三好四姉妹の狂都学園乱風記とは

 戦国好き、日本史好きにはお馴染みの三好長慶ら三好四兄弟を、女性化させたりして学園物にしたりするという所謂よくある奴です。
 元々は日記内のショートショートで不定期連載していたものを、纏めました。
 この通称『三四企画』に関してのみは著作権フリーの扱いにしておりますので、もしこれらで二次創作をしようと思った奇特な方はバンバンやっちゃってくださって構いません。もしご報告いただければ、こちらなどで紹介や掲載などもさせて戴きます。


 企画の性質上、このデータは後付設定などで随時問答無用で変更になります。
 同時に過去の話も後付設定に基づいて変更、修正があったりします。
 本名が明らかになっていないキャラは登場した時の表記にしてあります。
 名前、設定、性別など結構重要なところでもコロコロ変更する可能性がありますので、ご了承くださいませ。


STORY

芸術は爆発だ(弘井鑑成さん作) 2003/2/19
お姉ちゃんは恋愛症 2003/2/20
ハジメテの人 2003/2/21
彼は重度のギャルゲーマー 2003/2/22
冬子さんの人生設計 2003/2/23
馬の名は(弘井鑑成さん作) 2003/2/24
家族に恵まれない人 2003/2/26
エッチな歌しか詠めない身体 2003/2/28
コスプレてみる 2003/3/1
号泣して帰ってきました 2003/3/5
知らぬが仏(弘井鑑成さん作) 2003/3/6
決意→ダイエット 2003/3/7
有罪サナトリウム 2003/3/8
見る目が無い 2003/3/11
八面六臂の荒稼ぎ 2003/3/14
決まり手は天然。天然で三好慶子の勝ち 2003/3/16
可愛い可愛いマウスちゃん 2003/3/20
オセロのように 2003/3/29
外出しは避妊に非ず 2003/7/3
お姉ちゃんCube(弘井鑑成さん作) 2003/8/4
知らぬがお互い 2004/6/15
世界の中心で、死ねとさけぶ 2004/7/10
しでかした猫 2008/9/24
この中に神がいます(祀られてる的意味で) 2008/12/30
もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対 2008/12/31


主要キャラ呼称表

  三好慶子 三好賢子 三好冬子 三好一子 松永久代
三好慶子
お姉ちゃん
姉さん
賢子ちゃん
賢子
冬子ちゃん
冬子
一子ちゃん
一子
久代ちゃん
三好賢子 姉さん
姉さん
冬子 一子
一子ちゃん
久代
三好冬子 慶子姉さん 賢子姉さん
姉さん
あれ
一子 松永さん
三好一子 慶姉 賢姉 冬姉 ボク あんた
松永久代 お姉ちゃま 賢子ちゃん 冬子ちゃん
冬ちゃん
一子ちゃん 久代


登場人物

三好 Keiko Miyoshi  高校三年生
 小学生並みの容姿を持つ三好家長女。
 すぐ拗ね、すぐ泣き、すぐ騒ぐ落ち着きのない性格だが自分では精一杯お姉さんぶろうとする。
 恋の数だけ、振られる達人。お人よしで騙されやすく、久代には甘い。


三好 Kenko Miyoshi  高校二年生
 頭の回転が速く美人で身長もスタイルも良いが享楽主義がその全てを台無しにする三好家次女。
 悪意の無い悪戯が好きで、男づきあいも多く、噂が耐えない。スポーツは苦手。
 設定当初はもう少し優雅なイメージがあったが今ではただのエロ親父である。
 茶道部副部長。ビッチ。


三好 Huyuko Miyoshi  高校一年生
 陰気で地味で基本的に全てに無関心な素振りを見せるが、三好家きっての毒舌家な三女。
 冷静冷徹なツッコミを得意とし、誰に対しても冷ややかに突き放したところがある。
 調べごとに関しては右に出るものはいなく、彼女の前に秘密は存在しない。計算高く、玉の輿を狙う守銭奴。
 水泳部所属。ビッチ。


三好 kazuko Miyoshi  中学三年生
 身体つきといい髪形といい言動といい少年と見間違える健康優良児でスポーツ少女な四女。
 明るく闊達な性格は誰からも愛され、運動能力を買われて各部活に助っ人に借り出されることも多い。
 姉妹では次女の賢子と仲が良いが、単にいぢめられているだけにも見える。
 一番の常識人だが、こういう世界では利点にならないのはお約束であり、歪んだ愛情ばかり身に受けている不幸な少女。


松永 Hisayo Matsunaga  高校二年生
 ドジっ子。というのは見せかけであり、実はできる子。と本人は主張するものの廊下を走れば必ず転び、茶道部ではお茶の葉と火薬を入れ間違えて国宝級の茶釜を茶室ごと爆破し、お手伝いの放送部ではひたすら噛みまくる。
 そんな様があまりにはまり過ぎていて、誰も信じてくれない。
 慶子から可愛がられているので、一子からやきもちを焼かれている。
 茶道部、放送部所属。


三好 Seika Miyoshi  高校三年生
 慶子の従姉。細身で長身という体つきの割には、片手で易々とスチール缶を握り潰す怪力の持ち主。一部ではその勇ましさからマサやんと呼ばれている。
 大仰で勿体ぶった言い回しをする男装の麗人で、その容姿から慶子に惚れられたこともあったようだ。
 演劇部所属。


松永 Tyousuke Matsunaga  高校一年生
 久代の弟で、自称"狩人"と名乗るプレイボーイ。
 基本的に来るものは拒まず主義だが、その一方で落とした獲物には目もくれないので、一度きりの関係のみ。早漏。
 茶道部を始め、幾つかの部に籍を置くものの幽霊部員で典型的不真面目生徒。
 そしてギャルゲーマーとしての一面も持ち、妹スキー。
 茶道部所属。ヤリチン。


篠原 Husae Shinohara  
 自称天然と言うタイプだが、特に計算しているわけでもない人。
 耳障りのする言葉遣いと、無神経な言動で相手を不愉快にさせる達人だが、それも無自覚で悪意がないのが困りもの。
 彼女と彼女の幼馴染が三好姉妹と近所だったことで、賢子に妙に懐いている。


岩成君
 眼鏡っ娘好き。

来島部長
 水泳部部長。豪快豪放な性格で、実家が元海賊とかいう噂もある。

有馬
 実家が温泉旅館を経営している賢子の後輩。家は馬術部のスポンサーでもあるという。清華の熱心なファンで彼女のところになると我を忘れるが、普段は数少ない良識を持つ茶道部員。

小笠原
 房枝の幼馴染で元恋人。房枝の毒舌には抵抗力を持っていて多少のことでは動じない筈が、多少では済まない羽目に陥り遂に破局。

内藤
 図書委員で松永長輔の現在の彼女。身勝手かつ嫉妬深い性格で、長輔と関係の深い女性全てを敵視する。お嬢様っぽい口調と振る舞いはするが家は庶民で頭が悪い。図書委員の波多野秀志と仲が悪い。

高山莉亞
 図書委員の一人。元は根暗だったが長輔に攻略されたことでイメチェンした大層ズレた感性を持つ眼鏡っ子。今彼女の中では占いと哄笑とキリスト教と駄洒落がブーム。過去、自分にとって邪魔だという理由で委員の先輩の和田雅司を陥れたことがあるという噂がある。

海部
 演劇部所属。有馬則子のクラスメート。賢子ファン。

荒木弥助
 成績優秀・品行方正な上、茶道や和歌の心得もある学校期待のホープ。ただ彼のかくし芸が碁盤に人を乗せて担いで歩くことであるのと、箱詰めプレイをこよなく愛する倒錯した性的嗜好の持ち主であることを、余人は知らない。

新開
 茶道部所属で部では賢子のお守役的存在。基本真面目で目上の人にはどんな人にも基本的には礼儀正しいが、同世代や後輩にはくだけた口調になりつつも扱いが厳しい。体育会系にいるタイプ。酒は飲めるものの酒嫌い。

