三好四姉妹別貢 ここは久々野彰さんの企画『三好四姉妹』に、私弘井鑑成が一槍馳走したのが契機 となり、以後ちょろちょろと思い出しては書くスタイルの、お気楽ご気楽気まぐれ 企画の別館であります。「早く更新しろ!」とか「私の三好一族を穢さないで!」 とかそういった苦情・お問い合わせの一切は順次平蜘蛛に詰め込んで爆砕四散させ ていくので、悪しからず。(※勝手ながら頁を利用させて頂いております(久)) 〜履歴〜 芸術は爆発だ(作・弘井鑑成) 2/19 馬の名は(作・弘井鑑成)2/24 知らぬが仏(作・弘井鑑成)3/6 お姉ちゃんCube(作・弘井鑑成)8/4

『お姉ちゃんCube』 慶「今、時代は姉よっ!」 冬「へぇ、そうなの」 慶「……」 冬「……」 慶「……あぅぅ、『いきなりどうしたの?』って心配してくれるくらいの優しさが あってもいいじゃない」 冬「今更何を言われても驚けないというか」 慶「こ、これでもちゃんとリサーチした上での結論なんだからねっ」 冬「松永君を狙ってた頃の名残で購読し続けている美少女ゲーム雑誌からの情報な んでしょう。『姉、ちゃんとしようよ』とか『どきどきお姉さん』とか」 慶「うっ」 冬「たしかに姉さんにはちゃんとしてほしいかな」 慶「……」 冬「かつてはその無防備な挙動にドキドキさせられたものだけど、今や慣れっこ」 慶「あぅぅ……」 冬「後は、三人くらいに分裂してみる?」 慶「……もういい。一子ちゃんのところに行くもん」 冬「普通に呆れられるだけだと思うけど」 慶「突き放されるよりはマシよっ」 賢「あらあら、姉さん。おかんむりねぇ」 慶「何よぅ。いきなり現れて。姉さんのことなんて放っておいて」 賢「まぁまぁ、そんなに腐らないでよ。そんな姉さんに素敵なお知らせを持ってき たのに」 慶「(かなり訝しげな表情)素敵なお知らせ?」 賢「そう。はいコレ」 慶「(押し付けられた手紙を開き)―――ええええっ! あ、荒木君からのららら らぶらぶれたたたたたた」 賢「はいはい、落ち着いてね姉さん」 慶「ううううんわかったおちついた落ち着いたよ―――って、賢子ちゃん、この前 荒木君とデートに行ってたじゃない!」 冬「姉妹丼?」 賢「違うわよ。デートじゃなくて、荒木から相談を受けてただけ。何でも、中等部 の頃から姉さんに憧れてたんだって。そこで私がキューピッド役として一肌脱いだ 訳よ」 慶「そ、そうだったんだ……。ありがとう、賢子ちゃん!」 賢「ううん。礼には及ばないわ。いつも迷惑をかけてる罪滅ぼしみたいなものなん だから。私のことは気にしないで、ささっと付き合っちゃってよ」 慶「うん! ありがとうねっ! 姉さん行って来る!(猛烈な勢いで居間を飛び出 して行く)」 冬「……解せないわ」 賢「んー?」 冬「荒木君といえばうちの学園でもかなりの有望株。それをむざむざ慶子姉さんに 譲るなんて」 賢「まぁ、性的不一致だけは避けがたい問題だからねぇ」 冬「試したのね?」 賢「勿論。相談に乗るついでに一勝負。でも、流石の私でも駄目だった」 冬「どういうこと?」 賢「私でも冬子でも、とても入らないのよ」 冬「ふむ」 賢「一子は入りそうに見えるけど、スポーツやってるから、そこそこ付いてるだろ う筋肉が邪魔になるでしょうし」 冬「やっぱり、解せないわ。私や姉さんでも駄目。一子でも駄目。でも慶子姉さん なら大丈夫。そちらの方の大きさの問題でもないみたい」 賢「わからない?」 冬「不本意ながら、降参」 賢「(得意満面)じゃあ教えたげる。私たちの身体じゃ、入らないのよ」 冬「どこに?」 賢「―――箱に」 荒木弥助 高校一年生  成績優秀・品行方正な上、茶道や和歌の心得もある学校期待のホープ。ただ彼の かくし芸が碁盤に人を乗せて担いで歩くことであるのと、箱詰めプレイをこよなく 愛する倒錯した性的嗜好の持ち主であることを、余人は知らない。  このご時世で地下牢拉致監禁調教は洒落にならないので、箱詰めプレイにしまし た。一時期のMyBeeみたいで懐かしいのぅ。箱詰め。


