True love
 学期末。  いよいよ秋も終わりに近づいてきたせいか、どことなく皆落ち着きが無くなってい るような気がする。  秋が過ぎ、冬が終われば二年生には大学受験というものが待っている。  ほぼ一年間、進学先が決まるまでは受験勉強の4文字が背中に重くのしかかる。  少なくても来年の今の時期はこんなゆっくりしていられない。  そういうでは最後の冬をそわそわしながら少しでも満喫しようと浮ついている。  そんな状態だった。  まあ、どこかの美術大学に推薦で入学するだけのオレは、彼らの仲間になることは できない。どこか遠い目で見つめるしかなかった。  元々この高校も高校自体の評価を上げるために、特待生という特別扱いで招かれて 入学した高校である。  そうした自分がつくづく嫌になったこともあったのだが、今はそんなことを客観視 して思えるだけの余裕はできていた。  いざとなったら無理に続けずに止めてしまえば良い。  それぐらいの開き直りをもってすれば、何のことはない。  今はただ、今しか味わえないことを純粋に楽しみたかった。  四時限目終了のチャイムが鳴る少し前に授業を切り上げてくれた教師に感謝をしつ つ、周囲との雑談に時間を潰す。  こんな本当につまらないこと一つでさえ、いつかはできなくなるのだから。  いつからオレはこんなことを考える人間になったのだろう。  秋は人間を必要以上に感傷的にすると言うし、一応は絵描きなのだから芸術家とし ての感性がそうさせるのかも知れない。  けれども、全ては自分が落ちつけるようになった今だからこそだ。  一、二ヶ月前ではとてもじゃないがそんな余裕はなかっただろうから。 「あ、大輔ちゃん」 「ん?」 「たまには一緒にお昼どうかな?」  周りも変わり、自分も変わりつつある中でも天音はいつもと大した変わりがない。  相変わらず朝は弱く、成績もイマイチで、常にオレに頼り切っている。 ―――この娘さんも、もう少し自覚して欲しいものだが‥‥。  本人曰く努力はしているらしいが、オレから見れば小中高と一貫して変わることが ない。もう高校二年生も終わろうとしているのだから、もう少し大人になってくれて もいいのではないだろうか。  勿論、そんな天音を突き放すこともできずにいるオレの責任でもあるのだが。 「?」  オレが内心でそんなことを考えているとも気付かずに、笑顔でオレの返事を待って いる。  そんな彼女の笑顔を曇らせることを、オレは昔よりもあまり躊躇わなくはなってき ている。  彼女のためでもなんでもなく、自分の感情での選択でやっているのに、罪悪感も後 ろめたさも昔ほど覚えない。  彼女に依存していたのは、オレの方かもしれない。  彼女との距離を大事にしていたのは、オレだったのかもしれない。  そしてその彼女が必要なくなってしまったからこそ、こうして冷淡になってしまっ た自分がいる。  全く、どうしようもない男だ。 「悪い。今日も多分‥‥」 「そうなんだ‥‥」 「ああ。悪いな」  オレは別に他に約束をしているわけではないが、それは約束さえする必要がないか らだ。  それは、もう毎日のことだから。 「いいのかよ?」  オレと天音を見ていたらしく塚山が寄ってくる。 「いいんだよ。それより、人のことなんか気にするなよ」 「は?」 「あいつだってこの学園では人気ある方なんだからな」  長年付き合っている身からすればあまり信じられないのだが、天音は男子生徒に人 気がある。  そして塚山も天音のことを好きな一人らしかった。  オレ自身に余裕ができるまで、そんなことは何一つ気付きもしなかったのだが。  終了のチャイムはさっき鳴っていた。  そろそろいつもの通り先輩を迎えに行こうと席を立ったところで、入り口に見覚え のある姿を捉える。 「麻生君、いるかしら?」 「あ、御薗先輩」  今日は先輩の方も授業が早く終わったらしい。 