てのひらの記憶
 夢を見た。  子供の頃の夢だ。  悠姉さんが引っ越す前だろうか。  泣いているオレを誰かが宥めている。  頭を撫でながら、優しい声をかけてくれている。  それでもオレは泣きやむことができなくて、  泣き続けている自分がみっともなくて、  慰めてもらっていることが恥ずかしくて、  どうして泣いているのかもわからずに、  悲しいのかどうかもわからずに、  ただ、泣いていた。  それでもその人は、怒りもせず、投げ出しもせず、  ただ頭を撫でながら微笑んでいてくれた。 ―――この人は、誰だろうか。 「ん‥‥んぁ‥‥」 「おはよう。大輔」  目覚めた時、瑠璃子先輩の顔がすぐ目の前にあった。 「え? あれ?」  意識が朦朧として頭がはっきりしない。  慌てて立ち上がりかけて、何かに脚をぶつける。 「あ痛っ」 「もう、落ち着きなさいってば」  瑠璃子先輩はオレの醜態におかしそうに片手で口元を隠すように笑う。 「ああ、そうか」  陽が落ちかけた人気の無い教室。  目の前には自分の机。  ようやく思い出した。 「随分と待たせちゃって御免なさい」  クスクスと笑いながら、謝ってみせる瑠璃子先輩。  放課後、用事があるという彼女を自分の教室で待っている間に熟睡していたらしい。  途中部活動でこの教室に出入りした人間も少なくないだろうに、薄情にも誰も起こ してはくれなかったようだ。尤も起こして貰っても先輩が来る前にまた眠ってしまっ ていただろうから意味はないのだが。 「それと、良かったら‥‥」 「え?」  差し出されたハンカチの意味がわからずキョトンとしたが、 「もう‥‥」  そう言って彼女はおもむろにオレの目尻をハンカチで軽く擦る。 「あ‥‥」  夢の中で泣いていたことを、思い出した。  どうやらオレは寝ながら涙を流していたらしい。 「何か悲しいことでも思い出していたの?」 「えーと‥‥もしかしてオレ、ずっと泣いてたか?」  少し動転しながら聞くと、 「私が来た時はまだ。気持ち良さそうに寝ているからちょっと見ていたんだけど‥‥ ちょっと前ぐらいから不意にね」  茶化すことも誤魔化すこともなく、答えてくれた。 「起こしてくれればよかったのに」 「何か起こしそびれちゃって‥‥御免なさい」  どれ位の時間、寝顔を見られていたのだろうと思うと恥ずかしさもあって口を尖ら せてたが、瑠璃子先輩は笑うだけで取り合ってくれなかった。 「随分と遅くなっちゃったけど、帰りましょう」  結局、瑠璃子先輩のなすままに涙を拭われたオレは少し照れくささもあって、怒っ た顔を維持して見せた。 「もう、そんなことで怒らない怒らない」  支度を終えたオレの背中をパンパンと叩く瑠璃子先輩はいつも通り綺麗で、凛々し い顔つきの中に可愛らしさが潜んでいた。 「ということで今日は徹底的に泣かせることに」  部屋に連れ込んでから、今日の目論見を発表した。 「え? な、何よそれは‥‥」 「まあ、気にしない。気にしない」  オレ達の付き合いとして、遅くなっても一緒に帰るということは、そのままお互い の家に行くことがイコールになっていて、今日はオレの家に寄る日になっていて、オ レの家に行くことは殆どの場合イコールで、こういう日に相当する。 「あんまり変なことすると大声あげるからね」 「いや家、誰もいないし」 「うぅ‥‥」  ベッドの上に腰掛けたまま、オレの先ほどの宣言に不安そうに眉を歪める先輩に、 これでもかとばかりに笑顔を作って、肩を抱くようにして横に座る。 