足利輝夜
 学園長の娘で剣道部主将。自慢の日本刀コレクションを部室に飾っている。

細川先輩
 慶子が高校一年生で書記をしていた頃の生徒会長。慶子に惚れられるが振ったか捨てたかしたようだ。

河野先生
 水泳部顧問。来島部長を初め、荒くれ者揃いの部員にいいように振り回されている可哀想な人。

前田先生
 馬術部顧問。かぶいていらっしゃる人。愛馬の名は松風。

井宗男
 武野コンチェルンの婿養子。賢子のパパの一人だったが誘惑された冬子に入れあげて彼女に乗り換える。

巌叔父
 四姉妹の叔父。鍋奉行。笑い上戸。

総蔵叔父
 四姉妹の叔父。鍋奉行。清華の父。

ンゴク
 一子の飼い猫。鈴をくれた冬子に絶対服従。



お姉ちゃんは恋愛症

慶「松永君……」
賢「姉さん、今度は誰?」
慶「な、な、ななななな、何を言っているの!?」
賢「誰を好きになったの?」
慶「な、な、ななななななな。何でわかるの!?」
賢「いや、そろそろ姉さんが恋する季節に入ったと思ったから」
慶「人をまるで季節の変わり目みたいに!?」
賢「冬子の作ったこのグラフによるとホラ、例年ほぼ同じ」
慶「いやーっ!?」
賢「終わるのも同じぐらいで、最高で一ヶ月。最短で40分」
慶「そんなの調べないでよ!」
賢「だって面白いじゃない」
慶「鬼! どうせ、男をとっかえひっかえの賢子ちゃんには姉さんの苦しみなんかわからないわよ!」
賢「まあ自慢だけど捨てた数は数知れないけど、捨てられたことはないし」
慶「人類の敵! さし当たって姉さんの敵!」
賢「痛い痛い! ぶたないでよ! 清華さんの時みたいに今度は邪魔しないから」
慶「本当? 本当に!?」
賢「うん。で、誰?」
慶「賢子のところの後輩の……ま、松永君」
賢「うげ」
慶「な、何よ。その反応は!?」
賢「よりにもよって松永ぁ!?」
慶「わ、悪い!?」
賢「姉さん。一昨年の細川先輩の時と同じ目に遭いたいの?」
慶「ひ、非道い。そんな言い方、松永君に失礼だよ!」
賢「あいつの方がもっと性質が悪いわよ」
慶「ど、どうしてそんなことがわかるのよ!」
賢「だってあいつ有名なヤったらお終い男だよ。俺は狩人だからとか抜かす奴。最悪だって。細川先輩の方がまだマシかもしんない」
慶「わかんないわよ! 松永君がこのお姉ちゃんの魅力に……魅力に……ぅぅ、頑張るんだもん」
賢「魅力の無さは自覚してるんだ」
慶「放っておいて!」
賢「賭けてもいいけど、最短記録を更新するから止めておきなって」
慶「どうしてそう言い切れるのよ」
賢「あいつ早漏だし」
慶「え"」
賢「ヤッたら終わりの癖してその時間も短いんだもん。心どころか身体にすら火なんかつきやしない」
慶「ね、寝たの?」
賢「いや、幽霊部員とはいえあいつもウチの部員だし」
慶「部員なら食べるのが伝統なの? いつからそんなメイビーな部に!?」
賢「余所の茶道部だってそんなものよ」
慶「違う! それ絶対違う!」
賢「そう? まあ兎に角、止めておきなさい」
慶「……ぅぅぅ」


冬「……確かに早かったです」



慶・賢「「シたの!?」」




ハジメテの人

一「賢姉」
賢「ん?」
一「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
賢「勉強?」
一「ううん」
賢「今、ドラゴンランス戦記読んでるから読み終わるまで待って」
一「それじゃあ、いつになるのかわからないじゃないか」
賢「御免、嘘よ。でも、姉さんなら待ちそうで恐い気もする」
一「はぁ……そういう意地悪は止めてあげてよ、賢姉」
賢「うんうん。心がけておく」
一「……」
賢「で、何の用なの?」
一「あ、本当に読んでるんだ」
賢「ドララン? ええ」
一「そんな略し方初めて聞いた」
賢「私も初めて言ってみた。少し後悔」
一「全然こういうのは賢姉の趣味じゃないと思っていたけど」
賢「いや、今、映画の影響でハリーポッターとか指輪物語とか流行ってるじゃない」
一「う、うん」
賢「でも追随して読むのは何か悔しいから意表をついてみようかと思って」
一「……」
賢「……」
一「そ、それで質問なんだけど」
賢「う、うん」
一「そ、その……」
賢「何?」
一「ハジメテって……痛いの?」
賢「え? あー、うん。そうらしいわね」
一「賢姉はどうだったの」
賢「それがぐでんぐでんに酔っ払ってて覚えていないのよね」
一「うわ、最低」
賢「だから凄くムカついちゃってさあ、損した気になってたもんで痛さを味わうためにとその日の内に十人斬り」
一「……だから今の賢姉になっちゃったんだね」
賢「遠い目をして言わないの」
一「ひたたたた、ひたい」
賢「まあ十人斬りは冗談だけど、結局鈍痛はあったけど破瓜の痛みとか言うのは知らずじまいね」
一「やっぱりボクの時も痛いのかなぁ……」
賢「何? 誰かする相手でも見つかったの」
一「そうじゃないって! それに賢姉は言い方が下品過ぎ」
賢「御免御免。どうしても一子や姉さんみたいに純粋な目をした子を見ているとさぁ……瞳が色を失うまで精神陵辱したくならない?」
一「……」
賢「冗談よ?」
一「ボ、ボクにへ、へんなコトしたら舌噛み切って死ぬから!」
賢「私信用ない?」
一「普段からそんなことばっかり言っていれば!」
賢「御免なさい。思い切り怯えているみたいだから謝っておくわね」
一「そういう言い方だから賢姉のこと……」
賢「うん、御免。治そうとは思っているんだけどね……」
一「賢姉……」
賢「で、話は戻るけど」
一「いきなり!?」
賢「これは予想でしかないけど一子は痛くないんじゃないかしら」
一「どうして?」
賢「ほら、スポーツやっている人は知らないうちに膜が破けててとか言うじゃない」
一「その言い方凄く下品」
賢「あ、あはは。御免御免。でもまあ、そんなつもりで喩え痛くなくても焦ったりしないようにすればいいんじゃないかしら。痛かったらそれは仕方がないということで覚悟もできるでしょ?」
一「……う、うん。ありがとう、賢姉」
賢「まあ、こんなことぐらいしか言えなくて悪いんだけどね」
一「ううん。ちょっとだけ気が楽になったから」
賢「そう? まあ頑張ってね」
一「賢姉!」
賢「あはは」


冬「……」
賢「何? その手?」
冬「小6。二人で留守番。深夜番組。興味本位。滑った中指が奥まで……」



賢「……い、幾らでいいのかしら?」




彼は重度のギャルゲーマー

賢「あれ、姉さん?」
慶「その声は賢子ちゃん?」
賢「どうしたのよ、眼鏡なんかかけて。視力良かったんじゃないの?」
慶「うん、そうだけど……ぅぅぅ、頭が痛い」
賢「一体、どうしたのよ」
慶「それが……」
賢「ん?」
慶「松永君、眼鏡っ子が好きだって言ってたから」
賢「……」
慶「あぅぅ、前が見えない……」
賢「せ、せめて伊達眼鏡にしたら?」
慶「駄目よ」
賢「何故?」
慶「邪道じゃない! そういうのって本当の眼鏡っ子じゃないってこの本に……」
賢「『眼鏡スキーに捧ぐ眼鏡っ子100の秘密』……なにこれ?」
慶「偶然、岩成君が読んでたのを借りてきたの!」
賢「……」
慶「これでより松永君と親密に……」
賢「視力良い人間がかける事自体は邪道じゃないの?」
慶「ふふふ、甘いわね。賢子」
賢「な、何よ。その自信は」
慶「こうして無理に眼鏡をかけることで必然的に視力低下。かければかけるほど理想的な眼鏡っ子に……あぅぅぅ、目が痛い」
賢「……」
松「あ。三好先輩に賢子先輩。ちわっす」
慶「ま、松永君!?」
賢「あら、丁度良いところに」
松「あれ? 三好先輩眼鏡っすか?」
賢「そうなのよ、あんたのせいで……」
慶「似、似合うかな!?」
松「いやー、あんまり」
慶「そ、そう……そうなんだ……」
賢「そう言えば、眼鏡っ子好きとか言ってたんだって?」
松「え? ああ『ときメモ』の話っすね。俺、未緒ファンで。賢子先輩もやってたんすか?」
慶「……え"?」
賢「いやぁ……その、何でもない」
松「? あ、それじゃあ俺、これからデートっすから、また」
賢「一つ聞いていい?」
松「なんすか?」
賢「今、あんたの好きなタイプってどんなタイプ?」
松「漠然としてますけど……年下の女の子とかいいッすよね。義理の妹なんか最高。お兄ちゃんとか呼んで欲しいっすね」
賢「あんたのところにも姉はいるじゃない。見た目妹みたいな」
松「姉は駄目っすよ。姉は……乃絵美ちゃんみたいな妹だったら近親相姦OKっす」
賢「乃絵美ちゃんって誰よ?」
松「雪希ちゃんだったらもう言うことなしっす」
賢「だから雪希ちゃんって誰よ?」
松「おっと、時間もないんで、そんじゃまた。たまには部活にも行きますんで」
慶「……」
賢「……」



