Promised kiss
 彼女は戦うと決めた。  ただ、それだけの為に彼女は王になった。  彼女は戦い抜くと誓った。  その決意は歪みかけ、揺らいだこともあったが、彼女は最後まで貫き通した。  そして王という役割を終えた後、初めて彼女は剣を手放した。 「シロウ、お―――」 「はい」  最後まで言わせずに、彼女の空になったご飯茶碗を受け取って立ち上がる。  大食漢とまではいかなくても健啖家と言うには十分過ぎる彼女の食欲は、立場の変 わった今も変わる事はない。  藤ねえや桜も食べる方だから、三度の食事はいつも人数分を遥かに超える量を作る ことになる。  俺、藤ねえ、桜、イリヤ、そして彼女。  桜の時、イリヤの時と同じようにいつの間にか当たり前のように食事を共にするこ とでまた一人、家族が増えたのだと改めて実感できた。  側にいるのが当たり前だと思えた時、初めて家族になるのだと思う。  俺には家族がいる。  肉親を失い、義理の親を失っても尚、俺には家族がいる。  とても、嬉しいことだった。  賑やかな食事が終わり、洗い物を済ませてそれぞれ居間で寛ぐ。  つけっ放しのTVを眺めたり、学校での出来事を話したり、特に何も考えないで呆 けたりとそれぞれが好き勝手に気侭に食後の時間を過ごす。  いつもの居場所に座ってお茶を用意する桜、TVが一番良く見える位置に陣取って 動かない藤ねえ、ゴロゴロと行儀悪く寝転がっては脚を投げ出すイリヤを視界に入れ ながら壁に背を預ける。  その傍らに彼女はいる。  手を伸ばして触れることに躊躇わず、寄りかかれる事に安らぎを感じられる。  だからこそ安心して身を委ねる。  肩をくっつけるようにして寄り添う俺たちに、初めの頃は冷やかしていた彼女達も もう何も言わない。  内心どう思っているのかはそれぞれに聞いてみないとわからないが、そうするのが 珍しくない光景になったということだろう。  彼女は俺を見ることなく、俺も彼女を意識することなく、共にそこにいた。  重ねた手は互いの温もりが温かく、柔らかい手は強く繋がりを感じさせる。  この時間は道場に行って二人で竹刀を交わすことも多いが、こうしてのんびりと過 ごすだけの時もある。  初めは訓練の方が充実していたけれども、最近ではのんびりする方が充実してくる ように感じるから不思議だった。  自分でもどういう心境の変化なのかわからない。  以前電話で遠坂に何かの話題の拍子にその事を話したことがあったが、返事は悔し いから教えないとのことだった。なんだよそれと膨れっ面でその時は抗議したが、遠 坂だけでなく、皆もわかっていることのようだ。気づいていないのは俺一人なのかも 知れない。もしくは自分で気づいていないふりなのか、気づかなくても全く問題がな いからなのか。何にせよ、気にはなっていない。  その内に夜も遅くなると、桜に藤ねえとイリヤがそれぞれ家に帰っていく。  彼女達は帰る家がある。  藤ねえと、彼女の家の居候になったイリヤは共に自分の家があり、桜は兄の慎二を 失いながらも間桐の家で寝起きすることを止めようとはしていない。  たまに機会があればそれぞれ泊まっていくこともあるが、基本的には毎日それぞれ 帰っていく。  彼女達を見送るのは、俺と彼女の日課になっていた。  その後の俺は一人土蔵に籠もって日々の修練である魔術の鍛錬をし、それが終わる と彼女が沸かしてくれているお風呂に入って汗を流すと、短い一日が終わる。  短い一日ならば、だが。  長い一日は、それから少しの時間を取る。 「アルトリア……」 「シロウ……」  表情を引き締め、姿勢を正すことが当たり前だったセイバー。誰の目にも晒されて いない時であっても、彼女は己というものを崩さずひとときとして私を作らなかった。  だからこそ微笑んだ時、怒った時、困惑した時、その一つ一つの無意識からの表情 と仕草が、とても俺をドキマギさせた。  彼女の方もそんな彼女の表情を望んだ俺の言動に対して不意を突かれ、動揺したか らこそいっぱいの表情を見せてくれた。  