「第一瑠璃子先輩、いつも声あげてるし‥‥」 「‥っ!」  耳元でそう呟くと、かぁっと顔全体が高潮した。  一つ年上の先輩で、全てにはっきりしていて、自他共に対して厳しい人だけれど、 オレとこうしている時はいつもオレに全てを委ねてくれている。 「だ、だってそれは‥‥」 「うん。その方がオレは嬉しいから‥‥」  笑顔で肯定すると、瑠璃子先輩が少し困ったように眉を寄せてオレを見た。 「もう‥‥」 「んっ‥‥」  お互い顔を寄せて、ついばむようなキスをした。 「‥っ」  ――っは‥ッ  先輩の柔らかい唇の感触を味わった後、制服の上着の中に手を差し込む。 「ぁ‥っ」  そのまま手早く上着を脱がせ、リボンを解き、ワイシャツのボタンを一つ一つ外し ていく。  ボタンを外す時にオレの手に自分の手を重ねてきたが、それ以上のことはしてこな かった。 「スカートも皴になるといけないから」 「え、ええ‥‥」  オレがそう言うと、素直に腰を上げてくれる。  ホックを外して、その綺麗な脚からスカートを抜き取る。 「ん‥‥」 「‥‥瑠璃子」  回数を重ねていてどれだけ慣れていようとも、羞恥は変わらないらしく顔を赤らめ たまま固まっている先輩の横にもう一度座ると、両手でその身体にしがみ付くように して抱きしめる。 「‥‥ぁんっ」  瑠璃子先輩の身体にこすり付けるように、身体を摺り寄せると、少し困ったような 表情を浮かべたまま声を上げる。 「瑠璃子」  もう一度、名前を呼ぶ。  瑠璃子先輩と呼んだ時よりも、悦ぶことを知っているのでなるべく意識して使って いる。まだ慣れないのだけれども。 「ん‥‥」  呼びかけに対して心地良さそうに目を閉じる瑠璃子先輩の頭に手を乗せると、サラ ッとして柔らかい彼女の髪の感触が掌全体に伝わってくる。  毎日の手入れが行き届いているせいもあって、そのしっとりと濡れているかのよう な黒くて長い髪に指を通すと少しの抵抗も無く、梳くことができる。 「うっ‥‥ん‥‥」  くすぐったいのか、甘い声が瑠璃子先輩の口から漏れる。 「相変わらず、心地いいよ」  何度も撫でたり、梳いたりを繰り返しながら彼女の髪の感触を存分に楽しむ。  もう一方の手は特に目的もなく、彼女の身体をあちこち撫でるように滑らせる。 「え‥‥あ、ありがとう」  心なしか瞳を潤ませ、顔がうっすらと上気していた。 「あ、もしかしてもう期待で濡れたりしてる?」 「なっ!」  ――はむ。 「‥‥んぁっ!」  首を伸ばして耳を唇で挟んだ瞬間、彼女は身体を大きく仰け反らせる。 「い、いきなりしないでよ!」 「いつものことじゃん」  耳まで真っ赤にした瑠璃子先輩の抗議を笑っていなす。 「も、もぅ‥‥」  口では文句を言いながらも、落ち着きの無い視線はただ理由を探すだけで、確りと オレを肯定していた。 「じゃあ、改めて‥‥」  オレはそんな瑠璃子先輩に手を伸ばして顎を持ち上げると、唇に指を這わせた。 「あっ‥‥」  熱っぽい吐息が指にかかる。  同時に微かに身体を震わせたのが伝わってきた。 「ん、んぅ‥‥」  指で瑠璃子先輩の唇を撫で回すと、次第に声と共に微かに口を開いた。 「ぅあ‥‥」  導かれるままにその開いた隙間に指を差し込むと、初めは舌で抵抗するような素振 りを見せたものの、 「ん、んぁ‥‥んむっ、ぁっ」  瑠璃子先輩は軽くオレの指を唇で挟みこむ。  