初出:1998年09月18日(金) 改稿:2001年03月04日(日)
『好きになったのはわたしから』
「あのね……その……いてくれる?」
シャツの裾を軽く引っ張っていた。
私、必死だったと思う。
ずっと下ばかり向いて、顔も見られなかったけど。
日頃の私には似つかわしくないと思う。
けど、これも私。
自分でも驚いたけど。
猫なんて、被ってない。
そう、思う。
そう、信じてる。
…分かってくれると、信じてる。
「……っ!!」
気がつくと、抱きしめられていた。
頭、撫でられてた。
その顔、見られなかったけど。
きっと笑ってたと思う。
ちょっとだけ、困ったような。
瞼に浮かぶいつもの顔。
優しい、顔。
「あれ? どうして……やだな……涙なんか……ヤダ、カッコ悪い……」
いつまでも、撫でられていた。
ずっと。
ずっと。
…プロポーズしたのも、そう私から……。
『好きになったのはわたしから』
「んっ……ん――っ……」
私の頬に軽くキスをしてくた。
ゆっくりと唇を押しつけるだけの、優しい、キス。
火照った頬が更に熱くなる。
この時、興奮していた。
私は。
とても。
「んっ……んむっ……」
耳たぶを唇で軽く啄んできた。
力が入っていない。
唇で挟み込むだけ。
もごもごと動かしつつ、場所をずらして弄くってくる。
以前、息を吹きかけられた事があったが、それはしなかった。
身構えていた分、肩すかしを食った気分に少しなる。
もしかしたら、それに気付いたいたのかも知れない。
「ぁっ!!」
服の上から、胸を撫でられる。
そして、ゆっくりと掴まないようにして、掌全体で撫であげる。
それだけんあおに過敏に身体が反応する。
声が漏れていた。
私の、声。
生まれてから二十年近く聞き続けてきた自分の声。
でも、何故か遠い世界の声に感じる。
イアホンで他人の声を聴いている気分になる。
「んぁっぅんっ!!……」
耳を舐められた。
その手が、服の中に滑り込む。
侵入してくるその手は温かいと言うよりも、熱い。
熱い手が火照った私の肌を更に熱する。
あまり愉快な気分ではないが、決して不快ではなかった。
そこまで考える余裕がある事自体は、軽い驚きだったが。
醒めているわけではない。
その証拠に、今、ブラジャーに直接触れられた掌に酷く興奮している。
頭がくらくらする。
胸がどきどきする。
正直、そんな有り触れた表現がどこまで通じるのか疑問だった。
でも、今の私は、くらくらで、どきどきだった。
ちょっと口づけをする。
そんな表現がぴったしのようにキスをした。
柔らかい唇の感触。
お互い、照れくさくなったのかも知れない。
そうして場を繋いで、私は服を脱がされていた。
私も、脱ぎたかった。
熱くなった身体は、発汗していたから。
服を着ていることが、煩わしくなった訳ではないけど。
「ぅんっ……」
軽い驚きを、唇で塞がれた。
口吸いと呼ばれるような激しいキス。
気がつくと、私はブラジャーも取られていた。
心の準備が出来ていなかったせいで、ちょっとだけ狼狽する。
そしてちょっとだけ忘れていた羞恥心が蘇る。
…手早い。
外気に晒される乳房が妙に心細い。
気がつくと手で胸を隠していた。
そんな真似をしようとするつもりはなかったのに、何故かそうしていた。
無意識と言ってもいい。
これは恥じらいとは別の感情だと思うけど、全く関係ないとも言えない。
ない交ぜになった理屈じゃない行動だと、私は思うことにした。
向こうはどう思ったか知らないけども。
「……」
もしかしたら、笑ったのだろうか。
そんな空気の揺れを感じた。
ただ、私は顔を上げる勇気がなかった。
緊張しているのだろう、顔が強ばって動かない。
何か、間が置かれた。