それは初々しさからの反応であったのかも知れない。  けれど今、アルトリアとして俺に心を許してくれている彼女は、前と変わらない表 情を俺に向けているが、動揺はしていない。  その代わりにそれがとても嬉しくて、頬が緩んでいるのが自分でも判るぐらいに俺 は浮かれていた。  そんな俺を彼女は拗ねたり怒ったりもしながら、最後には照れながら笑って受け入 れてくれるのだ。  とても、可愛いと思う。 「シロウ……」  落ち着いた声。  浮つくことなく、自然と口から紡ぎだされる彼女の言葉が俺の名前ということが、 とても嬉しい。馬鹿みたいに嬉しい。  優しい顔をし、安らいだ姿を見せてくれるだけでも嬉しいのに、その方向が俺に向 いているという嬉しさの積み重ねが、とてもたまらない。  胸がはちきれそうになり、息苦しい。  この時だけは、俺は彼女の為だけに存在していたいと思える。  どんな事態が待ち受けようとも、この先何があろうとも、彼女とだけ、この娘と二 人でだけ、迎えたい。  そんな我侭な想いが溢れてくる。  同時に、それは彼女も同じに違いないという自惚れも抱えている。  きっとこの先ずっと、どんなことがあっても、今この時の思いは消え失せない。  普段は殊更意識しないだけで、ずっと一緒にいるのだということは信じきっている に違いないのだ。  それが我侭でも自惚れでも構わない。  この嬉しさをそんな信頼で支えていることに、俺は悦びを抱えている。  だからさ、アルトリア。  俺はきっと君の為なら、君と二人でなら―――。  その思いは語らずとも通じる。  俺の視線を受けたアルトリアは小さく頷き返した。  だからこそ今は、そんな思いを形に変える。 「今日も――――」  そう、今日も。 「私の体を……貴方の、好きにしてくだ……さい」  不思議なことに、アルトリアは体を重ねるごとに臆病になっていく。  今の台詞も前はもっと堂々と言えた筈だ。  変わっていく自分を恐れているのか、こんな今を共有し続けることを喜んでいるの か俺には皆目見当も付かない。  顔を赤くしながらも、笑みを絶やさない彼女の頬に手を添えた。  赤く染まったそこはとても熱い。  体を寄せながら、顔を近づける。  そして、指を滑らせて顎に触れると、俺が力を入れる前に彼女の方からほんの少し 顎が上がった。  ぶつかる視線。  逸らす必要のないその瞳は、互いの合図に繋がった。  そのままゆっくりと静かに、俺の唇は彼女の唇に触れた。  微かに彼女の唇は震えている。  その唇に、触れるか触れないかの刺激を繰り返す。 「ん、んふぅ……」  彼女の小さく開かれた口から、緊張して乱れている呼吸が漏れている。  それが俺も同じで、互いに噛み合わない息が場を支配していた。  ただ、こっちは緊張に加えて興奮も混ざっていたのではあるが。 「あむぅ……っ……」  唇を舌でつつく。  それに応えて彼女も口を開き、僕の舌に自分の舌をおずおずと絡めてくる。  躊躇いがちに伸ばされた舌と、動かす術を知らない舌とが、ぎこちなくぶつかり合 い音を立てる。  舌先で味わう刺激を重ねつつ、徐々に動きを激しくしていった。  舌同士がぶつかり合い、戦うように絡み合う。  混ざり合う唾液は啜りきれず、だらしなく垂れ落ちていく。  頓着することなく、お互いの口を貪るようにして吸い付く。 「ん……くっ……」  腕を背中に回すように、体を寄せる。  触れる箇所が多ければ多いほど安心が増し、期待が膨らむ。  心も体も満ちているようで、更なる貪欲を求めている。 「シロウ……もう、こんなに……」  先に手で触れてきたのはアルトリアの方からだった。  衣服の下から強く自己主張を始めていた俺の隆起したそれを軽く掌で擦ってくる。 「あ、うん……すごく、興奮してる。アルトリアだからかな」  素直な言葉が自然と口にしていた。 「そんな、こと―――うぁ、ん、んんんっ」  折角素直に答えたのに、それを否定しようとしたので彼女の言葉を自分の口で押し 付けることで遮った。