指を先輩の口で上下させると、誘い込まれたように  ――ちゅっ‥‥ ちゅぅ‥‥ ちゅむ‥‥  最初はおずおずと控えめに、  ――んちゅ‥‥ ぅんん‥‥ ちゅぅぅ‥‥ ちゅっ‥‥んっ  次第に舌を絡めて、熱心に強く吸い始める。 「ぅんっ‥‥ん、んぷっ‥‥ ん、ちゅ‥‥ ちゅ、ぷぁっ‥‥」  朦朧としていた目が徐々に陶酔するように見開かれ、まるで指を吸い、舐めること が全ての目的に様に行為に没頭し始める。 「先輩。その辺で‥‥」 「はふっ くふ‥‥ んちゅ‥‥ んぅっ、ぷっ‥‥ ふぅ‥‥」  その熱い彼女の口の中から指を抜いて、唾液でテカテカに光らせたその指を彼女の 頬に擦り付ける。 「はぅっ んんっ‥‥」  滑らかだった頬は熱を帯びて熱くなっていた。 「はぁ‥っ、はぁ‥っ、はぁ‥っ」  赤く唇を濡らし、胸を上下させ呼吸をしていた瑠璃子先輩を、引き寄せると残った 衣服を一枚一枚丁寧に脱がしていく。その間も先輩は呼吸を荒くしながらも抵抗せず に、脱がされるままになって身体を預けてきていた。 「んぁっ‥‥」  湧き上がってくる衝動に身を委ねているかのようで、ショーツを脱がせた時には既 にあそこが湿っているのがわかった。 「え‥‥あっ?」  最後まで脱がされてようやく、意識が戻ってきたらしい。指を舐めただけでここま で入り込むというのは、相当だ。 「ええと‥‥」  理性が状況を把握する前に、瑠璃子先輩の真っ白な柔らかいその胸に顔を埋める。 「ぁっ‥‥ちょ、んんっ」  そのままその暖かい胸に頬擦りしながら、柔らかさを掌で存分に感じながら揉みし だき、そして顔を挟むようにして乳房を真ん中に寄せる。  とても、気持ちがいい。  落ち着ける暖かさだった。  安らげる柔らかさだった。 「ふぁっ‥‥ んぁっ‥‥ んっ、あぅ‥‥」  舌を伸ばして彼女の乳首をつつくようにして舐める。  そしてそのまま口を近づけて、彼女の乳房を唇で挟むようにして咥え込む。  口に中で彼女の乳首を舌で擦るように舐める。 「やっ、やぁっ、ぁぁっ!」  舌を這わせるたびにビクンビクンと一回ごとに敏感に反応する彼女は、いつの間に かオレの頭を抱え込むようにして両手で押さえ込んでいた。  その行為によりオレは更に胸に押し付けられ、口をすぼませてそのまま乳首を吸う。  ―――ちゅぅぅぅぅ‥  唾液を舌に乗せることで殊更大きな音を立てる。 「そ、そんなに‥‥強く吸わないで‥‥、ぁああっ!!」  やっとのことで紡いだ言葉も、自身の絶叫でかき消される。  甘噛みしただけで、まるで弾かれたように身体を震わせた。 「んぁぁっ、ぁぅっ、んんっ‥‥ ん、んぁぁっ‥‥」  次第に、淫靡な音と彼女の嬌声だけが室内に響くようになっていく。 「ん‥‥ん、んぁ‥‥ぁぁ‥‥」  押さえつけていた手の力も弱まったので、顔を上げる。  すぐ目の前に彼女の顔があった。  その瞳は濡れ、目尻から溢れる涙がポロポロと絶え間なく零れ続けていた。 「ぁ‥‥」  刺激が収まったことに気付いて、彼女も顔を上げた。  顔が涙でベタベタになっていた。 「感じやすいんだ」 「ばっ‥なの‥‥ぃ‥‥」  貴方のせい――と言ったのだけは口の動きで判った。  いや、雰囲気で判った。  でも彼女の口から言葉は出ない。  泣くことを抑えようとする方が必死で、 「もう‥‥私、これじゃあ馬鹿みたいじゃない!」  やっとのことで声にした言葉はそんな台詞だった。  そんなことないよ――そう答えたかったが、口には出さなかった。  怒り、うろたえ、そして涙を流している彼女が可愛いかったから。  