by 久々野 彰
「酷いコトするわね・・・」
作業服らしいつなぎを着た女性がブツクサと文句を言いながら、半壊したメイドロボットを修理していた。
至る所に残る打撲跡。
その理由がありありと分かる靴の形がクッキリと残る下腹部。
へこんでいる様子からも、人間なら内臓破裂は免れないほどの威力であると察する事が出来る。
「道具・・・か・・・」
半壊した部分を取り外し、新しい部品と取り替え終わると、女性は大きく息を吐き、額の汗を軍手の手の甲で拭う。
「お疲れさま」
その時、不意に後ろから声が掛かる。
「あ、――さん・・・」
もうそれが制服だとばかりに着慣れた雰囲気の白衣の女性が、紙コップに入ったコーヒーを持って彼女のいたドックに来ていた。
「そーゆーの多いわよねぇ。当初から予想されていたわけだけど・・・」
脇に取りのけられていた部品を見て、嘆息する。
「・・・・・」
「ただ、それが「ヒト」を模しているだけに、色々あるけどね・・・」
「模してなくたって・・・」
そう言いかけると、我が意を得たように頷く。
「そうね・・・どうしたって色々とは、あるのよね・・・」
そう、色々と・・・。