強く舌を吸い上げる。 「ん、ぐ、んっ……んっ……」  強く吸う度にびくんびくんと反応している彼女の小さな体。  その感度の良さを楽しんで、何度も繰り返した。 「な―――あ、あ……」  行為を続けたまま下着の上からその慎しやかな膨らみに手を伸ばす。  温かくて、柔らかい。  掌を通して、心音が伝わってくる。 「は……はっ……」  口が離れる。  漏れるのは小さな吐息。  が、それは他の攻めに集中したいだけで、解放するためではない。 「どれ……」  弛緩した彼女の隙を逃すことなく手は彼女の寝巻きとその下の下着を一緒に捲る。  そして暗い部屋の中で晒されたその白い肌の表面を指で滑らせながら、そのまま双 丘の頂点を摘む。最初は軽く、すぐに強く。 「ん、あ、んぁぁぁぁっ!」  びくんと彼女の体が撥ねた。  その大きな動作に、思わず手を引いてしまう。  ちょっとこの辺はまだ慣れていない。 「シ、シロウ……」  はぁはぁという吐息。  小さな声を上げながら体を捩る。 「シロウ……シロウ……」  何か訴えかけたいことがあるらしく、弄ろうとする俺の手首を彼女は掴んだ。  その小さくてか細い手からの力は弱い。  力だけで言えば、今の俺なら振り払おうと思えば簡単にできる。  けれど、抗わない。 「なに?」  じっと彼女の潤んだ瞳を見つめ返して、静かに訊ねた。 「思うのです……」  なにが?  そう聞き返したい気持ちを抑えて、目で促す。 「これは現実のことなのでしょうか」  確かに夢のようだ。  けれど、これは俺が望んだこと。  得る機会があって、その機会を生かして得た事態だった。  今更、そんな曖昧な言葉から臆病になる気はない。  幸せにしたい。  幸せになりたい。  一緒に。  二人一緒に。 「……私はこんなにも、愛されていいのでしょうか」 「いいに決まってる」  そう言うが、彼女の耳には届いていないのか、途切れ途切れになりながらも言葉を 繋ぐ。 「例えば……大河。彼女は性格にそのかなり難はありますが、その誠実さはかなりの ものです。人見知りし、物怖じする性格の桜はその信頼の全てをシロウに向けている。 凛も初めの頃はわかりませんが、先の戦争で彼女が貴方に向ける眼差しには親愛を越 えている。シロウには私でなくても……」  む。  その言い方が気に食わない。 「じゃあさ」  むかついたから本格的に、攻撃開始だ、 「セイバーは……」  わざと前の名で呼んだ。 「ぁっ」  右手を彼女の股間に宛がうと、下着の上から性器に指をこすりつける。 「俺が誰に対してこんなことをしてもいいと言う訳だ」 「や、ぁ、そ、そんな……」  すでにそこはどろどろに濡れていて、生地が透けている。  触れた先からべっとりと蜜が垂れ落ちる。 「もう濡れてるし……ひょっとして興奮してた」 「っ」  唇を強く結んで首を横に振る。  まあまだ序の口だ。 「セイバーは誰に対してもおま○こを弄られたら……濡らすわけだ」  言ってて恥ずかしい。恐らく生涯初めてその単語を口にした。  けれど、彼女はそんな俺の羞恥にも気づかず、動揺しっぱなしだった。  その狼狽振りをみて、自然と落ち着く。  卑怯な気もしたが、今はそこまで気を回すゆとりなどない。 「……っ。いや、そんなこと、は……」 「んー?」  わざとらしく、意地悪く首をかしげる。  勿論、手は休めない。 「あ、あはぁっ」  それどころか徐々に手を早くする。  触れることで、お互いの存在を強く、必死になって確信し合うかのように。 「誰でもいーんだー」 「ち、違いますっ。そんな、そんなことは……」 「だって、俺の相手は誰でもいいんだろ」 「それとこれとは……」 「じゃあさあ」  不意を突いてアルトリアの唇を奪う。  もう彼女との口づけは三桁を越えると思う。  それぐらい、夢中になれる行為だ。 「んー、んーっ、んんっ」  そのまま舌を伸ばし、彼女の口をこじ開けるとその口の中を舌で這いずり回る。  さっきは吸うことに特化したから、今度は蹂躙することに集中する。 