見惚れてしまったから。  悔しそうに、手の甲で乱暴に目を擦る彼女の手を掴む。 「ゃ‥‥」  子供のようにイヤイヤと手を振り解こうとする瑠璃子先輩を、ぐっと改めて引き寄 せた。  首を振るようにして喘いでいたせいで前の方に垂れていた髪をもう一方の手でかき あげると、  ――ぢゅっ!  そのまま大きな音を立てて唇を奪い、 「んんっ!?」  そのまま口を吸う。  ――ちゅ、ちゅぅぅぅぅっ ちゅっ‥ 「んっ、んむ‥ んんっ、んむぅ‥‥ んんっ」  動きの止まった先輩の隙を逃さず、舌を捻じ込んで彼女の口をこじ開け、息の続く 限り強く口を吸い続ける。  ――ちゅ‥ ちゅぱ‥ ちゅく‥ ちゅぅ‥っ  「‥‥んはぁっ! んぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ‥‥」  漸く離れた互いの口からは一本に繋がれた唾液の糸が引いて、どちらともなく下に 垂れ落ちる。 「瑠璃子先輩の舌、気持ちいい‥‥」 「ぁっ、はぁ‥ はぁ‥」  幾度も言った台詞をまた、繰り返す。  数え切れないほど味わって、覚えていないぐらいに感動をし続ける。  何度も愛してもなお、愛し続けたい。  舌を首に伸ばすと、咽喉の辺りを中心に嘗め回す。 「ん、はぁっ、んあぁっ」  同時に両手で暴れる彼女の胸を揉み、再び乳首を摘む。 「ん、んっ‥‥」  白い肌が高潮して赤く染まり、じっとりと汗ばむその肌の味を舐め取る。  ゼェ‥ ゼェ‥ ゼェ‥  不規則に荒く、そして熱い息が部屋に籠もる。 「じゃあ‥‥」  荒い呼吸が収まってきたのを見計らって、挿入しようとすると先輩に止められる。 「ちょっと待ちなさいよ」 「え?」  瑠璃子先輩はそう言って屈みこむと、オレのモノを握りる。  にちゅ‥‥と、湿った音と共に彼女がそれを口に含んだ。 「――ンァッ!」  素早く唇を噛み締めたものの、一瞬だけ声が漏れた。  悔しい、が、今は押し寄せる衝撃に堪えるだけで精一杯だった。  ――くぽっ くぽっ 「はぼっ、ん、ほぶ! んっ、んぼっ、んんっ」  先輩の口から立てられる音と、先輩の咽喉から発せられる声が、煩雑に重なり合う。 「あむっ、んむ‥‥ あ、ぁ、ん‥‥あむっ」  ――ちゅっ、ちゅぅぅ、‥てろっ 「は、はぁぁぁ、はぁっ」  ‥てろ ‥てろ 「は――っ」  ――てろっ てろっ てろっ  口に含んで、上下に抜き差ししたかと思えば、口を開いて舌先で先端の括れを舐め 続ける。  慣れていない行為とは言え、先輩のちょっとした動きがダイレクトに刺激となって オレの脳髄に送り込まれる。  ――ぇろ、ぇろぇろ、へろっ‥‥じゅるるるっ  溜まった唾液を吸い込む音がまたいやらしい。  耳で聴いて、また硬くなる。 「くぅ‥‥」  悲鳴が、漏れる。  ――れるるるぅっ 「ふぅ‥‥ はぅ‥‥は‥っ」  オレがどんな反応を続けていても意に返した素振りも無く、その行為をすることだ けに夢中になっているかのように、息を荒げながらも必死に舌を動かすことを止めな かった。 「んっ‥」  ――ちゅ、ちゅぱ、ぺちゃ‥れるっ、れるるっ‥ 「んっ! んんっ、んんんんんんっ!!」  必死に堪えるものの、咽喉の奥で唸るのだけは止められない。  ただ、舐められるままに、含まれるままに、吸われるがままになっていた。  咽喉の近くまで飲み込まれ、先が咽喉に触れる感触がまた気持ちよくて、苦しい。  ――んぶっ んぶっ んぶぶっ 「ぅんっ、んんんぁ、んんっ、んん〜〜〜〜〜っ!! ぷはぁ‥っ!!」  自分のモノが自分ではどうにもならないほど、膨れ、震え、痺れあがっていた。  彼女の熱い鼻息が当たるたびに、唾液が乗った舌が滑るたびに、唇で擦られるたび に、そして彼女の暖かい口の中に含まれ続けるたびに、跳ね上がり中に溜まったもの を吐き出したい射精感だけが馬鹿の一つ覚えのように続き、昂ぶり続け、最早耐え切 れないぐらいになると、格闘技で関節を決められた時のように手で彼女の肩を叩いて 限界を伝えた。歯を食いしばって必死に堪えていたので、声は出せない。  ――ぶちゅるるぅぅぅっ んぱっ! 「んはぁっ! はぁっ‥ はぁ‥ はぁ‥」 「んぁっ!」  彼女が口を放してようやく開放されると、思わずそれまで抑え続けていた声が漏れ た。唾液で透明に濡れ光った自分のモノが隆々と反り返っているのを見ると滑稽に思 えると同時に、沸々と心の奥から湧き上がるものが込み上げてきた。  したい。  したかった。 「はぁ、ぁっ、だ、大輔‥‥」 「ああ」  酷く興奮しきっているのはオレだけではなかったらしい。  しゃぶっている最中、先輩も高ぶり続けていたようだった。  頭の中がチカチカするような、軽い眩暈ににた感覚を覚えながらも身体はただ、彼 女を求めていた。 「じゃあ‥‥」  オレの言葉に瑠璃子先輩が頷くのを確認すると体勢を入れ替えて、彼女の両膝を押 し開き、太腿の内側を目の前に晒すようにしてオレの腰を入れる。  くちゅ、という濡れた音を響かせながら先端が触れる。  全身が痺れ、二人の身体が震えた。 「ひゃ、ぁぁあ‥‥」  本能的に逃げようとする瑠璃子先輩の腰を抑えつける。  恥ずかしげに腰を左右に振るが、両脚を脇で挟み込んで逃がさなかった。 「ん、んくぅっ」  そこで一気に腰を落とし、張り詰めたものを彼女の秘裂に突き入れる。  瞬時、外の空気に冷やされて冷たさを感じていたオレのものが、圧倒的な熱いもの で包まれる感触が伝わってくる。  その射精感を堪えるだけでも必死になる。 「んぁぁっ! ん、んあぁっ!」  それは瑠璃子先輩も同じだったのか、またポロポロと涙を零し始めた。  ぱんと、肌同士がぶつかる音がした。 「んぁぅっ!!」  同時に、オレの先端に先輩の子宮が突き当たる感触も。 「ぁぅ、えぇぐっ‥‥んっ!」  じっとしているのが辛かった。  そうするのが当たり前のように、腰を動かしだす。 「ん、んぁ、ぁひ!」  みっちりと締まった彼女の秘裂に、自分のモノを幾度も幾度も抜き差しする。  ダラダラと零れ続ける彼女の体液が、出し入れする際に空気を巻き込んで音を立て る。またその音がいやらしさを倍増し、興奮させる。 「ぁくっ、ぁぶっ ぁぐぅっ」  狭い彼女の中を、掻き分ける様にして腰を突き入れる。 「ぁく‥‥ んぁああああっ!」  抽挿を繰り返す。  彼女の膣内はオレの分身を恋焦がれていたかのように押し開かれ、そうするのが当 然のように奥へ奥へと招き入れる。  その愛液の蜜壷に沈ませるのが当然のように、オレの全てを飲み込んでいく。 「んぁ‥‥ んっ、んぅぅ‥‥ んっ、んぅ‥‥ んぅぅ‥‥ んぁっ!!」  何度も何度も掻き混ぜる。  そしてオレのモノが彼女の一番奥にまで達し、先端で叩くように触れると彼女は一 層強い悦びの声を漏らした。 「んっ、んぁっ」  激しく出し入れを始めるオレの身体から噴き出す汗が下になった先輩の身体に降り 注ぎ、彼女の汗と交わる。 