鏡の中の優等生たち
 性行為というのは当人同士は夢中になっているので気付かないが、傍から見たら相 当間抜けな状態ではないだろうか。  鏡に映る自分達を目の隅で見る度にそう思う。  さっきまで蒲団の上に座った俺と向かい合うように先輩と繋がっている姿勢。  座位とか言うのだろうか。  格好は良く知っているが、名称は知らない。 「ん、んぁ‥‥ふぁっ‥‥んぁっ!」  先輩の脚がオレの腰に巻きつくように絡み、同時に両手を背中に回してしがみ付い ている。  腕からも脚からも強く締め付けられていた。  より強く、より激しく、一つになる為に。 「‥‥んぁっ!」  顔をあわせるようにして唇を貪りあう。 「ん‥‥んん‥‥」  オレの腕が自然と瑠璃子先輩の身体をギュッと強く抱きしめていた。  腕の中の彼女が、強く震えた。 「んぁぁぁぁっ‥‥」  必死な彼女。  必死なオレ。  互いを欲するこの行為を浅ましく恥ずかしいと思う反面、求めて止まず、そして決 して尽きることのない本能として心の奥底にまで楔として打ち込まれていた。  セックスが生活の一部になっている。  毎日しないと我慢できないわけではないが、ずっとしないでいると気分が悪くなる。  非常に苛立ち、終始落ち着かない。  それまで性欲の処理には殊更気にかける必要も無かったのに、今ではセックスをし ないでいると精液が溜まりに溜まってしまっているような気分になる。  実際、久方ぶりのセックスの時はいつも以上に量も粘度も臭いも色も違っている。  何だか性経験を境にして、自分の中で大きく変わっていってしまったかのように思 える。  大袈裟に言えば、精を放つことが生きる目的の一つにまでになってしまっていた。  彼女が愛しい。  その感情と同じぐらいに彼女の身体が欲しい。  彼女の膣の中にオレのモノを入れたい。  あの温かな締め付けを味わいたい。そして擦りたい。自分の性器の全てで彼女の性 器の感触を味わいつくしたい。 ――彼女の膣を抉り、肉を擦りつけて貪りたい。  これはオレだけのものだろうか。  それとも男なら誰でもそう思うようになるのだろうか。  牡が牝に感じるものなのだろうか。  一つも判らない。人に聞くことも恥ずかしくてできない。  瑠璃子先輩の性器に自分の性器を突っ込みたいという強い欲求が、彼女を見ている とどうしようもなく感じてしまう。  流石に四六時中というわけではないのだけれども。  それでもちょっとしたことで、いつでも沸いてくる。  彼女の全てを奪い尽くしたいと。 「先輩っ、先輩っ」 「ぅあぁ! あ、あ‥‥っぅあぁっ! んぁ、んん‥‥んぁぁぁっ!」  お前はオレのモノなんだという独占欲が、瑠璃子先輩の身体を腕で包むようにして 押さえ込ませる。  御薗瑠璃子が愛しい。  オレは彼女の全てを好み、全てを愛し、全てに惚れ込んでいる。  だがそれ以上に、今は彼女の身体への肉欲が勝っていた。  彼女の魅力の全てが、今は彼女の身体で得られる快楽の為のものになっていた。  その綺麗な髪も、美しい声も、つり上がった眼差しも、凛とした顔立ちも、普段の 大人びた物腰も、細くて長い手足も、豊満な胸も、引き締まった腰も、御薗瑠璃子を 形作る全てが、彼女の膣奥を抉り続けるオレの分身に与える快感を増幅させる従属物 へと変化していた。  だからこそ彼女のその魅力の全てを飲み込んだ秘肉を貪るオレこそが、彼女の全て を支配しているというような錯覚に陥るのだ。 