妙な、間だ。
これからどうなるのだろう。
そう考えるような、間だ。
私は、天井を見ていた。
向こうは……そこで時間の経過で少し緊張のほぐれた顔を上げる。
「ぁ……」
見るんじゃなかった。
服を脱いでいた。
「あんまし、格好良い光景じゃないね」
こっちの視線に気付いて、おどける。
正直、滑稽だった。
でも、欲目だろうか。
頼もしく見えたのは。
余人なら、決してそう感じることはないだろうけど。
再開。
そう呼んで差し支えないのだろう。
ベッドの上で座るような姿勢になっていた私は、後ろから被せられるように腕を回されていた。
その手が首に掛かれば技へと変貌する。
…あ、私、馬鹿なこと、考えてる。
首筋は、唇が占拠した。
そしてからその両手は、私の双房に当てられていた。
後ろから、ゆっくりと揉みしだかれていく。
こね回している掌が、とても熱い。
ゴムボールを潰すように、ひしゃげる胸が何だか可笑しい。
そう考えていないと、羞恥が頭をもたげる。
快楽に身を任せると言うが、なかなか出来ない。
瞬間的に、全てが飛ぶ時もあるけど、まだどこかで踏みとどまっているようだ。
雑念が、常に頭に浮かぶし、
第一、怖い。
指が、乳首に掛かっていた。押したり、摘んだり、軽く引っ張ったり、良い玩具だとばかりに弄ばれる。
再び寝かされた私の両腕は、投げ出されたまま、やることが無くて困っていたというのに。
乳房を揉まれ、乳首を転がされ、そんな手の動きに舌が、口が加わる。
獣に襲われて食べられてしまうような錯覚が思い出される。
熱い口の粘膜が私の胸の肌を蹂躙する。
舌が、乳首の先を突つきあげる。
「や……やっぱ立つんだ、乳首」
「まぁ、敏感なところだから……ね」
私の誤魔化すような問い掛けにも律儀に応えてくれる。
結構、馬鹿なヤツ。
黙ってれば、クールとでも言われるだろうに。
でも、笑えない。そんな余裕がない。
あ、私……感じてる。多分。
「ぁんっ!……ぅ!!」
喘ぎ声、上手く出せないな。
結構、研究したのに……。
……何にも考えないで
……無我夢中で
……フワフワして
……恐怖のあまりあっという間に
……etc
そう聞いていたのに。
「んんっ……くっ……はっ……う、ん……」
何か、聞いていたのと違う。
かなり狼狽しつつも、
羞恥はあるけれど、
……結構、こうして考えていられる。
…嬉しくないけど。
だけど、その思いは杞憂だったようだ。
感じることも。
喘ぐことも。
「はぁっ……んっ!!」
次第に身体の至る所の触覚に対する敏感な部分を刺激されるたび、くすぐったいに似た、何とも言えない気分に襲われる。
それが断続的に行われるようになるにつれ、考えるような時間が減る。
自分が醒めていなかったと再確認出来た、不感症ではなかったと思ってホッとするのが精一杯なぐらい。
あ、相手が下手ってのは考えない。取り敢えず。
何にせよ、今はもう……
「はっ……ぇぁ…っん……!」
声になってない。
一方、相手の唇は私を苛める為に忙しい。
舐めて、つついて。
こちらの反応を楽しむように。
「んくっ……はぁ、はぁっ、んむ……はぁんっ……んんっ……」
相変わらず私の手はすることがない。
シーツが上手く握れない。
でも、それに反して私の身体を刺激する手は、休むことを知らない。
撫でたり、さすったり。
やっとのことで思い浮かばす事の出来た単語は「人形遊び」だ。
完全に玩具にされているような気分だ。
…わたし、きっと泣きそうな顔、してるだろうな……。
「はくっ!! ……んぅんんん……ぅんっ!!」
ショーツの上からののんびりとした刺激が、いつの間にか潜り込ませての断続的な刺激になる。
伸びていた手が這ってくように苛めてきた刺激が、徐々に激しい動きへと変わる。