「んんぁ、んぁぁ‥ んぁ、んぁぁぁっ‥‥」  打ち付けるように腰を突き上げる。互いの身体が打ち合う音が響いている。  動きを増すことで、音も大きくなる。 「んぁゃっ‥‥ んっ! んぁぁっ、んぁっ、あ、んんんっ、んんっ!!」  快感が襲ってくるのかプルプルと彼女の身体が震えている。  そしてその想いを肯定するように膣はオレを激しく締め付けていく。 「んあぁぁ‥‥、んんっ、んぁ、んんんんんっ‥‥ んっ!!」  半端に開いた口。  宙に彷徨わせたままの瞳。  全ての意識がただ一点に落しきっている。 「んぶっ」  ガクガクと小刻みに震える身体に、抉るように内側から突き続ける。  それしか出来ないかのように。  その行為の為だけに生きているかのように。  夢中に。  ひたすらに。  汗を振りまきながら。  喘ぎ、呻きながら。  苦しげに。  愉しげに。  何も考えられず。  二人でただ、繰り返していた。 「んっ、んっ、んんっ、んっ‥‥んっ、んんっ‥‥!!」  どれだけ擦っても、身体を動かし続けても、拡がることも緩むこともなく、それど ころか更に更に強くキツく締め付けてくる。  さっきの行為もあって、限界が近かった。  また、彼女もいっぱいいっぱいみたいだった。  そう、感じた。 「あ! あひぃっっ」  彼女の方に身体を傾け、抱き寄せようとして掛けた手が彼女の口を押し開いた。 「あっ! あっ! あっっ!」  閉じることの出来なくなったその口からは、嬌声だけを発し続ける。  その口に舌を捻じ入れるようにして唇を押し付ける。 「‥‥ぷ、ぷはっ、んぁ、んぁぁっ!!」 「ぅあっ!」  一度はすぐに唇が離れるも、息を吐くよりも早く再度唇を重ね、舌を絡ませる。 「くぅっ、くぅっ、くぅぅっ!」  彼女の内側がオレを包み込むようにうねり、絡み、絞るように揉みしだかれる。  それを懼れて、それを願って、逃げようと腰を引き、欲して腰を突き出す。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」 「んぁぁっ、んぁっ、ぁぁぁっ!」  どんなに動こうとも、彼女の膣はただオレを受け入れて、何度も繰り返す度に包み 込んでくる。  その締め付けは、まるでピッタリと張り付いているようだった。  そしてまたそのうねりから這い出すのが目的の様に必死になって、少しでも彼女の 身体を内側から削り落とすように、抉るようにして動かし続ける。  その動きがまた、刺激となって彼女からの締め付けを強ませる。 「うっ、うっ、うぅっ」 「んぁっ、んっ、んっ、んんっ」  太腿の間に突き入れるように腰を動かし続ける。  彼女の身体の中でオレのものが暴れて、撥ねる。 「んくっ‥‥‥んんぅっ‥‥ん‥‥」 「あむ‥‥はむ‥‥んむ‥‥んむむ‥‥」  まるで這い出そうとするオレのモノに、瑠璃子先輩の肉襞が必死に絡みつく。  その際限のない繰り返しに、うねる腰の回転が増していく。 「だ、だぃっ!」  先輩が必死になって、首を左右に大きく振る。  飛沫となった汗が散り、髪が波となってうねった。  その彼女の精一杯の反応に、オレは両腕で彼女の腰にしがみ付き、全力で腰だけを 目一杯動かした。 「んんんんんっっ、ああぁっっ!」  昂ぶっていたことすら忘れ、真っ白になった時、 「んぁっ!! あ、あぁぁっ、あああぁぁぁっ、ぁぁっ、ぁぁぁ――――っっ!!」  先輩の絶叫だけが、オレの耳に届いた。 「ん"、ん"んっ‥‥っ!!」  