「‥‥んんぁぁっ! ぁぁっ、ぁぁぁっ!」  これが彼女への冒涜なのか、セックスの真実なのか、何もわからない。  ただ、オレはこれ以上の心地良さを知らなかった。  もっと味わいたかった。  何度でも何度でも、この悦楽を感じていたかった。 「ぃぃ‥‥ぃあ、ぃあぁぁぁ‥‥あぁぁっ!」  このセックスの時だけは、オレは彼女の全てを奪い尽くしたいと思う。  対等にとか、紳士にとか、人間らしくとか――そんな全てを擲ってただ彼女の局部 を弄り、自分の欲望の全てが詰まった生殖器を突き入れる。  ここが一番気持ちがいい。  これが一番気持ちがいい。  何よりも。  どれよりも。 「だ、ぁ‥‥ゃぁぁぁっ! やぇっ‥‥めっ! ぁめぇっ!」  セックスに夢中になる。  獣だろうがなんだろうが知ったことではない。 「んん、んん、んんんっ‥‥っ! あぁぁぁぁぁっ、ああぁっ! ぁぁぁぁぁっ!」  オレが腰を引くたびに彼女の襞が捲れ、粘膜で必死にしがみつく。  そして腰を落とすたびに呑み込み、最奥まで咥えこんでいく。 「んぁ、んぁ、んぁ‥‥ぁぁぁっ、ぁぁっ、ぁぁぁぁあ! ぁあ! ぁあ!」  彼女を見る。  先輩はオレと同じ顔をしていた。  自分の身体の中から伝わってくる快楽、自分の心の中から湧き上がってくる快楽、 その二つのものに自分自身を飲み込まれ――よがり狂っていた。  こんな行為を交合と呼ぶとは思えなかったが、そうとしか呼べなかった。 「んぁ! やぁ‥あぁぁっ! んぁ、やっ! ‥‥やぁっ!‥‥ぁめぇ!」  オレは生殖行為にこうした途方もない悦楽を伴わせたとことを、感謝し、同時に呪 った。 ――泣きたいほどに、嬉しく、悔しい。 「んんっ、んぁっ! んぁぅ、んぁぅ‥‥あぅ、あぅ、あぅっ‥‥!」  激しく腰を突き出すと、先輩の背筋が一層仰け反ってくる。 「んんんぁ、んぁ‥っ、んぁぁぁ‥‥っ!」  感触が莫迦になってしまっていて、いつしか肉を抉っているのではなく、熱い粘液 質のものに捻じ込んでいるような気分になっていた。 「んあ、んあ、んあぁぁぁ‥‥っ!」  それでも必死になってオレは腰を打ち付け続ける。  終わりが近い。  先輩も達しかけているのか、オレの早くなった動きに合わせて腰をうねらせもがく 様にして身体を痙攣させる。 「うくっ、んぁ! んんんんっ! ぁ‥‥」 「んん、んぅっ‥‥‥ぅぁんっ! んぁっ‥‥っっ! ぁ‥‥っっ!」  真っ白になる。  オレの全てはこの瞬間の為にある、これを味わう為に存在しているような圧倒的な 開放感。 「ぁぅ、あぅぅ、ぁ‥‥」 「‥‥っ、ぁ‥‥ぁ‥‥」  暫く悲鳴とも歓声ともつかない声が互いの口から漏れるが、次第に荒い息によって かき消されることになる。  彼女の膣内に射精する。  これに勝る快感はないと思う。 「ぁ‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」 「ふぅ‥‥‥ふぅ‥‥‥ふぅ‥‥‥」  弛緩した身体を投げ出すようにして横たわっていたが、次第に落ち着いてきた。  それは瑠璃子先輩も同じだったらしく、身体を起こしてティッシュペーパーの箱を 手探りで探っているのが視界に入ってきた。  そのままシャワーを浴びるのかと思ったが、その前に蒲団に付着した分泌液を簡単 にでも拭い取ろうとしているようだった。