慶「賢子、これからあなたのこと、お姉ちゃんって呼んでいいかな?」
賢「嫌」




冬子さんの人生設計

賢「ところで、冬子?」
冬「何、賢姉さん」
賢「松永弟とどうして寝たの? 好みのタイプじゃないでしょ?」
冬「賢姉さんらしく、直球ね」
賢「いや、冬子に気を使うこともないし」
冬「うん」
賢「で、何で? 確かに顔はいいけど、それで好きになるような冬子じゃないでしょ」
冬「聞きたい?」
賢「うん」
冬「本当に?」
賢「う、うん」
冬「でも、賢姉さんの悪口も混ざっちゃうから……」
賢「そ、それ凄く気になるわよ」
冬「聞く? 後悔しない?」
賢「う……うん」

冬「ほら、私って計画的じゃない」
賢「まあ、そうね」
冬「その日その日を適当にいい加減で目先の詰らない小利と小悦ばかりを貪ってばかりの姉さんとは違って人生計画たてているの」
賢「う………うん」
冬「まずエスカレーター式でウチの大学に進学しないで、受験して東大に行くでしょ?」
賢「は、はい」
冬「そこで整形するでしょ」
賢「え"」
冬「元はそう悪くないからちょっと見栄えを良くするだけだから大丈夫。予算も溜めてるし」
賢「は、はあ……」
冬「そこで東大のミスキャンバスに選ばれるのが一番いいけど、それはどうなるかわからないから保留」
賢「はあ」
冬「それでツテを頼りにタレントになるの」
賢「はあ」
冬「東大卒のタレントは最近需要が滞っているのがキツいけど、私の頃はまた盛り返してきている頃だから」
賢「はあ」
冬「それで青年実業家と離婚。もとい、結婚してから離婚」
賢「はあ」
冬「ハッピーエンド」
賢「……は、はあ」
冬「賢姉さんの生き方だとせいぜい30台後半で路頭に迷うでしょうけど、この生き方なら死ぬまで慰謝料で暮らしていけるし」
賢「そ、そう?」
冬「で、松永君のお父さんは実は成り上がりのお金持ち」
賢「なるほど」
冬「ということで将来に備えての保険」
賢「が、頑張ってね」
冬「うん」
賢「ところで……」
冬「何?」
賢「私の悪口混ぜる必要あったの?」



冬「ううん。特には」




家族に恵まれない人

一「ただいまー。何か近所で火事でもあったの? 丁度消防車が通っていったけど」
賢「あ、一子。遅かったわね」
一「うん。ちょっとバスケ部の助っ人に入ってて……って、賢姉!?」
賢「な、何よ。そんな大声出して」
一「か、髪……どうしちゃったの!?」
賢「あはは、ちょっとバッサリと季節飛び越え夏気分。似合うかな?」
一「もしかして好きな人が出来たとか……」
賢「姉さんと一緒にしないで」
一「ひたたたた。ひゃ、ひゃあ、やっひゃりひすれん?」
賢「そう、思えば届かないほのかな思いだったわ……」
一「りょうへへぼふのひょおをつきゃんにゃままれいひゃれても」
賢「あ、御免なさい」
一「もう、いつも掴まれてたら伸びちゃうよ」
賢「愛嬌愛嬌」
一「そんな人為的な愛嬌は要らないよぅ」
賢「まあ、これで少しは憂さ晴らし」
一「うわ、酷いこと言ってるよ。この人」
賢「いいじゃないのよ。もう、一子ったら可愛いったら仕方がない」
一「あぅぅ……だから、抱きつかないでって」
賢「この細いようでしっかりとした肉付きが私としては最高ね」
一「く、くすぐったいってばぁ……」
賢「あー、この若い肌が憎たらしい」
一「賢姉、年齢サバ読んでないよね?」
賢「冗談よ?」
一「……」
賢「うわ、信じられてない!?」
一「時折、賢姉が遠い世界の人のような気がするのはボクだけかなぁ……」
賢「失礼ねえ」
一「あはは、ま、まあ元気そうで良かった」
賢「ん? まー、そうね。空元気でも出しとかないとやってられないわ」
一「賢姉……」

久「ごめんなさい。久代が、久代がいけないの!」

一「うわ、出た!?」
賢「あー、もういいからあっちいって休んでなさいって……」
久「賢子ちゃん。ごめんねっ ごめんねっ!」
一「あんたか! またあんたが何かやったんかっ!!」
賢「あれだけの惨事で髪の毛だけで済んだって奇跡的だし」
一「もしかしてさっきの消防車……ウチ?」
久「でもっ、でもっ」
賢「いいっていいって。元はといえば私が誘ったのが悪いんだし」
一「何をしたのかわからないけど、最低の取り合わせというのだけはわかるよ……」

久「あと、一子ちゃんもごめんね」
賢「あ、そうそう。御免御免」

一「ど、どうして二人してボクに謝るの!?」

久「ええとね……」
賢「一子。今日は私の部屋で寝ていいから」
一「ええっ!? ボ、ボクの部屋は!?」
賢「ぬいぐるみはその……今度同じようなの買ってあげるから」
久「ごめんね。ごめんね」
一「一体、二人してボクの部屋で何をしたんだよっ!!」
慶「煩いわよ一子。やっと終わったんだから。もう夜遅いのにギャーギャー騒がない」
一「ボクが悪いのっ!?」


冬「――で、どうして一子は家出したの?」
慶・賢・久「それがさっぱり」




エッチな歌しか詠めない身体

賢「『茜空 子等と共にて 仰ぎ見る 涼やかなるは 春の訪れ』……イマイチ」
慶「あら、今日は部活だったのね」
賢「うん。すぐ着替えちゃうから」
慶「別にいいじゃない。似合ってるわよ」
賢「うーん、でも和服って胸がキ……そんな泣きそうな顔して睨まなくても」
慶「どーせ、七五三ですよっ!」
賢「何も言ってないわよ」
慶「ぅぅぅ……」
賢「何か最近僻みっぽくなってない?」
慶「いいもんいいもん。どうせお姉ちゃんはチビロリ三段よ。わかってるんだもん」
賢「何か滅茶苦茶ね……全く……」
慶「ところでさっきから三好粉吹で飲んでるのってお茶じゃなくてお酒?」
賢「うん。お茶会から飲み会に雪崩れこんだ時に余ったから、燗にして」
慶「一杯貰ってもいい」
賢「うん。じゃあ、お一つどうぞ」
慶「ありがとう。……ん……ふぅぅ……美味しい」
賢「来島先輩のお勧めというだけあって美味しいわよね」
慶「本当。もう一杯いい?」
賢「どうぞどうぞ。お注ぎしましょうお姉様」
慶「口当たりも、咽喉越しも……あぁ、果実酒とはまた違ったほんのりとした甘さがいいわねぇ……甘口も悪くないわね」
賢「茜色の夕暮れ、澄んだ空気に美味しいお酒……よくぞ日本人に生まれけり、ね」
慶「どれも外国でも当て嵌まる事例で言うのはお姉ちゃんどうかと思うけど同感だわ」
賢「『喧しき 姉と飲み干す 甘露酒 物悲しきは 奄美大島』」
慶「奄美大島って?」
賢「ふわわぁ、少し飲み過ぎたかなぁ……昨日もあんまり寝てないし」
慶「ねえ、賢子ちゃん。奄美大島ってどこから出てきたのよ」
賢「もう、いいじゃない。エッチな歌じゃないんだから」
慶「そんな意味不明なこと言われても」
賢「『拘束具 手枷足枷 首輪プレイ 尻尾も付ければ 貴女も雌犬』」
慶「……」
賢「『分娩台 二度目の今夜は 子供抜き』」
慶「もういいわ」
賢「『「痛くない?」 痛いと言っても 貴方は止めず』字余りー」
慶「だからもういいって」
賢「『都条例 恐くて 金が稼げるか』これは標語ー」
慶「ねえ、聞いてる?」
賢「『3人も 4人もあまり 変わらない』 あっはっは、こりゃあ私のことだわ」
慶「誰かこの子を止めてー」
賢「『略奪愛 獲った瞬間 もういいや』 こっちの方が私らしい?」
慶「今日の夕飯の仕度は全部お姉ちゃんがするから寝てなさい。いいから今すぐ」
賢「『春を売る そう言いながら 今は冬 春よ来い来い 温もりよ来い』 ダサダサ」
慶「寝てなさい!」


