もらとり庵 ゲストの小説

「退屈なロジック」Chapter-2:子供相手と言うこと

by 久々野 彰

 今日は、久しぶりに課外での実験を行うことになりました。
 先日組み上がったばかりの保母プログラムを近くの保育園にて試すことに決定した為です。
 これは感受性の高い幼児に対して支障無く対応できるようにと考えられたプログラムで、多くの専門家の意見と実際の現場の声を集めて様々な変事に対応できるように多くの推測パターンと、その対処方法についてインストールされています。
 ですが・・・あくまでそれは予測範囲でのことで、実際はそう上手くはいかないようです。


 私は、昔、一週間だけ通った高校の時と同じく大勢の保育園児の皆さんの前に、立っています。
 違うのは、高校の時はその学校で指定された制服を着ていたのに対して、今日は大きめのトレーナーにジャージのズボン。
 汚れてもいいように、ではなく、間違いなく汚れるのでこの格好をしています。隣の20歳をちょっと過ぎたぐらいの保母さんが私を紹介すべく園児に向かって手を叩きました。
 子供達の注目を集めるために、そしてその通りに子供達が私たちの方を向いています。
 いよいよ、私のテストが始まります。
「今日は、皆にお知らせが・・・」
「わぁ〜ロボットだ、ロボットだ」
 耳飾りだけで、あっさりと正体を看破させてしまいました。

「ねぇねぇ、お姉ちゃんもデレンガイヤーみたく飛べる?」



 …私への初めての質問が、「飛べる?」でした。



「いえ、私は飛行する機能は・・・」
「じゃあじゃあ・・・ロケットパンチは?」
「ばぁ〜か。今はドリルフィンガーだよ」
「ミサイルはやっぱりおっぱいから飛び出すの?」





 結局、この日、組み込まれたプログラムは殆ど役に立ちませんでした。
 先は、険しいようです。


<完>





初出:1998年06月08日(月)


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Last Update : 2000/08/24