表面を擦る程度のことしかできないし、そ もそもまだ絶頂の余韻の残る身体では力が入りきらないらしく、あまり効果があると も思えない。それでもなるたけ何とかしようとしているのは先輩らしい気がした。  そう考えると、また股間のモノが固くなってくるのがわかった。  今や、彼女に対する感情の全てが性欲に転化してしまうのは変態だからだろうか。  彼女を犯したい。  それしかないのかと自己嫌悪に陥るが、開き直ってしまえばそれまでのことだった。 「ん‥」  彼女の愛液と自分の精液、その他互いの身体から出ていて混ざった液体で濡れた自 分のモノを見詰める。  浅ましいと思いながらも、どこか誇らしい。 「瑠璃子‥‥」 「ぇ‥‥ん――っ」  驚かす目的で、四つんばいになっていた先輩の目の前に勃起した己の性器を晒しだ した。 「ちょっ‥‥」  先輩の手から、持っていたティッシュが落ちる。  突然のことで目を丸くし、そして怒ろうとする彼女を見て興奮する。  本気で怒られたらどうしようと思いながらも、止められなかった。  また少し、固くなってきた。 「あ、え‥‥」  結局、瑠璃子先輩はどうしたらいいのか判らなくなったらしく、瞬きも忘れたよう に、ただオレのモノを見詰めていた。  おずおずと頼りなげに伸びる指先が触れて、ピンと角度が跳ね上がる。 「‥‥っ!?」  驚いたように手を離す先輩の仕草が可愛い。 「‥‥」  至近距離で瑠璃子先輩に見られていることで興奮するが、それだけでどうにかなる わけではない。 「あのさ、瑠璃子先輩‥‥」  今まで手でしごいて貰ったことはあっても、口でして貰ったことはなかった。  そう話すと、瑠璃子先輩は綺麗な眉を歪めて「して欲しいの?」と聞いてきた。 「あ、ああ‥‥」  そう聞かれて、否と答えられるほどオレは嘘吐きではない。  無理強いはしないが出来ればやって欲しいというお願いをする。  それだけを言う為に咽喉がかさついたのは緊張の為か、更なる興奮の材料を得ると いう期待の為か、自分でもわからなかった。 「いいわ。その‥‥口でしても‥‥」  そう言い終わると、先輩の顔がこれ以上ないぐらいに高潮していた。 「じゃ、じゃあ‥‥」 「ええ‥‥」  改めて彼女の目の前に屹立した一物を突きつける。  自分の欲望の全てを曝け出しているそれを見られるというのは恥ずかしくて、興奮 する。  このまま腰を引いて逃げ出したい気分と、突き出して強要したい気分。  両方の自分を頭の中に想像してしまい、身悶えそうになる。  透明の液体が先端から滲み出しているのが実感できる。  何かこうしているだけで射精できてしまうのではないかと思うぐらいに、自分の中 での興奮が膨らんでいた。  葛藤していて気がつかなかったがその間中、瑠璃子先輩は瞳を見開いたまま、まじ まじとオレのモノを見詰め続けていた。  その間、彼女の荒い吐息がオレの下半身をくすぐる。 「‥‥」  声を掛けるべきかどうか迷ったが、オレが彼女に意識を向けたことで空気が変わっ たことに気付いたのだろう、ハッと目線を上げてオレに気がつくと、待たせていたこ とを謝りながら口を近づける。 「ん‥‥んっ」  そのまま目を閉じ、長い睫毛を小さく震わせながら舌を伸ばしてきた。  同時に、恐々とした頼りない手つきでオレのモノを両手で包み込む。 「瑠璃子せん‥‥んぁぅっ!?」  瑠璃子先輩の舌先が、先端に触れた瞬間全身が震えた。 「――っ!」  