身体を小刻みに震わせながら、瑠璃子先輩の膣内に射精を続ける。 「ん"ん"っ!!」 「あ"あ"あ"っ」  ガクガクとその震えは大きくなり、二人して何かに押し潰されたかのように倒れこ んだ。  自然、繋がりが解ける。 「んぁ、んぁぁ‥‥」  それでもオレのモノは彼女の子宮へと届くことのない精液を吐き出し続け彼女の肌 とシーツを汚していく。 「だ‥、だいすけぇ‥‥」  身体中の細胞の一つ一つまでに刻み込まれた余韻に震えながら、先輩はオレの方に 顔を向けた。  トロンと涙で蕩けきった瞳、火照りきって高潮している顔、そして半開きになって 閉じることのできない唇。  瑠璃子先輩がオレにだけ見せてくれる全てがそこにあった。  キスをしたい。  そう思ったが、身体が動かなかった。  酷く、疲労していた。  そのまま二人の匂いの沁み込んだ布団で寝る。  シャワーを浴びたかったが、その気力が沸かない。  瑠璃子先輩はどうするのかと思ったが、やっぱり横たわったまま動かなかった。  落ち着いてくると、気恥ずかしくなる。  今がまさに、そんな時間だった。 「‥‥‥」  無言でいると、瑠璃子先輩は掛け布団を捲って身体を滑り込ませた。  オレも相伴に預かるべく、反対側から布団の中に入る。  瑠璃子先輩は気恥ずかしそうに視線を合わせずにいたが、それも少しのことでこち らの方を向くとキッとした顔を作った。  その表情と仕草が妙に可愛いくて困った。 「キミってば! ‥‥その、すごく‥‥」 「Hだ?」  笑いそうになるのを我慢して答える。 「そ‥‥そうよ。開き直られるともう拗ねるしかないけどね」  そう言って髪を手で梳く。苛立つ時の彼女の癖らしい。 「でも先輩も好きだろ?」 「キミのそういう態度は嫌い」  そう言いながらも、満更ではなさそうだった。  自分の感情を持て余しているようだった。 「‥‥キミは強くなったわね」 「先輩のお陰さ」 「でもその分、私は弱くなった」 「嫌?」 「だったらどんなに良かったか」  瑠璃子先輩はハァと大きく溜息をつくと、身体を支えていた肘を倒してうつ伏せに なる。枕を寄せてきて、それに顔を埋めた。  振り乱し、乱れた先輩の髪が目の前に広がっていた。 「髪、直さなくてもいいのか?」  指で広がっている部分を掬い上げるようにして纏めつつ、聞く。 「いい。もう、疲れた‥‥」  枕に潰されくぐもった声で、億劫そうな返事が返ってくる。  今日は、それが狙いとはいえいっぱいいっぱい泣かせてしまった。  その分、疲労度も大分違うのだろう。  こうも無防備過ぎる先輩の消耗ぶりに多少、罪悪感を覚えた。 「御免なー、瑠璃子」  そう言って、彼女の頭に手を触れる。  寝てしまったのか、反応は返ってこなかった。  乱れた髪を整えるように、そして慈しむように彼女の頭を撫でる。  自分の掌の温かさと、彼女の頭の暖かさ。  そして髪の手触りの心地よさを暫く味わってから、身体の位置を直してオレも布団 の中に潜り直した。  明日目覚める時は、彼女よりも先に。  もう一度、寝ている彼女の頭を撫でながら起こしてあげたくなった。  今日、オレが彼女にそう起こされたように。  そんな夢を見せてあげられるように。  彼女を泣かせるのもオレなら、彼女を慰めるのもオレでいたかったから。                            <完>

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