「はぁっ、はんっ……んくっ……あは……」
そしてお尻の方から巻き取るように剥ぎ取られて、私は全裸にされた。
「えっ……ぁ……や……」
向こうは既に脱いでいたわけだからこれでおあいこということになる。
そう、切れ切れになりがちの思考で考える。
差し入れられていた指が、これが最後とばかりに蠢くのを感じる。
「ああぁっ……はっ……はぁ、はぁ、はぁ……あんっ……」
はぁぁっ!!……
「んっ……」
その瞬間、一瞬だけの解放。
ぐったりした気分になる。
荒い息、している自分に気付く。
空気を無事に肺まで送り込めているか不安なように呼吸を繰り返す。
胸もそれに合わせて上下している。
なんかこのアングルだと双房がだらしない固まりに見える。
焦点を合わせる。
気がつかないうちにぼやかしていたらしい。
まるでカメラのピントを合わせるように泳いでいた目を固定させる。
唾液か汗かで、濡れていた。
身体も完全に汗まみれだ。
何か艶っぽさを感じる。
視線が当然のように動き、見る。
「あっ……ぅ……」
ちょっとさっきとはトーン違いの声。
視界に入る。
出番が来たらしい。
「…………」
絶句する。
それしか、出来なかった。
そして……。
「……」
「え……も、もう……」
気配を察して狼狽した私の声に、苦笑を零された。
「?」
「あっ!」
焦る。
何、止めてるんだろ、私。
いや、それ以前に何、口走ってんだろ、わたし。
「あ、ゴ、ゴメンなさい……そ、その読んだ本とか……その……あ、何言ってるんだろアタシ……」
泥沼状態。混乱する。
しかも、こんな時に。
この瞬間に。
「く、くく……」
「ご、御免なさいっ!!」
笑い出され、ますます取り乱す私だったが、
「あのさ……」
そう口元に笑みを残したまま、私の耳元に口を近付けた。そして、
「下手に長引かせて……失敗したらマズイだろ」
茶化すように囁いた。
相変わらず。
こんな時でさえ、相変わらずだ。だから、
「あ……は、初めて?」
と、更に余計なことを口走ってしまう。考え無しだ。勿論。
「そりゃ、こっちの科白だって……」
相手の笑いが再び苦笑に変わるのを感じる。ちょっと、気まずい。
「………………」
これ以上、何か口を開くと取り返しのつかないような気がして、口籠もってしまった。
いや、顔を上げられなくなった。
別の意味で、恥ずかしくて。
…あうあうあうあうあう。
「まぁ、どうだろうね」
こっちの状態を察したのか、場を繋ぐように、言ってくれた。
答えていなかったが。
ツッコミを入れる心のゆとりがない。
「……で、どうなのかな。そっちは?」
あ、興味津々って顔だ。って言うか、からかおうという顔だ。
マズイ話題を振ってしまった。
でも、考えるゆとりもなく、
「す、数ヶ月も付き合えば、私があなた以外と付き合ったことないこと気付いてるでしょ……?」
何かもう無茶苦茶。
八つ当たりでも、誤魔化しでも、取り繕いでもあって、ちょっぴり本音も混ざっている。
それと、少しの不安。
「あれ? 俺と綾香、付き合ってたの?」
「な、何よぅっ、ここまで来て違うって言うのっ!!」
相変わらずの意地悪。
分かっていても遂、声をあげてしまう。
決して、優しいだけじゃない。
「じゃあ……「好き」って言ってくれる?」
「!!」
クスクスクス……。
笑うと目が線のように細まる。
漫画で言うところの糸目に近い。
それは初めて会ったときから気付いたこと。
でも、あの時は今ほど、色んな笑い方する人とは思わなかったな。
「…………す、好き……よ」
「ありがとう」
「……っ!」
顔から火を吹くようになっている私の心境を察して、そうおどけるように言ってキスをしてくれた。