一「ボ、ボク……ああはなりたくないよぅ」
冬「まあ、あれは特殊な例だから」




コスプレてみる

慶「あら、賢子ちゃん。もう髪伸びたの?」
賢「いや、流石に四日じゃそれは無理」
慶「でもほら、Hな人は髪が伸びるのが早いって言うから」
賢「呪いの菊人形じゃないんだからそんな直ぐには伸びないって!」
慶「じゃあ何なの?」
賢「友達から借りてきて……付け毛とかカツラとか色々試してるトコ」
慶「ふーん」
賢「似合わないわよ」
慶「ま、まだ何も言ってないのに!?」
賢「いや、カツラ両手で持って興味津々な顔をしてれば……」
慶「ぅぅぅ、お姉ちゃんって単純なのかな?」
賢「相当に」
慶「ぅぅぅ、賢子ちゃんのいけず! 少しは姉さんを立ててくれてもいいじゃない!」
賢「すぐに涙目になる時点でかなりキツイ。それより……よっと、どう? 似合う?」
慶「き、金髪!?」
賢「しかもカラーコンタクトもつけてみていたり」
慶「外人!?」
賢「洋服も……よっと。そして厚めの本と指示棒を持って……どう?」
慶「ええと……何?」
賢「『ハリー、あなたって、偉大な魔法使いよ』」
慶「誰?」
賢「チッ」
慶「姉さんが悪いの!?」
賢「鈍いにも程があるでしょうに」
慶「何で責められるの!? ヒステリー? それとも更年期障害?」
賢「私ってそういうイメージしかないのかしら……」
慶「これに懲りたら賢子ちゃんもこれからは姉さんをたてること。いいわね?」
賢「いや、それは関係ないし」
慶「わ、わかんないじゃないの!」
賢「わかるってば。それよりも姉さん、ハリポタ5回も観に行ったとか言ってたじゃない」
慶「観たわよ?」
賢「それで、ほら、気付かない? この格好!?」



慶「ヘドウィグ?」



一「賢姉でも凹むことあるんだね」
冬「羞恥とか自省とか一生縁がないと思っていたのに」
一「ボクに言わせれば冬姉も似たようなものだよ」
冬「そう?」
一「ほら、そうやって堪えないところなんかそっくり」




号泣して帰ってきました

慶「繕い物なら姉さんがやってあげるのに」
賢「ううん。これはちょっと特殊な技術がいるから自分でやる」
慶「姉さんが不器用だって言いたいの?」
賢「そうじゃないって。ちょっと制服改造しているんだけど、頭で製図引いちゃってるから」
慶「改造? け、賢子ちゃん不良への道なの!?」
賢「まあ、そんな大層なものじゃないってば」
一「ねえ、ちょっと今から馬術部に呼ばれているから学校に行くんだけど、おやつ代わりになるものないかな?」
慶「あら、熱心ね」
一「スナック菓子でもいいんだけど、遠乗りを中心にかなり馬を責める練習になると思うから出来れば小腹が膨れる程度のものが欲しいんだけど」
慶「前田先生に気に入られたのね。あの先生ってば普段は殆どのことに無関心な方なのに、自分が気に入ると熱心になるから……ちょっと待ってて。軽く作ってあげるから」
一「うん。ありがとう、慶姉」
賢「一子。丁度いいところに」
一「あ、賢姉。繕い物終わった?」
賢「うん。ばっちし」
一「でもボタンが取れたぐらいなのに随分とかかったね」
賢「綻びがいくつかあったからそれも直しておいてあげたのよ」
一「あ、そうなんだ。御免ね、全部やって貰っちゃって」
賢「いいってば。それよりはい、すぐに着替えちゃいなさいな」
一「うん」
慶「こっちも包んでおくわね。多目に用意しておくから、良かったら馬術部の皆で食べるようにしてね」
一「うわぁ、ありがとう」

一「行って来まーす」
慶「一子、来年はどの部に入るのかしら?」
賢「運動系の部からはあらかた誘いが来ているみたいだけど、どうなのかしらね」
慶「あら。賢子も出かけるの?」
賢「ええ。ちょっと成果を見に」
慶「成果って?」
賢「名づけて、『三好一子 校内人気者化計画』」
慶「え?」
賢「何を隠そう、さっきの一子の制服には仕掛けがしてあるのです!」
慶「あ、一子のだったんだ」
賢「というか生地もデザインも色も違うんだから気付いて欲しかったけど、まあそれはいいわ」
慶「で、何をしたのよ?」
賢「あの制服を着た状態で軽い衝撃を受けると……」
慶「う、受けると……?」
賢「制服の生地のみが四散するという恐るべきトラップが……」
冬「元ネタはネギま?」
賢「……湧き上がる周囲の歓声。羞恥に震える一子。学園史に残ること間違いないわ! 来年、各部からの契約金も高騰すること間違いなし!」
慶「あは、あははは……」
冬「ねえ、ネギま?」
賢「そんな決定的瞬間を逃すわけにはいかないからこそ、このデジカメで彼女の雄姿を!」
冬「ねえ」
賢「下の人なんかいないわっ!」
慶「また何だか痛い人になってるわね。春が近いからかしら」
冬「元からよ。それより賢子姉さん、その作戦そのままだと多分上手く行かないわよ」
賢「どうして?」
冬「だって下着は残るじゃない」
賢「あっ、そうか! くぅっ……詰めを誤ったか」
慶「あんまり馬鹿なこと言っていないで、止めておきな…


冬「だから一子の下着にそれぞれ切れ目入れておいたから」
賢「グッジョブ!」
冬「折半ね」



慶「この二人、少しどうにかしないといけないと思うのは私だけかしら」




決意→ダイエット

慶「お姉ちゃんは決めたわ!」
冬「……」
慶「聞いてくれないの?」
冬「好きにすれば」
慶「……」
冬「……」
慶「ふ、冬子ちゃん。お姉ちゃんのこと……嫌い?」
冬「ううん。いてもいなくても別に気にしないし」
慶「ぅぅぅ……」
冬「訂正。泣けば許されると思うところは温厚な私でもムカつくわね」
慶「そんな笑顔で言わなくたっていいじゃないのよっ!」
冬「だって怒るだけ勿体無いし」
慶「凄く酷いこと言ってるし!」

一「冬姉! 幾らなんでもそれはちょっと酷いよ!」
冬「賢子姉さんを病院送りにした一子に比べれば私なんてまだまだ……」
一「だ、だってあれは……ゆ、許せなかったんだもん!」
冬「だからって暴力に訴えるのはねぇ……姉さんなんか見た目しか商品価値ないようなもんなんだから売値が下がったら可哀想でしょうに」
一「もう! 冬姉ったらまるで守銭奴みたいな台詞言わないでよ!」
冬「お金は大事よ。姉妹はいなくなっても生きていけるけど、お金がないと生きていけないし」
一「それって本気!? おかしいよっ!」
慶「ところで、一子……お姉ちゃんの決意表明なんだけど……」
一「慶姉は邪魔だからあっちいっててよっ!」
冬「別に必要以上に蔑ろにしているわけでもないしいいじゃないのよ」
一「そんなの変だよ!」
慶「お、お、お姉ちゃんの話、聞いてくれないかなぁ〜♪」
冬「慶子姉さん。空気を読んで発言している自覚ある? 無いときっと後悔するわよ?」
慶「しゅん……」
一「大体、慶姉が確りしないから!」
冬「上のものが手綱を確り握っていれば物事はそんなに難しくないのよね」
慶「矛先がこっちに!?」


慶「でね、でね、妹達ったらお姉ちゃんのこと二人掛りで責め抜くの……」
賢「病院まで来てそんなこと聞かされても……みのもんたにでも相談しなさい」
慶「主婦じゃないと駄目だって」
賢「したんかい」




