もらとり庵 ゲストの小説

「退屈なロジック」Chapter-3:ロボットと人

by 久々野 彰

 人は、必ず死ぬべき運命だそうです。
 昨日まで普通に過ごしていた人が、今日はもう二度と動かない。
 そんな事が珍しくないのだそうです。

 私たちは死ぬ事はありません。
 壊れても、直せば再び動きます。

 そのせいか大多数の人は死ぬことを極端に恐れているようです。
 意識的に、無意識に。

 そして、私たちを人間に近付けようと努力しています。
 それは私たちを不完全な人間にしようするのではなく、

 時には人間の優秀さを誇らしめる為に、
 時には自分たちの将来を重ねてみたりする為に、

 どうも、私たちは人間の希望を背負わされているようです。
 望む、望まざるを別として。


 誉められるロボットは、どれだけ賢いのかではなく、どれだけ人間に近いかで決められます。
 どんな万能なロボットでも、人間に近付かない限り、彼らの「愛」を受け取る事が出来ません。


 私たちは、そんな人間から生まれました。


 それを迷惑だと感じた時、既に私は彼らの望んでいる存在になっていたようです。


<完>





初出:1998年06月08日(月)


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Last Update : 2000/08/24