「んぁっ」  互いの舌が絡まった処で、舌を離す。  糸を引いたところが未練を感じさせる。 「俺はこういうことを遠坂としても気にならないんだ」 「え……」 「頭の中に思い浮かべてみろよ」 「っ」 「俺が、遠坂とこんなことをするわけだ……」  そう言って、もう一度唇を押し付ける。  今度は彼女の方から先に口を開いた。  突き出された舌を迎え撃つように、俺も舌を伸ばして絡めあう。  舌先に刺激が留まることなく、頭の奥にまで流れ込んでくる。 「ん、んぁ、んんっ……」 「ぷはぁっ」 「あっ」  普段の時よりもずっと短めに口を離す。  今度は未練の糸を引く暇もない。 「これを、俺と遠坂が……」 「シ、シロウが……凛……と」 「そう」 「………」  指の腹でアルトリアの唇を擦り、そして自分の唇を擦る。  さっきまでアルトリアの蜜でふやけさせていたその指を、軽く口に咥えた。  そして彼女の手を取ると、良く見えるように、舌を使ってその人差し指をしゃぶる というよりも舌先で突付くように舐める。 「……」  唾を飲み込むのが判る。 「―――どう?」 「あっ」  まだ動揺が抜けきらないうちに、今度はアルトリアを強く抱きしめた。  そして、両手でその乳房を揉みしだく。  柔らかいなかにも芯のようなしこりを奥に微かに感じるが、それは口に出さない。  代わりに首を伸ばして片方に乳首に吸い付いた。 「あっ」  はぐと咥え込んで、唇に力をいれる。 「駄目、です……シロウっ」  何が駄目というわけでもないだろうに、語彙の乏しくなったアルトリアはプルプル と震えながら俺の愛撫を受け入れる。 「こういうことを桜としてもセイバーは気にならないんだ」 「え?」  片手でその控えめな膨らみを持ち上げるように揉みながら、もう片方の乳首を乳で も吸い上げるように吸う。  白い生地に、その薄桃色の蕾は未成熟の果実を連想させる。 「あの服の上からもわかるボリュームのある乳房を、俺が……」  残念ながら目の前の膨らみではそれを再現できない。  だからこそ殊更言葉でイメージさせる。  ピンと張り詰めながら硬くなった乳首は、見ていて痛そうなぐらいに尖っている。  少ない脂肪を掻き集めつつ、両手の中で作ったその乳房の先端を代わる代わる舌先 で舐める。 「ん、あ、ひゃっ」 「こんなことを桜に、俺がしても……」  顔を押し付けて、嘗め回す。 「あっ、やっ、あぁ……あ、あ、あああっ」 「セイバーはいいんだ?」  手と口を離し、アルトリアをその刺激から解放する。  最後の愛撫が止めとなって、彼女の胸元は唾液でべとべとになっていた。 「はぁ、はぁ……あ、はぁ……」 「セイバーは俺が誰とこうしても」  休ませない。  背中に手を回して抱き寄せると、今度は首筋に舌を這わせる。 「あ、やぁっ」  短い悲鳴を上げる彼女の体を強く抱きしめる。  舌先で所々突付いたり、鎖骨のある窪みに唾液を落とし込んだりしながら、一つ一 つの反応を確かめるように敏感な箇所を探して攻め立てる。 「誰にしても……」 「そんな、違……私はそ……ん……んぁっ」  感じる箇所があるのか、時折ビクンと強く反応をするアルトリア。  けれど強く抱きしめたままだから反応するだけで、何も出来ない。 「ふぁ……んぁ―――あ、あん」 「セイバーは……どう?」  いきなり、手を離した。  支えを失った彼女の体は、あっさりと再び仰向けになって倒れこんだ。  まるで力が入っていない。  入っていたとしてもバランスを取れないようだった。  そしてそのことに気も向かないほどになっていた。 「わ、わた……私……わぁっ」  体をずらすと、今度は彼女の両足を広げて、その間に蹲る。 「あ―――」  彼女が事態に気づく前に、行動に移した。 「――――すごいことになってる」 「っ! や、あ、や……」  目の前に広がった彼女の性器に軽く息を吹きかけると、むしゃぶりついた。 「……ひっ、ひぁぁぁぁっ」  強く攻める。  