その動作に驚いた先輩が手を離したこともあって、オレのモノが先輩の顔を擦るよ うに跳ね上がる。 「あ!「ご、ごめ‥‥」」  動揺した互いの声が重なる。  そして暫く、気まずい気分になって互いに沈黙してしまう。 「じゃ、じゃあ‥‥」 「あ、ああ‥‥」  先に気を取り直したのは先輩の方だった。  笑う余裕もなく、再びおずおずとオレのモノを軽く掴む。  今度はゆっくりとした優しい手つきで、袋の部分を撫で始めた。  細くひんやりとした彼女の指でぎこちなく擦られる感触に、背筋が寒くなる。 「熱い‥‥」  オレのモノから発せられる熱気を直に感じ、思わず漏らした言葉のようだった。 「‥‥気持ち、いいの?」 「ま、まあ‥‥」  慣れると物足りないが、それでも気持ちが良いことには変わりはない。  自分の熱い手の平とは違う、ひんやりとした瑠璃子先輩の手の平と繊細な指使いに よってオレの分身が握ったり擦ったりしているという状況。 「そ、そう‥‥」  恥ずかしそうな顔に嬉しそうな表情を混ぜながら、手の動きを徐々に大きく大胆に 動かしてくるようになった。その分、伝わってくる快楽も増してきた。 「ん‥‥っんん‥‥‥」 「んぁっ」  そしてもう一度舌を出し、オレのモノを最初は舌先でつつくように、そして軽くち ろちろ舐め始めた。 「んぁっ、ぐんんっ‥‥」  悲鳴をあげそうになって必死に堪える。  膣とはまた違った感覚。  それ以上に、先輩の舌がオレのモノを舐めてくれているという行為自体が、どうし ようもなくオレを興奮させていた。 「‥‥ぅん‥‥ぁ‥‥はぁ‥‥」  時折、首を傾け上下に顔を動かしながら舌を這わせて、側面を舐め上げる。 「‥‥はぁ‥‥っんぁ‥‥っぁ‥‥」  奉仕という言葉が脳裏に浮かぶ。自分のモノが益々いきり立つのが判った。今度は 先輩も少し驚いただけで、行為を続けてくれた。  先端に唇を押し付けるように口づけをして、滲み出る薄白く濁った液体を舌でペロ ペロと舐め始める。 「ん‥‥」 「あ、あぁぁぁぁっ」  思わず漏れた声で、オレの味わっている快感を理解したのだろう。  先輩は優しい笑みを投げかけると、それを口に含んだ。 「くぅぅぅぅぅ‥‥」  今度は覚悟できていたので、歯を食いしばって堪えることができた。 「ん‥‥んん‥‥」  くぐもった声に、唇と分身が隙間なく擦れ合うことで唾液の音が重なる。  瑠璃子先輩は頭を動かさないまま、ぎこちなく舌を動かしてきた。  舐め這い廻る舌。  咥えつつ擦られる唇。  包まれる温かい唾液。  軽く当たる固い歯。  彼女のその一つ一つが、オレの性器を慰めてくれている。  実際に伝わってくる快感と共に、そのことを思うと身体中が熱くなる。 「先輩っ、先輩っ」  初めは愛撫というよりも、口に含んでぎこちなく舐めたりするだけだった行為が、 頭を上下に動かしたり、一度口を離して咥えるように唇で挟んだり、彼女なりに仕入 れた知識なのか色々なことを試し始めていた。  それがまた更なる快感を産んで、オレを一層蕩けさせる。 「‥‥‥‥ん、ん‥‥ん‥‥んぐっ! ごほっ、ごほっ、ごめ‥‥」 「だ、大丈夫?」 「げほっ‥‥え、ええ。御免なさい」  喉の奥まで突き入れてしまって噎せてしまっても、止めることはなかった。  それどころか、彼女の声は既に潤みを帯びていた。 「じゃあ、続けるわね‥‥」  間を置いたらオレに止められると思ったのか、目尻に溜まった涙も拭わずに再び口 を大きく開いて、極限まで勃起しているオレのモノを飲み込んだ。  