《プロローグ/五日目》
「悪いけど、こういうことだから」 「―――そのようですね。ですが、私は貴女に感謝しないといけないのでしょうね」 「はあ? どうしてそうなるのよ」 「貴女はシロウを護る為にそうしたのでしょう。遺憾ですが、シロウはこの聖杯戦争に関わるには少し純粋すぎた。生き残るには難しかったかも知れません。サーヴァントとしてマスターの身を案じるのは当然のことです。残念ですが、今回は諦めましょう」 「ふぅ……できれば、あなたがあたしのサーヴァントだったら良かったのに」 「私も、そう思います。縁がなかったのでしょう」 「そういうものかしら。でも、あいつも結構今では気に入ってるのよね。誰かさんみたいに素直じゃないところが厄介だけど」 「そうですか。せめて、貴女達が今回の勝者になることを願ってますよ」 「ふふ、ありがとう」 「では、さようなら、リ――― それは夢だったのだろうか。 聞いたこともない筈の二人の声を聞いていた。 一度も耳にした記憶のない会話だったのに、酷く胸を揺さぶられる声だった。 |