『知らぬが仏』 久「賢子ちゃん、お見舞いだよー」 賢「ありがと。久代」 久「この前は大変だったねー」 賢「でも、見物だったねぇ。前田先生の喧嘩祭り」 久「うんっ。前田先生凄かったね! 一子ちゃんを笑った人たちといきなり喧嘩始 めちゃうんだもん」 賢「『今この者を笑った者たち全てと喧嘩致す!』だもんねえ。いやぁー、やっぱ り漢はああじゃなくちゃ」 久「『それ、喧嘩祭りだーっ!』って。みんなやっつけちゃうんだもん。久代びっ くりしちゃった」 賢「あんたの弟にも見習わせたら?」 久「えー? 長ちゃんが前田先生みたいになっちゃったら、もうお姉ちゃんだなん て言えなくなっちゃうよ」 賢「今でも十分逆に見えるんだけどねー」 久「逆って、何が逆なのー?」 賢「わかんないならいいのよ。それより、その後もまた見せ場だったわねぇ。前田 先生ったら、素っ裸の一子に、いきなり懐から褌取り出して差し出すんだもん」 久「いっつも持ち歩いてるのかなぁ」 賢「『己の心のように白く輝く、男子の最後の着衣だ』―――かっこいいといえば かっこいいんだけど、相手が一子だからねー」 久「一子ちゃん、いきなり右フックで前田先生の顎を撃ち抜くんだもん。久代びっ くりしちゃった」 賢「男だと思い込んでたんだねぇ……。そういえば、前田先生って高等部の教諭だ から、中等部の一子と顔合わせる機会なんて、部活の時しか無いし。無理もないか」 久「ジャージ着てたら美少年だもんね、一子ちゃん」 賢「これで弟だったらもうほっとかないんだけどね」 久「え? ほっとかないって?」 賢「わかんなきゃいいのよ。で、そこまでは美味しかったんだけど……まさかこん な様になるなんてねぇ」 久「前田先生のマントを身体に巻きつけたら、すぐに賢子ちゃん目掛けてフライン グ……クロ、くろ……」 賢「クロスチョップ?」 久「うん、それ! 総武ヨードの若社長さんみたいだったね!」 賢「どっちかといえば、天空ペケ字拳の方が近かったけどね」 久「あ、それナムさんだよね? えへへ、今度はちゃんとわかったよ♪」 賢「よし、えらいえらい(頭をグリグリ撫でる)」 久「えへへへ……。でも、賢子ちゃん、どうしたの?」 賢「どうって、何が?」 久「えっと、ほら、いっつも一子ちゃんをあしらっちゃうのに、珍しくそのまま受 けてたから。どうしたのかなーって思っちゃって」 賢「ああ、そういうことね。あんまり面白過ぎる事態になったもんだから、笑い過 ぎちゃって反応できなかったのよ」 久「そういえば、マウ……マント……ポ……えーと」 賢「マウントポジション?」 久「うん、それ! そのまま一子ちゃんからいっぱいパンチされちゃっても、賢子 ちゃんずっと笑い続けてたもんね」 賢「痛いとか腹立つとか、そんなのより先に愉快っていう気持ちでいっぱいになっ ちゃってさー。もう笑い死ぬかと思ったわ……。ところで、冬子が全然来ないんだ けど、別の病院にでも入院してるの?」 久「ううん。冬子ちゃんは賢子ちゃんがせーさいされてる間にいなくなっちゃった」 賢「あいつめー…………って、そういえば、久代も五体満足よね」 久「冬子ちゃんが連れてってくれたの。置いていっちゃってごめんね」 賢「んー、まぁ、妥当な処置かもね。私ぐらいじゃないと一子のツッコミに耐え切 れないから。気にしなくてもいいわよー」 久「ありがとう。久代のこと、見捨てないでね」 賢「勿論よ。それじゃ、そろそろネガ渡してくれない?」 久「え? ネガなら冬子ちゃんに渡しちゃったよ」 賢「―――はい?」 久「だって、賢子ちゃんから預かっとくように言われてたって、冬子ちゃんが」 賢「……」 久「賢子ちゃん?」 賢「あ―――」 久「あ?」 賢「あいつめーーーーーーーーーーっ!!!!」 慶「いただきまーす!」 一「牛角で奢りなんて、冬姉も太っ腹だね」 冬「予定外の結構な収入あったから、遠慮せず食べて」 慶「もぐ、むぐ……ごぶおうばあー!」 一「慶姉、口にもの入れたまんま喋るのは止めなよ……」 慶「ごっくん……いいじゃないのよー。