有罪サナトリウム

慶「賢子が入院してもう大分経つわね」
一「うっ……」
慶「そんなに酷い怪我なの?」
冬「多分違うと思う」
慶「じゃあ何でかしら?」
冬「1.これ幸いと仮病 2.格好良い医者がいた 3.日頃の不摂生が祟って内科にいる 4.意外と重症」
慶「え、ええと……オーディエンス」
一「クイズなの?」
冬「2はないわね」
慶「どうして? 結構ありそうだけど」
冬「あの病院の医者で賢子姉さんの好みのタイプはいないから」
一「冬姉……念の為にだけど、何でそれを知っているのか聞いていい?」
冬「もう全て私がチェック済みだから。これ以上の説明はいいでしょ?」
一「うん……」
慶「お、お姉ちゃんに似合いそうな人は……そのー」
冬「いるわよ」
慶「本当!?」
冬「小児科の大高。この人は3年前空き地で当時小学生の女の子と親密に遊んでいたのを近所の人に目撃されて……」
慶「パス」
冬「内科の朝倉。どう見ても彼の娘に見えるほどの奥さんは彼を「お兄ちゃん」って呼ぶことで……」
慶「パス」
冬「副院長の深山。重度のロリコンで、昔自分の娘を……」
慶「パス。私の外見から離れた人を紹介してもらえないかしら」
一「というか、最後の二人は結婚しているんじゃ……」
冬「じゃあ坂口、比良坂、三浦、石川の四人あたりかな」
慶「フィフティ・フィフティ」
冬「坂口、比良坂がマシなほ……」
慶「もういい。もういいです」
冬「滅多に体験できそうもない体験が出来そうなのに」
慶「だからもういいってば」
一「それで実際のところ賢姉の長期入院の理由は何なの?」
冬「一子のフラインクロスチョップでしょ?」
一「そんなに大怪我させてないよっ!」
慶「でも一子の拳は痛いとお姉ちゃんは思うんだけど」
冬「確かにそのままマウントからの殴打の途中で首のところ凄い音したし」
一「だ、だって……」
冬「まあきっかけは賢子姉さんの自業自得だから」
慶「切れ目を入れたのは冬子ちゃんじゃなかったかしら」
冬「何のことだか」
一「ふ、冬姉……もしかして」
冬「さてと。じゃあ皆で賢子姉さんの見舞いにでも行きましょうか?」


賢「あ"」
冬「まさかナース服を着て患者を摘み食いとはお釈迦様でも気づかないわね」
賢「あははー」
慶「笑って済む問題!?」




見る目が無い

清「従妹共、元気していたかな」
慶「あ、清華さん♪ こんにちわ!」
清「うむ、随分と御無沙汰していたが、皆変わり無いようで良かった」
一「あ、いえ……賢姉が」
清「ん? ほう、君達は三姉妹ではなかったのかね?」
一「違います」
清「うーむ。そう言われてみれば頭数が一人足りない気もする」
一「そんな数えてみなくても……」
慶「それで清華さんは何の用でいらしたんですか?」
清「いや、用と呼べるほどの用事ではない。単に可愛い従妹共が日々の暮らしで困窮していないかこの私が直々に見に来たのだよ」
一「可愛いなら人数ぐらい覚えていてください」
清「あっはっは。君、名前は何と言ったかな? 随分と面白いことを言う」
一「名前すら覚えられていない!?」
冬「それで賢子姉さんに何の用事があったんですか?」
慶「え、賢子に? どうしてわかるの!?」
清「うむ。相変わらず冬子君は動じないな。しかも賢い。未だに詰らない人生設計を建てているのかね?」
冬「別に詰まらなくは無いですよ。一つの目標に向って真っ直ぐに進んで、逸れそうになれば修正する充実した毎日です」
清「それが詰らなくなくて何とするのだ。まあ、そんな話をしに来たわけじゃない。確かに賢子君に用があってきたのだが、どうしたものか……」
慶「賢子にどんな用が? あの子が何かやらかしたりしたんでしょうか?」
清「まだ何もしていない。これからやらかして貰おうと思って足を運んだのだが、とんだ無駄足だったようだな。やれやれ、ついでとはいえ遠縁の従妹共の顔を見れたし、これで良しとしておこう」
一「ついでとか言ってるし」
冬「事実でしょ」
慶「ぅぅ、そんな酷いことをサラりと言わないで」
清「泣け。人生泣ける時は泣いておくことを私は推奨するよ。大人になれば泣きたくても泣けない事の方が多くなってくる。命短し、泣けや小娘」
一「全然違ってるし」
清「まあ、そんなわけで私は失礼するよ」
慶「え、もうですか?」
清「何分、私もそれなりに忙しい身なのだ。可愛い三従妹の無事な顔が見られればそれでいい」
一「だから一人抜けているんだけど」
清「はっはっは。一子君は結構拘るタイプのようだな」
一「あ、やっぱり名前ぐらいは覚えていたんだ」
清「勿論だとも。今度中学校進学だろう。小六の割には随分と逞しい体つきで吃驚だよ」
一「わ、わざとだ! わざと言ってるでしょう!」
慶「一子! 失礼なこと言わないの!」
一「だ、だって!」
清「まあまあ、慶子君。彼女もまだ若い。意味もなく年嵩の者に刃向かったりしたくなる年頃なんだろう。私も彼女ぐらいの時はそうだった。懐にはいつも肥後守を忍ばせ、そうあれはまだ給食には脱脂粉乳が……」
冬「それじゃあ私は勉強の時間ですから」
清「うむ。冬子君が聞いてくれないのであれば今度こそ失礼しよう」
慶「あ、あの! わ、私はもっと清華さんのお話を聞きた……」
一「はいはい。さっさと帰ってください」
慶「一子!」
一「もう疲れる人の相手をするのはボクは嫌だ!」
清「それでは、また今度。次は一子君にだけ、君の為だけに会いに来よう」
一「来なくていいです」
慶「あ、あの私は……」
清「では。慶子君はその次の機会だ。まあ、覚えていて尚且つ気が向いたら程度で我慢してくれ給え」
慶「はい! それでもお待ちしています」
清「良い返事だ。それではっ」


一「ふぅぅ……やっと帰った」
慶「清華さん、相変わらず素敵……」
一「あれが?」




八面六臂の荒稼ぎ

賢「ただいま」
慶「お帰り、賢子」
賢「うん。私がいない間、変わった事はなかった?」
慶「特にないわね。そっちこそ、どうだった」
賢「不漁もあそこまでくると最悪ね」
慶「そんなことは聞いてないわ」
賢「唯一の機会は邪魔が入って未遂に終わるし」
慶「だから聞いてないって言ってるでしょ」
賢「ところでこの事故保険だけど」
慶「ああ、判子が要るのね」
賢「仕方がないとは言え、階段から転落したということになるのは何だか情けないわね」
慶「まさか妹にマウントでボコられたなんて本当の理由は書けないでしょう。保険下りないし」
賢「まあ、病欠扱いになると折角の今までの苦労もフイになるから仕方ないか」
慶「それで実際、怪我は完治したの?」
賢「ぼちぼちってところね」
慶「ところで賢子」
賢「何?」
慶「このファッション雑誌の広告のモデルって……」
賢「あ、私」
慶「あと、この百貨店のチラシに出ている……」
賢「あ、それも私」
慶「リップクリームのCMに出ていた……」
賢「うん。それも私」
慶「この演劇部のポスターで清華さんと踊っているのは……」
賢「ええ。綺麗でしょう」
慶「……」
賢「? どったの」



慶「本当に怪我して入院してたの?」
賢「失敬な」




決まり手は天然。天然で三好慶子の勝ち

賢「姉さん姉さん」
慶「なあに、賢子ちゃん」
賢「悪いんだけど、この雑誌の今月号買ってきてくれない?」
慶「パシリ!? お姉ちゃんをパシリに使う気!?」
賢「はい千円。お釣りはお駄賃にしていいから」
慶「行って来ま〜す」

冬「……」
賢「ん? 何?」
冬「その雑誌の値段……」
賢「あ、いっけな〜い。今月は増刊号だから消費税込みで1260円だったんだ」
冬「それわざとだと思うけど、多分姉さん、買ってこないわよ」
賢「あははー、でも姉さんだし」