その気遣いが、ちょっと嬉しい。
誤魔化されたような気分にもなるけど。
…馬鹿……私……どうしたらいいのよ……。
「思えばいい。感じればいい。理屈じゃないと、思うし、ね……」
またしてもこちらの考えを察したかのように、囁く。
「んっ……」
時には子供っぽかったり。
妙に年寄り臭かったり。
とっても優しかったり。
無茶苦茶意地悪だったり。
あなたは色々な顔を見せてくれる。
…でも……。
「……俺も、好きだよ」
やっぱりずるい。
ここで、そんな真面目な顔していられたら……。
「不安?」
「……」
「こっちも、不安は一緒だけどね……」
こっちが固まって動けないままなのを知っているような、そんな素振り。
「………」
「……するよ」
「うん……」
ゆっくりと唇が重ね合わされた。
半開きの口から、舌が入り込んでくる気がして警戒する。
だが、本当の侵入はそこからではない。
「あはっ……ん……はぅん……んっ……」
圧迫感。
違和感。
「んぐっ……あああぁぁっ……んっ……」
一瞬の出来事。
無条件の痛み。
…は、入って……る……
自分の手をそれぞれ固く握り締める。
爪が食い込む。
でも、そんな痛みは感じない。
「んっ……んんっ……」
痛い。
ただただ、痛い。
「……っ!!…ぁっ!!」
目尻から再び溢れる涙。
「んんっ……痛っ……!!」
私に無駄なことは聞かない。
多分、答えを知っているから。
気持ちを、知っているから。
わたしを、知っているから。
「は……はぁっはぁっはぁっ……」
入ったところで、動きが止まる。
入ったまま、動きが止まる。
「平気……わたしは……」
聞かれもしないくせに、答えている。
聞いて欲しかった訳じゃなくて、その目が苦しそうだったのに気付いたから。
「そう言うと思った……」
そんな彼の声が耳に入った気がした。
…強がり、言ってる……。
ちょっと苦笑する。
こんな時だけど。
「大丈夫」と聞かないあなた。
「痛い」と言わないわたし。
意地っ張りな、お互いらしく。
腕を回して、しがみつく。
それが合図のようにちょっとだけ、動き始める。
傷口を押し広げられるような錯覚。
ではなくて、事実……。
身体を触ってくる。
高ぶらせようと、
紛らわせようと、
労りの、愛撫。
「んっ……くっ……くぅ…ん……」
キスを求め、
唇が重なり、
混ざり合った唾液が、
互いの口の中で溶ける。
「あっ……んっ……いっ……」
離れていった唇は糸を引き、
「んっ、んっ、あっ……いっ、いっ……んむぅ……っ」
溢れた唾液が、口の端から流れ落ちる。
「あうっ、あっ、あっ、あっ……あぁぁっ……」
身体が、跳ね上がり
汗が飛沫になって、散る。
「ひぁ……あふ……んっ……」
更に激しくなる呼吸。
一気に高まる心拍数。
空気を求めているのか、
空気を吐き出したいのか、
ただ、それしか対処する事が出来ないかのように繰り返される。
「あや……綾香……」
「うん……うくっ……あ……わたし……」
見つめ合う。
扇情的に。
欲情に潤んだわたしの目が、
もう何も飾れなくなっている無垢の瞳とぶつかり合う。
「あっ、あっ、あっ、ああっ……」
破られ、突き上げられ、未だに響く消えない痛み。
かき回され、引っかき回される不快感。
「はんっ………い……いひっ……はぁうっ……はぁっ……」
こみ上げる奇妙な感覚。
嬉しさ。
切なさ。
「んはッ……ヒッ……」
首越しに回していた腕を強くして、抱きしめる。
思い。
わたしの、思い。
「ひぅっ……うあああっああっっ………」
ただ……ただ……愚直に。
届く。
わたしに、届く。
「んっ……ア、アハ……アァ……アンッ……ひぃ……」
声にならない声。
言葉じゃない、声。
あなたの、思い。