今日はお奉行様がいないんだから」 一「まぁ、巌叔父さんとか総蔵叔父さんとか、どっちも仕切りたがりだからね。 たまにご馳走になっても、えらい肩が凝るっていうか、そういうのはわかるよ」 慶「でしょ? さぁ、今日はとことん飲むよー!」 一「入院してる賢姉には悪いけど、これも自業自得ってことで諦めてもらおっか。 それじゃ冬姉、御馳走になるね!」 冬「ええ、どんどんやって頂戴」 慶「いやっほぅ! 冬子最高ー!」 一「うわ、もう出来上がっちゃってるよ、この人」 冬「……稼ぎ頭にも還元してあげないとね」 一「え? どういう意味?」 冬「ううん、たいしたことじゃないのよ」
『馬の名は』 一「いたたたたた……」 慶「どこか怪我でもしたの?」 一「うん。朝練でちょっと膝を痛めちゃって」 慶「へぇ。剣道で一子ちゃんが怪我するのって、珍しいね。今日は雨でも降りそう」 一「ううん。剣道部じゃなくて、今日は馬術部の方に顔を出してたの」 慶「ああ、一子ちゃんは部活掛け持ちしてたんだっけ。薙刀に、弓道に、柔道。こ こまで来たらもう武芸百般って感じねー」 一「そ、それほどでもないよ」 慶「うんうん。お姉ちゃんも鼻が高いよ」 冬「それで、どうして怪我を?」 一「うっ。そ、それは―――」 久「こんにちわー!」 慶「久代ちゃん、いらっしゃい」 賢「ううっ、ひ、久代。耳元で大声出さないで……くあー、頭が割れるー」 久「あ、ごめんね。賢子ちゃん、大丈夫?」 賢「小声もきっついから喋んないでー」 一「どうしたのさ、賢姉」 冬「そういえば、茶道部のオフ会が昨日あったみたい。それで二日酔いなんじゃな いかしら」 賢「あたりー。うぅ、吐きそ……」 慶「そんなに具合悪かったんなら、大人しく寝てれば良かったじゃない」 賢「そうもいかないのよ。これでも皆勤賞を狙ってるんだから」 慶「賢子ちゃんらしからぬ真面目さね……嵐でもやってきそう」 賢「真面目というか、推薦が狙いなの。あくせく受験勉強に勤しむなんて、かった るくてやってらんないじゃない……うー、喋ったらまた痛くなってきた。割れるー」 一「推薦狙いが素行乱れまくりでどうすんのさ……いたたた」 賢「バレなきゃいいのよ―――って、冬子、あんたも二日酔い?」 一「ボクは潰れるまで飲んだりしないよ」 久「えっと、その前に、飲んじゃ駄目なんじゃないかな?」 慶「久代ちゃんったらお惚けさんね。十四歳を過ぎたら元服した立派な成人なんだ から、お酒飲んでもいいのよ」 久「あ、そうなんだ。勉強不足だったみたい。えへへ」 冬「……女性の場合も元服というのかしら?」 慶「そこは、ほら、男女平等」 冬「封建的なのか先進的なのか、実に微妙なところね」 賢「(唐突に手を打ち合わせ)ああ、そうか! 今日は帰ったらお赤飯」 一「初潮なんてとっくに迎えてるよ!」 賢「あら? 処女捨てたときもお赤飯じゃなかったかしら」 一「どこでそんな間違いまくった知識を拾ってきたんだか……」 賢「まぁ、細かいことは置いといて。で、初体験、痛かった?」 一「だーかーら! そんな相手いないよっ!」 賢「なんだ、違うのかー。……そっか、わかった! 三日目くらい?」 一「どうしてセクシャルな方向から離れられないのさ」 賢「そういうお年頃ですから」 一「はぁ……もういい。朝練でちょっと膝痛めただけだから」 賢「なーんだ、また落馬したのか」 一「そ、そうだよ。悪い?」 賢「んー。あんたは乗馬下手くそなんだから、乗るのは彼氏の上だけにしときなさ い。これぞ騎乗位」 一「うわ、最低」 賢「恥かしいのは最初だけ。すぐ慣れるわよ。そうしたらもう病みつきに」 一「あー、もう! 誰かこの馬鹿姉を黙らせてよ!」 冬「姉さん。うちの来島部長が、茶道部と合コンやりたいらしくて。私が渡りをつ けるよう頼まれたんだけど、今いいかしら?」 賢「ん、いいわよー。プールに浸かって酔いを醒まそうじゃないの」 冬「行くのは部室よ」 賢「じゃあ打ち合わせの後でプールね」 冬「プールで戻さないでね(賢子と冬子、退室)」 一「(小一時間ほど談笑して後)それじゃ、そろそろ帰るよ。