咥えている行為に興奮していたのはオレだけじゃなかった。  自分の感じる快感ばかりに気がいっていて身勝手だったオレは今更そんな事実に気 付くと、嬉しくなってしまった。我ながら本当に自分勝手だと思う。 「ん、んぷっ、ん、んっ‥‥んっ‥‥」  さらさらの先輩の髪を撫でる余裕もなく、手を当てて押さえつける。  その下では彼女が必死になってオレのを咥え、しゃぶり続けてくれている。  オレがして貰っているのに、まるでそうさせられているかのような征服感とは逆に、 被虐感すら感じるのは何故だろうか。  オレのモノを奪われているような――そんな気分になり、またそれが違う興奮を発 芽させる。  別に絵描き故の感性――とかいうものではまさかあるまい。 「ん‥‥んっ、ん‥‥んん‥‥」  彼女は自分が興奮していることをオレに隠そうともせず、開き直ったように行動が 大胆になっていく。 「んぁ、んむっ‥‥ん、ん、ん‥‥」  幹の部分を掴むと、先端の尿道口に舌を入れようとする。 「‥‥んぷっ、ん、んちゅ‥‥んぷ!」  手で揉み解すだけだった袋に口をつけ、睾丸を袋越しに咥え込むように唇をあてる。 「んん、んん‥‥んぷっ、んぇ‥‥んぁ」 「ぅぁ‥‥ぁ、ぁ、ぁっ、で‥‥」  その必死な行為による快感と、その先輩の迫力のある姿に一気に上り詰めた。  口の中から頬に押し付けて膨らんでいるオレのモノを外からタップするように触っ て限界を告げる。 「先ぱ‥‥も、もう‥‥」  一度だけ上目遣いで視線を合わせると、彼女は激しい動きで顔に垂れ落ちてくる前 髪を掻き上げ、それが合図だったかのようにそれまで以上に必死にむしゃぶりつく。  それだけでもう、我慢しきれなかった。 「ぅあっ、あ‥‥あ、あ‥‥あぁぁ‥‥っっ!」 「んっ! んぷっ‥‥ん、ん、ん‥‥」  先輩の口の中へ目一杯放出すると、興奮しているせいもあってかそのままオレが吐 き出した精液を躊躇うことなく飲んでくれた。 「ん‥‥んん‥‥んうっ‥‥んっ‥‥んぐっ‥‥っ、けほっ! けほっ、けほっ」  粘り気のある液体が喉に引っ掛かったのか咽たが、瑠璃子先輩は最後まで飲み干す と、オレを見て微笑んでくれた。 「‥‥あ」  その笑顔で、オレは固まる。  愛しさが、何かを突破したのが自分でも判った。 「聞いてたより、苦くは‥‥」 「瑠璃子っ」  欲情よりも、愛情が上回った。  抱きしめたかった。  気がついたらオレは突き飛ばすように彼女を押し倒していた。 「‥ゃあっ!」  悲鳴をあげる先輩を抱きしめる。  細くて軽くて、温かくて柔らかい身体。  顔を押し付け、彼女の肌に擦りつける様にその感触を楽しむ。  先輩の身体からはいい匂いがする。  人の匂い。汗の匂い。彼女自身の女の匂い。  愛情の果てが性欲なのだと思う。そう思わなければ自分が耐えられない。  オレは憑かれたように先輩にむしゃぶりついていた。 「瑠璃子‥‥瑠璃子‥‥」  名前だけを繰り返し呼び続けながら、彼女の全身を愛撫する。 「んぁ‥‥ぁぁ‥‥」  首筋に唇を押し当てると、先輩はオレの頭を力を入れ過ぎないように優しく抱きし める。 「っぅん‥‥」  くすぐったそうに身体を小刻みに震わせる彼女の白い首筋を、キスマークをつける ように何度も何度も押し付ける。 「ん‥‥ぁ‥‥」  次第にオレの舌が、唇が彼女の首筋から肌を滑らせて、唾液の糸を張らせながら落 ちていく。 