冬「慶子姉さん、財布持っていかなかったもの」


賢「……ま、負けた」
冬「勝ち負け?」




可愛い可愛いマウスちゃん

賢「……今日はちょっとした実験をしようと思って」
一「何? 一体何をするの?」
賢「名付けて『果たして、激突キスは有り得るか否か!』」
一「へ?」
賢「ほら、主人公とヒロインが衝突した際に重なり合う唇と唇。これが実際に可能な現象かどうか検証してみようと今日は演劇部の協力を得て……」
一「帰る」
清「待ち給え、仔猫ちゃん」
一「誰が仔猫ちゃんだよ!?」
賢「私じゃないなら、一子じゃないの?」
一「そんな冷静に言われても……」
清「いや実は、今度の舞台の脚本があがったのだが、激突キスのシーンがわざとらしい、わざとらしいけどいいじゃんの二つの意見にわかれで紛糾してね」
賢「で、本当にあるのかどうかって話になったらしいのよ」
清「そうそう」
一「それでどうしてボクが呼ばれるのさ……演劇部内で……」
清「いや、これは演技ではなくて実験だからね。逆に演技が入ってはまずいんだよ」
賢「かと言って、本当にぶつかったら怪我するかもしれないでしょ? だから……」
一「ボクなら頑丈だから…い・い・と?」
賢「物分りの良い妹を持つと楽でいいわぁ」
清「ははははは、全くだ」
一「笑って言わないでよっ。ボク絶対嫌だからね!」
賢「大丈夫大丈夫。事故性を高めるためにも前触れなく不意打ちでやるから」
一「もっと性質悪いし!?」
清「いきなりやってもいいんだけどね。一応、それじゃあ悪いと思ったから一言断っておこうと……」
一「そこでボクが拒否する権利はないんでしょうか」
清「謙遜しなくても大丈夫。一子君ならきっとできるよ」
一「謙遜じゃなくて……ああもう、この人達はっ!!」
賢「まあ面白そうだし、頑張ってみなさいよ」
一「他人事で言ってるし!」
賢「んー? 私でもいいんだけど、脳震盪でも起こしたら困るし。というか本番ではヒロイン私っぽいし」
一「あれ? 賢姉いつ演劇部に…」
賢「そうじゃないんだけど、マサやんが主役だと相手役の女の子を決めるのが大変らしくって、私がやることが多いのよ」
清「まあ人気者の宿命とはいえ、些か鬱陶しい気分でもあるのだがね」
一「だったら主役をしなければいいじゃん」
清「面白いことを言う。この私が主役以外の何をやれと言うんだい」
賢「やればやったで主役食う存在感だしね」
一「ぅぅ、確かに存在自体派手だしなぁ……」
賢「そういうことで役得だと思って諦めなさい」
一「何処が!? というか本当に嫌だからね! ボク、ファ…」
賢「ファ?」
一「……ソラシドドレミ」
清「そうか、一子君はまだ口付けの経験がないのか」
賢「ふーん。奥手ねー」
一「少しも騙されてくんないっ!?」
清「確かに、衝突キスが最初では可哀想だな」
賢「可哀想よね」
一「う、うん……そ、そのだから……」
清「一子君」
一「え? あっ!?………ん! んんんっ!? んんっ、んんん――――っ!」
清「ん……んんっ、ふぅ……これでもう大丈夫」
一「ぅ、ぅ……」
清「舌はまた今度ということで」
一「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっっっ!!!」
賢「あ、一子!!」
清「ふふ、照れちゃって可愛いなぁ」
賢「いやー、その、マサやん。流石にちょっと……」
清「?」


一「dfslkdfsfゲjfゲ亜lv:レア視wめ個:じぇアwjヴぁうぇc!!」
慶「あら、一子どうした……きゃぁっ! んむぐっ!?」



清「ふむふむ……」
賢「わー、本当にあるのね。衝突キス……」




オセロのように

賢「あいたたた……。まだ痛むわ」
冬「昨日一子が頭から布団被ってたの、また姉さんの仕業って聞いたけど」
賢「こっちもあわや再入院というところだったわ」
冬「激しく自業自得じゃない」
賢「でもあれはマサやんが仕出かしたせいで私はその場にいただけよ」
冬「根本的な原因に思い至らないその自覚のなさが姉さんの駄目なところだと思う」
賢「その情け容赦ないところが冬子らしいわね。背筋がゾクゾクするわ」
冬「ありがと」
賢「誉めてない誉めてない」
冬「ところで婿養子のマンションってここでいいの?」
賢「ええ。約束の時間だし、もういるんじゃない?」
冬「私の時と別のマンションとはやるわね……」
賢「え? 何か言った?」
冬「ううん。あの人も奥さんに頭上がらないくせに、派手な生活してるわよねって」
賢「まああっさり言っちゃえば成り上がりだしね」
冬「姉さんも時折身も蓋もないところあると思う」
賢「そう?」
冬「使い分けている分、私より性質悪いと思うけど」
賢「んー、そうかしら…」
冬「まあいいわ。行きましょう」
賢「でも、何でついてきたの。普段なら頼まれても断るくせに」
冬「私は何時何処で誰に対しても自分に正直に生きてるから。姉さんと違って」
賢「?」

今「これはこれは冬子ちゃんに……おや賢子ちゃんも。二人とも、いらっしゃい」
賢「? まあ、いいか。ご無沙汰です」
冬「どうも。昨日ぶり」
賢「昨日会ったの?」
冬「ええ」
賢「?」
今「賢子ちゃん。怪我のほうはどう?」
賢「お陰さまで、ばっちしです」
今「ところで以前お貸しした松島と平蜘蛛ですが……」
賢「あ、はいはい」
今「こちらの方の書面にサインをお願いして下されば不問ということでどうでしょうか」
賢「本当にすみま……へ? 手切れ金?」
今「はい。そういうことで」
冬「うん。そういうことで」



賢「うわ、乗り換えられてる!?」




外出しは避妊に非ず

賢「冬子に負けるとは……」
松「賢子さん、珍しく一人すか?」
賢「あー、松永弟か。あんたこそ部室に寄るなんて、珍しいじゃない……ちょっといいかしら」
松「なんすか?」
賢「私って冬子より魅力に劣るかしら」
松「はあ?」
賢「両方食ったものとしての意見を聞きたくて」
松「んー」
賢「自分で聞いておいてなんだけど、あんたも悪びれないわね」
松「強いて言えば有難味?」
賢「ぐっ。わ、私って安っぽい?」
松「相当」
賢「うむむむ……」
松「ひょっとして気付いてなかったんすか?」
賢「気付いていなかったわけじゃないけど……でも、なんか勿体つけるのって嫌だし」
松「ただ言わせてもらえれば、性を娯楽と考えている賢子さんと、性を道具として使っている冬子の差じゃないかと」
賢「なるほど……」
松「まあ元気だしてくださいや。賢子さんが元気ないと皆、心配しますぜ」
賢「……ありがと」
松「じゃ、俺はこれで……」
賢「ひょっとして彼女のところ?」
松「んげぐっ!? し、知ってたんすか?」
賢「孕ましちゃったんだって? でも実際のところ本当にあんたがやったのかどうかよくわからんないんでしょ? いいの?」
松「まあケジメっすよ。例え俺の子であろうとなかろうと、そんなことは絶対ありえないと言い切れない真似をしている以上は、仕方ないっす」
賢「長輔……」
松「ですから茉莉亞に結婚を迫られようと、学校を停学になろうと、全ては俺の責任っすから仕方ないっす」
賢「え? 茉莉亞?」
松「あ、誰だかはまだあんまり知られてないと思うっす。一応内緒の話なんで……」
賢「茉莉亞って……図書委員の高山さんよね? あんたの今の彼女って内藤さんじゃ……」
松「ええ。ですから、貞子の奴にキチンと話して謝ってこようと思ってこれから……」
賢「……」
松「この歳で身を固めることになるなんて思いもよらなかったっすけど、まあこれも人生っす」
賢「そ、そうかしら……」
松「いずれ退学届けを出すことになると思うんで、その……こんなこと今更言える義理じゃないんすが……」
賢「何?」
松「姉貴のこと頼みます。あれは見ての通りな奴ですから」
賢「あんたに言われるまでも無いわ。それに姉さんがあの子を放って置かないから大丈夫よ」
松「そうっすね……でも俺これから忙しくなると思うんで、それだけが心配で。俺のせいで姉貴も中傷受けると思うし……」
賢「この問題児だらけの学校でそんな心配し無くったっていいわよ。それより……」
松「なんすか?」
賢「私があんたの子を孕んだって聞いたのは内藤さんなんだけど」
松「え?」
賢「だからてっきりあんたの行動はそっちのことだとばかり……」
松「……」
賢「……」



松「俺のことも頼んでいいすか?」
賢「無理」




知らぬがお互い

清「うむ、それではまた。ごきげんよう」
海「はいっ」
有「今度の劇、頑張って下さい!!」
清「ははは。頑張るのは私の趣味ではないし、得意ともしない。いつも通り完璧にこなすだけだよ。ではっ」