今日は湿布でも貼っ て大人しくしてようっと」 慶「それなら、則子ちゃんの実家に行けばいいじゃない」 一「則子さんって、賢姉の後輩の有馬さん?」 慶「そう。あの子の実家、温泉宿なのよ」 一「そうだったんだ」 慶「一子、知らなかったの? 有馬温泉といえば、この町で知らない人なんていな いのに」 一「温泉のことは知ってるけど、有馬さんの実家だったっていうのは初耳かな」 久「あ。一子ちゃん。あのね、有馬温泉のごんげん様は」 賢「かずこーっ! お姉ちゃんと一緒に湯治行くよーっ!」 一「げっ、賢姉っ!? うわ、酒臭っ」 賢「実の姉に「げっ」って何よ! 「げっ」って! 女の子はエレガントに、って いっつも言ってるでしょうが!」 一「全然言われてない! というか、賢姉こそエレガントにしなよ!」 賢「わーたーしーのーどぉーこーがぁー、おーやーじーくーせぇーってー?」 一「ぐ、ぐるじい……え、襟締め、入ってるって、賢姉……っ」 賢「ああら、エレガントな私としたことが。ほい(ツッチー張りの襟締めから一子 を解放)」 一「ごほっ……冬姉、これどうしたの?」 冬「計算外だったわ。まさかうち(水泳部)でも部室で宴会やってたなんて」 一「ど、どーして校内で一席設けてんのさ!?」 冬「うちの来島部長、豪快だから」 一「先生に見つかったらIH出場停止モノだよ!?」 冬「顧問の河野先生、部長に頭上がらなくて、宴の音頭取りやらされてるから」 一「本気で実家海賊なの、あの人……?」 冬「まさか。漁師でしょう。ただ、第一次産業というものは地や海に根を張ってい るように見えて、その実、賭博的要素が強いものなの」 一「それと教師を強請るのに何の関係が」 冬「言ってみただけよ」 一「冬姉……」 冬「ただ、大漁の後は酒盛りというのが、漁師の相場なのかも」 一「もういい……それじゃ、温泉行ってくるね」 久「一子ちゃん。有馬温泉のね、ごんげん様は」 賢「こら、一子! お姉ちゃんも行くって言ってるでしょー!? 露天風呂で熱燗 をこう、くいーっと! もう最高じゃないの!」 一「親父臭っ」 賢「ああん? あんた、今なんつった?」 一「あ、いえ、何でもないですお姉さま」 賢「聞こえた」 一「空耳だよ」 賢「「この万年○ン汁垂らしっぱなしのズベタ淫獣、もう姉妹でもなんでもねぇ!」 って聞こえた」 一「い、言ってない。そこまで言ってない」 賢「「そこまで」ってことは、ちょっとは―――親父臭ぇって言ったのを認めるの よね?」 一「ず、ずるいよ賢姉! 酔いの勢いなのか理詰めなのか、どっちかにしてよ!」 賢「どっちも私に決まってるじゃない。さぁー、たまには大事な妹を可愛がってあ げようとしたお姉さんの真心を踏み躙った報いを受けてもらいましょうか。あたし から逃げた罪は重いぜー?」 一「賢姉、ちっとも可愛い妹を見る眼してないっ!」 賢「エッチな歌しか詠めない身体にしてやるっ!」 一「いやぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!(迫る賢子から全力疾走で逃げる一子)」 賢「―――それで、一子の具合はどうだった?」 慶「全治2週間。軽い捻挫で済んで、ホント良かったわ」 賢「まさか、馬に乗って逃げようとするなんてねぇ……落馬したばっかりなのに」 慶「賢子が取って喰いそうな勢いで追っかけるからいけないんじゃない」 久「ごめんなさいっ。久代が、久代がちゃんと一子ちゃんに、有馬温泉のごんげん 様は葦毛の馬がお嫌いだから、乗っていっちゃ駄目だよ、って伝えられなかったか ら……」 賢「んー、まぁ、それとは関係無いと思うよ。真っ黒な馬だったし」 慶「え?」 賢「たてがみは真っ白でさ、すっごく大きいのよ。鞍は乗せてるんだけど、何でか ハミを付けて無いから手綱も無くて。あれじゃ一子が振り落とされる訳だわ」 慶「そ、それ、前田先生の愛馬じゃない?」 賢「そうなの? 