「ぁ‥‥んぁっ!」  舌の通る下り道が急に、上り坂になる。  弾力質な舌触りが一層強くなる。 「ぁぁ‥‥んん‥‥」  柔らかい乳房が好きだ。  突き出ている乳首が好きだ。  乳首の周りの乳輪の色が好きだ。  乳首の付け根の凹みが好きだ。 「はぁっ、んぁぁっ‥‥」  オレの口はその為にある。  舐める為に。  咥える為に。  しゃぶる為に。  噛む為に。  突付く為に。  吸う為に。  オレは彼女の胸を必死になって攻略する。  手で、口で、身体中で、懸命になって彼女の胸を蹂躙する。 「‥‥ぁぁっ! んやぁっ!」  オレは身体を沈めて、彼女の両膝に手をかけて下肢を大きく開かせると、その中心 に指を伸ばした。 「っ‥‥ぇ?」  どろどろに蕩けきっていた彼女の秘裂は、オレの指を容易に咥え込む。 「‥‥っっ、っ! んっ!」  柔らかい彼女の蜜壷から溢れ出る熱い蜜と共に、一度出していたオレの精液が零れ 落ちる。 「んぁ! んんん、んんっ! ん、ん、んんっ!」  ちゅぷちゅぷと中に入れた指で掻き回し、途絶えることのない液体を幾らか掻き出 すことを続ける。  声を押し殺そうとして失敗している先輩に、いよいよ我慢ができなくなって、最後 は口で啜っていた。 「んんんぁぁぁぁぁ! んぁぁぁっ! やぁぁぁぁっ!」  先輩の腰が面白いように跳ね上がった。 「先輩っ!」  オレは腰を上げると、自分のモノを持って先輩を真正面から犯した。 「や、やぁぁぁっ! んんんぁ‥‥んぁぁぁぁっ!」  綺麗に形の整った豊かな二つの膨らみ。  それが今、オレの腰が動く度にタプタプと上下に激しく揺れている。  熱くなっている両方の掌でそれぞれの乳房を鷲掴みにする。  手の中で形を変える乳房は彼女の身体の動きに取り残されるようになる。  その柔らかい膨らみに手を置いたまま、円を描くように揉みしだく。 「んぁぁ、んぁぁ! んんんぁぁぁ!」  肉同士がぶつかる乾いた音に、泡立つような鈍い水音が重なり続けている。  吐息と声だけが響く。 「んあ、ああああああああっ‥‥んん、んん、んんぁ! ぁぅ、ぁうっ!」  彼女が身を悩ましくくねらせる度に、お漏らししたかのように愛液が溢れ出し、ま た更に一層お互いの性器が擦れ合う。 「だいすけぇ‥‥だいすけぇ‥‥」  彷徨える瑠璃子先輩の求めに応じて、唇を重ねた。 「んぷっ‥‥ん、んんっ、ん‥‥」  必死で口を吸う彼女の頭を抱きながら、オレは横目で部屋の備え付けの鏡を窺う。  幸せ。  そして悦び。  今感じているものは、鏡の向こう側だけ到底理解しきれないものだ。  だが、一度知ってしまうと、鏡越しでもはっきりとわかってしまう。 「‥‥ゃ、めぇ! ぁ、あ、あ‥‥っ! んぁっ! ‥‥‥ぁぁっ!」  オレは腰を突き上げて、自分の世界に没頭しはじめた。  それが務めであるかのように、快楽を求めて彼女を略奪する。  精を注ぎ込む為でありながら、種の成果を欲しない非生産的行為。  オレは彼女を求め続ける。彼女もまた、オレに応える。 「んぁ、んぁ、んぁぁっ! んぁぁあ、んぁぁぁぁぁぁぁ――――――っ!」  互いが耐え切れなくなる、その瞬間まで。                            <完>

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