鼻先に彼女の薄い恥毛を擦りつけながら、唇でその性器を包み込み、舌でその入り 口かき回す。 「あ、ぁぁぁぁ――っ! や、ぁぁぁぁぁ――っ!」  騒ぐことしかできない。  あのアルトリアが。  必死になって攻撃を続ける。 「んぁぁぁ、ぐ、ん、んんんん、ぁ、んぁぁぁぁっ」  堪えようとして、堪えきれない。  そんな泣き声が聞こえてくるようだった。  夢中になって延々と舐め、啜り続けた。  途中からは彼女の声も耳に入らないぐらいになって、その行為だけに没頭していた。 「ふぁ、あ、あ、んぁぁぁぁぁぁぁ」  目の前にある秘肉をひくひくと蠢かせながら、彼女の収縮させた穴からは留まるこ となく蜜があふれ出る。 「ひぁぁぁんっ……くぁ……ぁぁぁっ」  痙攣しかと思うと、熱いものが口いっぱいに広がった。  噴出すように愛駅が口の中に飛び散った。 「セ、セイバー」  唾液と彼女の愛液でべとべとになった口を離して、 「んぅぅ……はぁ、はぁ、はぁ……」  息も絶え絶えになった彼女に尋ねる。 「セイバーは誰でもいいのかい?」 「ちが、違いますっ」  即座に否定した。 「私はシロウにっ」 「俺に?」 「シ、シロウだから……っ」  もう一度、意地悪く首を傾げる。 「ふうん」 「ほ、本当ですっ」  俺が本気で疑っているとは思っていないだろうに、必死だった。  さっきの言葉責めが功を奏したのだろうか。 「俺も、そう」  耳元で囁くように呟いて、それを証明するように彼女の体を強く抱きしめた。 「シロウ……私は……」  抱きしめられたままのアルトリアは、何かに酔ったかのようにうっとりした表情で こちらを見上げてきた。 「……っ!」  そんな表情に見とれて、息を呑む。自然、吐息が漏れていた。  息を落ち着かせることはもう無理だった。  荒くなる一方の呼吸のまま、こちらも収まることを知らない衝動のまま訊ねた。 「いい……よね」 「は、はい……」  既に彼女の体は疼いているのか落ち着きなく蠢き、それを示すようにその秘処から は愛液を垂れ流し続けている。  俺の裸の胸の上を這うようにして跨ると、両手をついて腰を浮かせた。 「わ、私が―――あ、ん……」  彼女の既に発汗した全身から滴り落ちる汗が俺の体に落ちる。 「わた、私が……」  懸命になって、持ち上げた腰を合わせようと擦りつける。  手伝おうとしたら手と目で制された。  力強いものではなかったが、その必死さは俺を押し留めるのには十分だった。  沸き上がる欲情を堪えつつ、彼女を待つ。  幾度か入り口は俺の先端を逸れたものの、最後には片手で根元近くを掴み、自分で 導くようにして結合した。 「っ!」  じわりと侵入していく感覚は一瞬で、すぐに彼女の体の内側へと押し開き、加え込 んでいった。  そして最後には深々と、彼女の中に突き刺さる。 「は、入りました……ん、んぅっっ、んっつ」  焦点の定まらない眼を向けたかと思うと、そのまま俺の胸に両手をついて、体を幾 度となく揺すっていく。  がくがくと膝を振るわせつつ、腰を上下に振って快楽を受け止める。  その動きは、歓喜の少しでも逃さないような懸命さが見え隠れしていた。 「あ、あ、あ、ああ、ああああ、あああああ」  秘裂はじゅぶじゅぶと音を立てながら、俺のものに必死になって絡みつく。 「シロウ……シロウ……」  気持ちいいですか、必死に意思を維持しようとする目がそう問うていた。  けれどもその潤んだ目はドロドロに熔け、赤く上気した頬は湯気を立てている。  それは溶けて蕩けて、なくなっていく。 「ああ。すごく……いい」  答えは笑顔になって返ってくる。  同時に動きとなって続いていく。 「ゃ……だ、駄目……で―――そんなっ、あ、んぁぁっ」  捲れあがったクリトリスに手を伸ばし、舌先で軽く押してみる。 「ひ、ひぁぁ―――っ」  強くて首を捕まれた、  刺激が強過ぎるらしい。  ならばと、今度はその薄い乳房に下から手を伸ばして、掴む。  掌に収まるそれは柔らかく、ピンと立った乳首は指先で弄るには丁度良かった。 