海「もう、則子ったら」
有「ぅぅ、御免友美。……つい、舞い上がっちゃって」
海「まあ、いいけどね」
有「はぅー、清華お姉様……」
海「相変わらず入れ込んでるわね」
有「お姉様と同じ演劇部に入っている友美にはこの気持ち、わからないわ!」
海「まあ、ある意味そうかも。でも、今度の劇も凄い人入りになるんでしょうね」
有「殆ど清華お姉様目当てでしょうけどね」
海「でも、お相手の賢子お姉様も素敵ですわ」
有「賢子先輩もこうして写真で見る限り、不足なく聡明で知的に見えるのになぁ……」
海「何言ってるのよ! 賢子お姉様は聡明で知的じゃない!」
有「う、うん……でも賢子先輩羨ましいなぁ。私も先輩ぐらい美人だったらなぁ……はぁ」
海「そういえば、則子の家の温泉によく入りに来るんでしょう。賢子お姉様」
有「うん」
海「ひょっとして一緒に入ったりするわけ? 温泉」
有「ま、まさか!?」
海「やっぱり……恐れ多いわよね?」
有「いやお酒臭……じゃなくて、う、うん。そう。だから睨まないで」
海「お美しいのは勿論、身体とかも凄く格好良いし。明るくて親しみやすいし……嗚呼、私も茶道部に入れば良かった……」
有「いや、入らなくて正解」
海「え、何か言った?」
有「ううん。でも本当にこのポスター見る限り、ヅカ顔負けよね。ううん、化粧に頼らない分清華お姉様の方がずっと上よね」
海「写真は喋らないからね」
有「何よ! 清華お姉様の御声に文句あるの!?」
海「そうじゃなくてその言動が……なかなか凡人には理解されづらい気がするのよ。うん。だからそんなに怒らない怒らない」
有「本当に王子様がいるとしたらあの御方こそがそうなのかも知れないわ……」
海「賢子お姉様ほどお嬢様に相応しい人はいないでしょうねぇ……」
有「……」
海「……」


有・海「「知らぬが仏ね」」


有・海「「あれ?」」




世界の中心で、死ねとさけぶ

賢「別れたぁ!? あんたと彼女が?」
小「……ええ」
賢「あんたと彼女って言ったらもう幼馴染の典型例というか、隣同士の部屋から窓ごしに話せる距離、小中高と一緒の学校で登下校も一緒の親公認のプチ許婚カップルだったじゃない」
小「まあ」
賢「それも年中ベタベタというか懐き切った子犬の如くずっとあんたに付きまとってた彼女じゃない。あんたが烏は白いといえば信じちゃうぐらい盲動的な」
小「……はぁ」
賢「正直周囲からも、仲が良過ぎて見ていて痛いとか、逆に羨ましくないとか、やっかみすら呆れの前に屈服したあんたたちが喧嘩!?」
小「ま、まあ……」
賢「で、理由は?」
小「あいつが悪いんです」
賢「聞こうじゃないの」
小「実はこないだの土曜日、俺の両親が用事で出かけてて……」
賢「ふんふん」
小「ついに初エッチに漕ぎ着けたんですよ」
賢「ほうほう」
小「部屋に招き入れて、ラブロマンスな映画を二人で見て……」
賢「必死こいてマニュアル通りのムードを作ったわけね」
小「あいつも意識してたらしくて、ちらちら落ち着きをなくして」
賢「初々しくていい感じじゃない」
小「初めてのキス。本当にお互い初めてで、すごくどきどきしたんです」
賢「うん」
小「そして服を脱がして、いよいよという時に」
賢「時に?」
小「……あいつ、何て言ったと思います?」
賢「えーと。彼女なら……「恥ずかしいから電気消して」?」
小「そんなんだったらどんなに良かったか」
賢「じゃ、じゃあ興ざめなことでも言ったの。生理だとか危険日だとか」
小「先輩じゃあるまいし」
賢「うわ、ひどいこと言うわねあんた。じゃあ……何よ?」
小「俺は初めてだったんです」
賢「まあ、そうでしょうねえ。あんたたちってどう見てもそこまで進んでいるようには見えなかったもの」
小「いえ、「俺は」初めてだったんです」
賢「だから……え?」
小「ええ。あいつ、「わたしは慣れてるけど、伸祐ちゃんは大丈夫? リードしようか?」
と」
賢「……え、え、ええっ!? ちょ、ちょっと待ってよ、それって……」
小「あいつ……あいつ……既に経験済みでしたっ」
賢「年中あんたと一緒にいる彼女が!? そんな、まさか……それって何?」
小「問い詰めたところ」
賢「……う、うん」
小「「好きな人が出来るまで、女の子はお父さんがいるけど、男の子は自分でしなくちゃいけなんでしょ?」と」
賢「……ええと、それって……」
小「それで、あいつの親父、殴り倒しちゃったんですが、大丈夫ですかね?」
賢「大丈夫。それ無罪。私が認めるから」
則「いや、賢子先輩裁判長じゃないし」
賢「則子! あんたは黙ってなさい。というかいつの間に来てたのよ」
則「賢子先輩の声大き過ぎです。部室の外まで響きますよ……でもそれって篠原さんに罪は無いんじゃないの。不幸にも騙されていた訳だし」
小「だって、中古じゃないですかっ!」
則「なっ……」
賢「あんた死刑。今直ぐ死んでしまいなさい」
小「それに俺の萎れたモノを見て……クスッと、クスッと笑いやがったんですよ!「パパとは違うんだね」って!!」
賢「うーん、それはちょっと男の立場からするとキツイかも。則子、あんたはどう思う?」


則「……先輩たち皆、死んじゃえばいいのに」




しでかした猫

慶「皆さん、おはこんばんちは。姉は小学五年生、三好慶子です」
冬「その台詞から漂う加齢臭に涙を禁じえない妹、三好冬子です」
慶「どこがよっ」
冬「気づいていないところがもう……何と言うか、手遅れ?」
慶「ムッキー。妹の癖に!」
冬「こんな狭い場所ですので始めましての方は逆にいないかも知れませんが、ご無沙汰でした」
慶「きっと皆忘れ果てているでしょうけどね!」
冬「書き手含む」
慶「忌み子! 私たちは忌み子だったんだわ!」
冬「忌み子姉妹ですが、今日だけは頑張って生きてみます」
慶「ぐすん、ひっく……負けないもん!」
冬「自分で言ってて悲しくなってきたらしい姉は見捨てて……あら?」
慶「因みに書き手の三四企画系最終ログは数年前……あ、鷹野さんの企画じゃないわよ」
冬「書こうとした、なら誰でも言えますけどね。ところで慶子姉さん」
慶「何? ……何よ! まだフラれてないわよ!」
冬「慶子姉さんのいつもの妄想恋愛の話はどうでもいいんですが」
慶「妄想じゃないもん! 今度こそ、きっと……とか思っているから絶対実現するもん。いつか!」
冬「安い絶対ですね。じゃなくてですね、質問です」
慶「あ……あら、なあに? このお姉ちゃんが何でも答えてあげるわ。恋愛相談ならお手の物よ!」
冬「……その自信は見習うべきかもしれません、私以外の人は」
慶「もう冬子ちゃんだって、うん、大丈夫よ」
冬「イラッっときましたが、話が進まないので――」
慶「もう、話が進まないのはこの世界のお約束じゃない。そんな事も知らないなんて、冬子ちゃんもまだまだ子供ねえ」
冬「暴力に訴えない私にファンレター募集中です。年収三千万以上の未婚の方限定。性別不問」
慶「わ、私は愛さえあればお金なんて……」
冬「姉さん、なんでいるんですか?」
慶「ひどい! 存在さえ全否定!」
冬「意図的にボカしましたが、そうではなくてこのコーナーは賢子姉さんを私が弄るコーナーだった筈ですが」
慶「コーナー? いつコーナーになったの? で、賢子ちゃん? あの娘ならまた病院よ」
冬「またですか。戯言主人公でも目指している気なんですかね? 身の程知らずが」
慶「そうじゃなくて」
冬「わかってますよ。また堕胎ですね」
慶「違うわよぅ! そんな水子の霊に悩まされそうな話じゃないわ! ただの怪我よ」
冬「実は知ってます。また畠山運輸のトラックに撥ねられたんですよね」
慶「そうよ、今月で三度目。もう狙われてるわね、あの娘」
冬「どうもあそこの馬鹿兄弟、どっちが賢子姉さんを落とすか賭けしてるみたいで」
慶「賢子の命の方が先に落としかねないわね」
冬「ところで姉さん、いい保険会社知らない?」
慶「この話の流れでそれはどうなのよ!?」
冬「大手は一通り済ませちゃってて……」
慶「止めなさい! 不謹慎よ!」
冬「そうね、ごめんなさい。まだ見ぬ三好水子の為にも」
慶「そんな妹も姪もいないからっ! それにその話も終わってるからっ!」
冬「まあそんなわけで賢子姉さんの代わりに慶子姉さんがいたのでした。おしまい」
慶「おしまい!? これでおしまいなのっ!?」
冬「だって、私、慶子姉さんと話すことなんて特にないし」
慶「冷たっ。冬どころか永久凍土のような冷たさよ、冬子っ!」
冬「じゃあ三十分二百円で」
慶「どこのネットカフェよ!」
冬「私の貴重な時間を慶子姉さんに費やしているかと思えば……ねえ?」
慶「同意を求められる意味がわからないわっ!」
冬「ああ、そうそう因みに一子は修学旅行です。多分」
慶「無視!? お姉ちゃんを無視!?」
冬「いつものことじゃないですか」
慶「くっ……。そう言えば一子から封筒届いたじゃない、九州から」
冬「他校の学生と意気投合して楽しんでるみたいですね。ホラ、この長身のハンサム君」
慶「なん……だと……」
冬「この写真の彼、地元の隣県の高校の生徒らしいわ」
慶「い、一子の癖にっ! あら、この写真、猫なんか抱いてるけど……?」
冬「一子がこっそり飼ってる猫よ。付けてる鈴は私があげたものだけど」
慶「いつの間に……くぅぅ、お姉ちゃんが猫大好きなの知ってて!」
冬「可愛がり過ぎて、●しちゃったのよね」
慶「伏字にしないで! ちょっと疲れさせちゃっただけよ!」
冬「アタシ、フクダしちゃおうかなぁ」
慶「意味わからないわっ!」
冬「因みにさっきの可愛がるという言葉の意味は業界用語で……」
慶「あれは文字通りの意味よっ!!」
冬「まあそんな訳で、姉から隔離しているらしいわ。それで私も賢子姉さんも信用できないからって連れてってるの」
慶「いいのかしら……ううぅ、でも羨ましい」
冬「猫が? イケメンが?」
慶「どっちもよ!」
冬「信親君が、センゴクが?」
慶「どっちの名前も知ってるのね……だからどっちもよ!」
冬「そんな素直な慶子姉さんに朗報です」
慶「なによ」
冬「実は彼、重度の猫アレルギー」
慶「ぐぅ!」
冬「まあだからって姉さんに靡く訳じゃないけどね。彼も猫も」
慶「放っておいて! ……あら、何か鈴の音が聞こえてこない?」
冬「あら、センゴクが凄い勢いで走ってこっちにやってくるわね」
慶「九州で何かあったのかしら?」
冬「さあ?(ニヤニヤ)おー、よしよし」
慶「あー、ずるい! お姉ちゃんにも触らせて!」


