□□。
「□□、□□□□□□□□? □□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□、□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□? □□□□□。□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□? □□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□、□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□。□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□、□□□□□□□□□□、□□」
 □□。□□□□□□。
 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□。
「□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□!」
「□□□□□□」
 □□□□□□□□□□。□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□。
「□□□□。□□□□□□□□□□、□□□□」
 □□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□。
「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□?」
「□□□□」
 □□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□。
「□□□□□□。□□□□□□□□□、□□□□。□□□□□□。□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□?」
「□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」
「□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□」
「□□」
 □□□□□□□。
 □□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□。
「□□□、□□□□□。□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□」
「□□?」
 □□□□□□□□□。
「□□、□□□□□□□□□□□。□□、□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□」
「□□□□」
「□□□□□□□、□□□□」
「□□」
「□□□□」
「□□□□□□□□□□□□□□□□□!?」
 一瞬。
 その一瞬で額に手の平をぶつけられた。
 何たる油断。
 こんなんでは俺の……。
「□□□□□□!?」
「□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□」
 そんな自嘲めいた言葉を聞きながら、俺の意識は暗転した。

 目覚めた時、バゼットに誑かされそうになったような気がするということしか覚えていなかった。敵と喋って怒ったのだからきっと当然だろう。



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