こたえてくれる、思い。
「くぅ……はっはっはっ……んんっ……」
強まる。
身体が、震える。
抑制が、利かない。
「いっいいっいっうっ……あ、あぁあああぁぁぁ……くふぅぅ……ん」
ただただ、漏らす。
声を。
叫びを。
あなたへ、漏らす。
「あっあっあっあっあぁぁっ……」
求める。
全てを。
渇望しているから。
受け止めているこの時から。
欲しがり続ける。
名前を、呼んだ。
「……っ!!」
あなたを感じて、わたしを感じる。
「あんっ……あんっ……はぁぁ………あんっ……はぁあっ……」
呼吸と、声と区別が付かなくなる。
どちらでもあり、どちらでもない。
「んんんっ……あふぅ……はぁっはぁっ……ああんっ!」
白かった肌が、紅潮している。
多分、全身が。
血液が、身体の熱さを証明する。
身体の異変を、物語る。
「………ひぃっ、あぅ……あぁぅっ……」
何を伝えたくて、口を開く。
言葉が紡ぎ出されない。
組み立てられない。
漏れるのは意味不明な叫びだけ。
「……す……好き……」
それだけ、やっと言えた。
たった、それだけ……。
「………」
頷くのがわかった。
もしかしたら、何か言ったのかも知れない。
聞こえない。
何も、聞こえない。
「うんっ……うぅっ……うっ……うふぅ……」
抱きしめた手に力が更に加わる。
離さない。
離されたくない。
「あ……あはぁ………はぁ……」
抱きしめられる。
離れない。
離れて欲しくない。
「あっ、あっ、あああっ……あん、ああぁあっ……あぁっ……」
重なり合って拉げていた胸が、更に密着して潰れる。
貼り付いて引っかかった髪が、引っ張られ、数本抜ける。
「……んぅっ……んっ…んんぅっ……はぁっ……あっ……」
ひとつに重なり合ったような気がした。
考えられない。
見えない。
「うっうんんっ……あっ……あはぁぁぁっ……」
近い。
いつの間にか流れ続けていた涙が、熱い。
何か、聞いた。
そんな気が、した。
「ぁんあんあんっ…………はぁっ、はぁっ……」
息が荒い。
空気は、入らない。
数え切れなくなった涙に、大粒のものがひとつ、追加される。
膨らんで、滑っていく。
流れてきた、路を伝って。
激しい、揺れの前に。
「はっ……はっ……はっ……」
見る。
見つめる。
目を開く。
力を、込める。
見える。
感じる。
…見ていてくれている……。
「ふぅふうふっ……んくぅ……」
喜びで、いっぱいになる。
いっぱいに。
いっぱいに……。
「はぁぁぁぁっ……イッ……んくぅぅっっ!!……」
い っ ぱ い に ・ ・ ・
「…………ッ!………………!!……」
走る。
はしる。
ハシル。
「………………っ!!………………っ!!」
わたしは、絶叫した……。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………っ!!!!!!!」
――多分、一生のうち、一番の……
・
・
・
「どした?」
「ズキズキヒリヒリしてるのよ」
「それは、ご愁傷様……」
「アンタのせいでしょ?」
「それは、お互い様。こっちの背中、傷だらけだし……力任せに締め付けるから骨もギシギシいって……」
「喉も痛いし……少しは労りなさいよ……」
「聞いてないね、人の話……」
「………」
「………する?」
「馬鹿っ!!」
「ははは……何か、飲む?」
「うん……」
…変わるのか、変わらないのか。
ベッドの上で寝ころんだまま、そんな事を考えていた。
ただ、不安はなくなってたけど。
そしてひとつ、気付いたことがある。
…いつの間にか、二人一緒だったみたい。
笑みが、零れていた……。
自然に。
わたしらしく。
きっとあなたも笑っていることを確信しながら……。
<完>