セ「にゃーご♪」




この中に神がいます(祀られてる的意味で)

房「実クンどうしたのぉ? 暗い顔してぇ。二日酔いならいい薬あるよぅ?」
実「違うよ。賢子先輩じゃあるまいし」
房「えぇー、じゃあ何ぃ? 何なのかなぁ? かなぁ?」
実「……はぁ。いや、礼拝が憂鬱だなって」
房「そう? 授業ないから楽じゃん」
実「授業の方がまだいいよ」
房「そうかなぁ? 聖書読む方が面倒くないかなぁ」
実「違う。普通の授業の話だよ」
房「だってぇ神学だったらぁ礼拝かぁフロイス先生のお説教かぁどっちかじゃん」
実「だから神学そのものが……あー、もういい。お前と話していると疲れる」
房「えぇー、自分から話し出したのにぃ」
実「聞いたのはお前だろ……はぁ」
房「わたしは楽だから好きだけどなぁ」
実「さっき聞いたよ、それ」
房「茉莉亞ちゃんなんかぁいつもはりきってるじゃん」
実「ああ、高山は好きだよな、何か異常なぐらい」
房「茉莉亞ちゃん、新しいもの好きだからねぇ。男と祟りは新しいものに限るってね」
実「新しい祟りって何だよ。あと本人絶対言ってねえだろそれ」
房「んっとねぇ、ブルーレイからぁ出てくるぅ貞子とかぁ」
実「新しいのか、それ?」
貞「呼んだかしら?」
実「呼んでない呼んでない」
貞「ところで長輔見なかったかしら」
房「知らないよぉ。でも知っててもぉ教え「見てないぞ」」
貞「そう? 全く、そろそろ式の日取り決めないといけないのに……ブツブツ」
実「この馬鹿。内藤に恨まれたら面倒だろうが」
房「えぇー、だってぇ貞子ちゃんってぇ本当のぉ貞子みたいでぇ気味悪いもん」
実「本当のって……まあいいや。あれ?」
房「あ、長輔くんと茉莉亞ちゃんだ。ホラホラァ長輔クンもぉやっぱり礼拝好きみたい」

松「なあ茉莉亞。何で生徒指導の先生に処女懐胎だなんて嘘吐いたんだ? 俺を庇ったつもりなのか?」
茉「ケッケッケ。人類全ては神の仔じゃからのう。この胎の子もそうでない訳がなかろうて」
松「いや神の子って所謂キリストのことであって、人類は神の子羊とかそう呼ばれて……」
茉「イーッヒッヒヒ。つまりは神の前では皆、山○KID徳郁というわけさ」
松「だからその間違えを絶対認めない姿勢は凄いけどさ、何っつーか……」
茉「クツクツクツ。神は仰ったさ。高校中退より卒業した方が就職も有利だと」
松「……それが真相か。いや、それ言ったの神じゃないだろ少なくても」
貞「お待ちなさい、この泥棒猫! 私の長輔を誑かして何をするつもりなのかしらっ!」
茉「ニヒ。仕込みは流々、仕上げは十ヶ月後ってところじゃなあ」
貞「キィィィィ。これみよがしにスカートをたくし上げてお腹を撫でやがってぇぇぇぇ! 私だって孕んでますわ! 長輔にはこのお腹の子の責任取ってもらいますからね」
松「いやお前のは結局、想像妊娠だったじゃねか! どんだけ妄想酷いんだよお前」
茉「カラカラカラ。マラドー○は言ったさ。足りなければ俺の手も貸してやると」
貞「あらいい人ですわね、○ラドーナっ」
茉「キシシ、三度の飯よりフィスト○ァック大好きっ子だから子宮引き抜きもお手の物さ」
貞「悪魔! 貴方は悪魔よマラ○ーナっ!」
松「えっと……神さま神さま。居ましたら是非何とかして無かったことにして欲しいっす。駄目なら人類滅亡ってことで一つ」
貞「長輔。ちょっと礼拝堂裏にいらっしゃい。つうか来なさい」
茉「グッシッシ。そこがあの女のハウスねっつーことさ」
貞「私、路上生活者じゃありませんわ!」
松「最後は、どうか幸せな記憶を」

房「ホラホラホラァ、あんなにぃ熱心にぃ祈ってるよ」
実「………帰るか。血の雨降る前に」




もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対

茉「イーヒヒヒ。いらっしゃい」
慶「こんちには、高山さん。相変わらずキャラ作り捲くりね」
茉「クックック…まあそう言うでないわ。で、今日は何用じゃの?」
慶「実は恋占いを……」
茉「ニョホホホ。お帰りはあちらじゃよ」
慶「酷っ」
茉「フォフォフォ、占うまでもないさ。わぬしは昔も今もこの先もずっと恋など実らぬ顔をしているからのう」
慶「そんなことないっ、そんなことないんだったらっ!」
茉「ヒャハー、まあ無碍にするのも何じゃて。形ばかりでも占ってやろうかの」
慶「……当たるって評判なのに、なんて酷い」
茉「ウッシッシ。当たるも諸星、当たラムもだっちゃじゃよ。さてさてどこぞの被害者との捏造が希望かの」
慶「いちいち引っかかる言い方しないで頂戴っ。そ、それでね……実は一年の小笠原君なんだけど……ほら彼って最近彼女と……房枝ちゃんと別れたでしょう。べ、別に付け入るとかそんなんじゃなくてね、落ち込んでいる彼を励ましていたら母性愛? そのあたりから気が付いたらね、彼の可愛らしさの中にもワイルドな部分とかそのへんが……」
茉「はいはい、うんうん彼死ぬ。もう死ぬから無理。残念でした。お帰りはあちらで」
慶「思いっきり適当に言わないで! 占ってないし、キャラ作りすら忘れてるしっ!」
茉「あはは。図書委員の仕事が忙しいから、はい。終了。じゃあね」
慶「ねえ、私だって怒る時は怒るわよ?」

房「ぐす……伸祐ちゃん……どうして……」
冬「嫌な事件だったわね」
賢「……ねえ、姉さん。姉さんが原因だって噂が流れてるんだけど」
慶「今ちょっとこの娘殴るの忙しいから後でね」
茉「がっはっは。真実はいつも捏造」
慶「何が捏造よ! 彼は引っ越して転校しただけなんだってばっ!」
茉「あははは。占いさえしなければこんなことにはならなかったのだから、わっちは間違ってなどおらぬよ」
冬「それ占いというより呪いじゃないの?」
茉「ぎゃははは。祟りと呼んでくりゃれ」
房「ぐす……ひっく……」
賢「でも本当のところ彼、本当に引っ越しただけなの? 夜逃げ同然だって聞いてるけど」


房「あ、彼がぁ引っ越したのはぁ以前彼にぃ殴られた私のぉパパのぉ報復だって」
慶・賢・冬「「「それ最初に言いなさいよ!」」」