私、馬術部とは殆ど関わり無くてその辺疎いのよ」 慶「とにかく、悪いのは賢子だから、久代ちゃんは気にしなくていいのよ」 賢「うんうん、久代は悪くない」 久「ありがとう、お姉ちゃま。久代のこと、見捨てないでね♪」 一「―――で、何で姉さんたちはここにいないのさ」 冬「松永さんが泣き入ってるから、慰めるのに忙しいみたい」 一「どうして実の妹より後輩の方が大事にされなきゃなんないのよ!?」 冬「仮に姉さん達が来るとして、エッチな歌しか詠めない身体にされたいの?」 一「もういい……寝る」 冬「もっとも、もうされてるんだけど」 一「っ!!??」  まさか女子中高生に疱瘡を患わせる訳にもいかんので、二度落馬してもらいまし た。三好一子は二度死ぬ(死んでません)。
『芸術は爆発だ』 賢「あらあら? それって古天明の平蜘蛛茶釜じゃない?」 冬「……流石は姉さん。当りです」 慶「凄いでしょー? 武野家の今井さんが、特別に貸してくれたの」 賢「へぇ。こっちは松嶋茶壷か。相変わらず無駄にリッチなのねぇ、あの婿養子」 一「姉さん。そんな言い方、今井さんに失礼じゃない」 賢「だって事実だし。先代のしょーおーさんが亡くなってからブイブイいわせてる じゃない。いつか足下すくわれるよ、あの人」 久「こんにちわー!」 慶「いらっしゃい、久代ちゃん」 久「わぁ、立派な茶道具! お姉ちゃま、久代が使ってもいい?」 慶「いいわよー。私たちはもう試したから、久代ちゃんもやってみて」 冬「久代ちゃん、それ一応預かりものだから。壊さないように丁寧に扱って」 久「はーい! 久代、頑張るねっ」 一「頑張らなくていい。あんたが頑張ると碌なことがふぐっ」 慶「(一子の口を押さえつつ)それじゃ、私たちは野点でもしましょ」 賢「そうねぇ。今日は天気もいいし。一服した後はそのままお昼寝しようかしら」 冬「姉さん、行儀悪い」 賢「楽ならそれでいいの。さ、行きましょ(四姉妹、退室)」 ドォォォォォン……ッ! 冬「……瓦礫の山ね」 賢「あらあら、景気良く吹っ飛んだものねぇ」 慶「ぶ、部室が……松嶋が……ひ、平、平ひらひらひひひひひひひひひひ」 一「お、お姉ちゃん!? しっかりして!」 慶「だ、大丈夫。ちょっと永遠を探しに逝きそうになっただけだから」 久「(煤塗れだが無傷)ごめんなさい。久代が、久代がいけないの!」 一「あんた、今度は一体何したのよ……?」 久「茶壷と弾薬の壷を間違えちゃって、それで、茶釜に入れたら爆発しちゃって」 慶「―――そ、そんなバカな」 冬「そういえば……久代ちゃん、この前種子島を今井さんから貰って、付け合せの 火縄と火薬を部室に持ってきてたものね」 一「てゆーか、火薬云々以前に、茶釜に直接お茶っ葉入れようと思わないでよ…… 爆発したってことは、そもそも水すら入れてなかったんでしょ?」 久「うわぁぁぁん、お姉ちゃまごめんなさいっ」 慶「あ、泣かないで久代ちゃん。お姉ちゃん怒ってないよー。爆発しちゃう茶釜が 悪いんだよねー? お姉ちゃんがついてるから大丈夫だよー」 賢「よし、一句できた。持ち部屋も 預かりものも かわらけよ 砕けて後は 元 の土くれ」 一「歌なんか詠んでる場合じゃないよっ! てゆーかそれ盗作だし!」 賢「いいじゃないのよ。面白ければ。部室の修理代なんて婿養子に出させとけばい いんだから」 一「今井さんが出すいわれなんて無いじゃない。それどころか、こっちが借り物の 弁償しないと―――」 賢「ていうか、私のパパだし」 慶・一「「不倫っ!?」」  松永久代  ドジっ子。というのは見せかけであり、実はできる子。と本人は主張するものの、 廊下を走れば必ず転び、茶道部ではお茶の葉と火薬を入れ間違えて国宝級の茶釜を 茶室ごと爆破し、お手伝いの放送部ではひたすら噛みまくる。そんな様があまりに はまり過ぎていて、誰も信じてくれない。慶子から可愛がられているので、一子か らやきもちを焼かれている。  イメージ:より一層もっちー色の入った花穂(シスタープリンセス)  世の中何でも萌えに変換する時代らしいので、戦国一の寝業師をの萌えキャラに 改造してみる。