「んっ……で――ぁ、んぁぁ――っ」  がくんがくんと腰が跳ね上がり、奥へ奥へと突き上げていく。 「い、い……んんんっ」  アルトリアは俺が何もしなくても、その腰を動かし続ける。  肉茎が抜ける寸前まで腰を大きく上げ、次には深々と腹の奥にまで打ち付ける。  ぐちゅぐちゅと音を立てながら蹂躙され、呑み込まれ続ける。 「くぅ、んっ……い、いぁぁ……んぁ、ぁっ」  背が反り、小さな肩が震え、激しく喘ぐ。  摩擦で焼ききれそうなほど強く締め付けられ、熱くなる。  なのに彼女は更にもっと深い繋がりを求めて、体を曲げて俺の肩に縋りつく。 「う、うぅんっ……あ、んんっ、んんんっ」  遂にたまりかねて、彼女の腰を掴んだ。 「んっ……シ、シロウ……っ」  その動きに一瞬、抽送が止まる。  答えの代わりに、腰を両手で掴んだまま、下からさっきよりも一層強く自分から動 いて突きたてる。 「ぁぁぁぁっ! ぁ、あっ、ぁ……あ、ああ、ひぁ……ああぁっ」  その動きに彼女は翻弄され、突かれる度に体を揺すられる。  自分でも中で暴れているのが分かる。  先に当たるものを感じながら、動かすことを続けた。 「シロウっ……シロウ、シロウっ……」  幾度となく請うように名前を呼び続ける。  声と共に、汗が飛沫となって飛び散る。  口の端からは唾液が、目の隅からは涙が零れている。 「ひぁっ、ぁ、やぁぁぁっ、ああっ」  飾る余裕も無い、むき出しがそこにあった。 「シロ……ぁ……シロ、ぅ、あ……っ」  それしか頭にないように、それしか言葉を持たないように彼女は声にならない声で 呼び続ける。  弛緩し振り回される躰に全てを委ねつつ、僅かに残った力は強く握られた拳の中に 納まっていた。  快感に荒れ狂う彼女の秘洞は収縮し、反応した身体は小刻みに震える。  溢れ出る愛液は俺の体を濡らし、シーツを浸した。 「……はぁっ……シ、シロウ……シロウ、シロウ、シロウっ!」  錯覚。  彼女の体を貪っているのか、彼女に貪られているのかがわからなくなってくる。 「……ぁっ、ああっ、あ、あ、あ、あああっ」  奥底まで穿つその振動は、強い締め付けとなって俺自身を目一杯絞り上げた。 「くぅぅぅぅぅっ」  耐え切れず、堪えきれぬ衝動。  その圧倒的な熱さの中、彼女の胎内へと射精していた。 「く……は、はぁぁっ!」 「あああっ、ああ、ああ、ああああっ……ああああああああああっ!!」  少しでも奥へと腰が自然と突き上がるように動くのは、欲なのか本能か。  跳ねるそれを強く押し付けるようにして、弾ける精液を子宮へと、彼女の奥底へと 注ぎ込んでいた。 「あ……あ……あ、あ……」  愛液で濡れそぼった彼女の中での射精。  彼女自身に包まれるようにして解放されるそれは、快楽と共に俺を安心した気分に させた。 「あぐっ……あ、ああ……あぁ……」  自分の口からこんなにも弱々しい声が出ることに驚く。  けれどこの瞬間、荒い息が収まることがないように、心臓の鼓動がどうにもならな いように、悲鳴じみた恍惚の声を止めようがなかった。 「セ、セイバー……」  やっとのことで彼女の名前を呼んで、顔を上げた。  改めて体の上の彼女に、目の焦点を合わせる。  目に入ったその表情、虚ろのままの瞳に油断しきった唇。  その唇目掛けて、顔を伸ばした。  そこには何もない。  剣を取ることも、誓いを立てることもない。  ただお互いが好きなだけ。  そこには意味はない。  意思を持つことも、自らを振り返ることもない。  ただこうしていたいだけ。  そう思える気持ちを胸に、俺は彼女に触れ続ける。  彼女との幸せとやらがあるのなら、きっと他には何一つ見当たらないここにしかな いものだろうから。 「……んっ……」  だから俺たちはまだ抱き合ったまま、こうして繋がったまま唇を重ねる。  いつだって、何度でも。                            <完>

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