by 久々野 彰
人は、必ず死ぬべき運命だそうです。
昨日まで普通に過ごしていた人が、今日はもう二度と動かない。
そんな事が珍しくないのだそうです。
私たちは死ぬ事はありません。
壊れても、直せば再び動きます。
そのせいか大多数の人は死ぬことを極端に恐れているようです。
意識的に、無意識に。
そして、私たちを人間に近付けようと努力しています。
それは私たちを不完全な人間にしようするのではなく、
時には人間の優秀さを誇らしめる為に、
時には自分たちの将来を重ねてみたりする為に、
どうも、私たちは人間の希望を背負わされているようです。
望む、望まざるを別として。
誉められるロボットは、どれだけ賢いのかではなく、どれだけ人間に近いかで決められます。
どんな万能なロボットでも、人間に近付かない限り、彼らの「愛」を受け取る事が出来ません。
私たちは、そんな人間から生まれました。
それを迷惑だと感じた時、既に私は彼らの望んでいる存在になっていたようです。
<完>
初出:1998年06月08日(月)