「たまにはこっちから誘ってみようかと思ったんだけど」 「昼メシだろ? いいよいいよ」  二度頷いて席を立つ。  周りの空気が一瞬ざわついたようだったが、気にしなかった。  別に隠していたわけでもない。  オレはこの秋から御薗瑠璃子先輩と付きあうようになっていた。  きっかけは学校側の都合で絵を描かされるだけの自分が嫌になって、絵を描くこと を放棄していたオレに、瑠璃子先輩の従姉妹である君影百合奈先輩が訪ねてきたのが きっかけだった。  オレに自分の絵を描いて欲しいと言った百合奈先輩の奇妙な言動と周りの評判の裏 側には瑠璃子先輩の存在があった。  出会いはあまり良かったわけではないだろう。  親しくなる経緯もきっかけもあまり誉められたものではないかも知れない。  それでも、結局今こうして付き合うまでになったのはオレと瑠璃子先輩であって、 他の誰でもなかった。  オレの初恋の人はこの学園で教育実習をしていた悠姉さんで、身近なものへの憧れ から始まったとしてもオレに好意を持っていたのが天音で、百合奈先輩とも仲良くで きるだけにもなった。  それでも、オレは瑠璃子先輩を好きになった。  意地っ張りで、弱さを決して見せたがらない人で、少し卑怯で、そんな自分を誰よ りも自覚していた先輩。  自分を受け入れてくれる人はそうそういないと嘯いていた先輩。  自分のしたことを誰かに気付いてもらいたがっていた先輩。  苛立ってばかりいた先輩。  その全てが好きだった。  好きになっていた。  そして先輩もまた、オレのことを好きでいてくれる。  理想だ。  実に、理想だった。  そんな先輩をいっぱいいっぱい可愛がりたいと思った。  愛したかった。  二人で教室を出ると、オレは瑠璃子先輩に話し掛ける。 「なあ、先輩」 「何かしら?」 「今日は天気も良いし、風もそんなに強くないから外で食べないか」 「いいけど‥‥中庭じゃないの?」  オレの提案に賛意を示しながらも、オレが下に降りるのとは逆の方向に歩き出した のを見て、訝しげに訊ねる。 「屋上」 「屋上? この季節に」  驚き半分、呆れ半分といった表情。  すかさず 「皆がそう思うから穴場なのさ」  そう付け加える。  事実、風さえなければ今日ぐらいの陽射しなら丁度日光が照りつけてくれるので下 手な室内よりもよっぽど暖かい。  この情報は百合奈先輩から裏づけをとってあるのでまず間違いないだろう。 「それに本当に寒かったら、戻ればいいし」 「麻生君がそう言うなら私は構わないわ。じゃあ行きましょう」  いつもながら瑠璃子先輩の決断の早さは心地良い。  オレを含めて周りが優柔不断気味な面子ばかりなので、なお一層その毅然とした態 度は俄然引き立つ。 「やっぱりちょっと外で食べるにはちょっと寒いんじゃないかしら」 「こっちこっち。こっちなら日が照ってるから‥‥」  スチール製のドアを開けて屋上に出ると、階段口を周って丁度裏側に当たる場所に 案内する。  ここなら偶然やってきた他の生徒にもすぐには見付からない。 「本当。ここなら陽射しがいい感じね」 「だろ? あ、ちょっと待ってて」  満足そうに微笑む瑠璃子先輩を座らせると、オレは念を入れて屋上のドアに細工を 施すことにした。ただ、鍵をかけるだけなのだが。  これで邪魔は入らない。  絶対ではないにしろほぼ完璧な処置と言えた。  この季節に花も咲いていない花壇以外は特に何もない屋上にやってくる生徒はまず いないだろうが、絶対いないとは限らない。  念には念を入れておいて損はない。 「お待たせ」 「どうかしたの?」 「いや、大した事じゃないさ」 「そう?」  瑠璃子先輩はオレの不審な挙動にも気にせずに、その場でお弁当を広げて待ってい てくれていた。 「はい。麻生君のはこっちよ」 「ありがとう。御薗先輩」 「‥‥‥」  笑顔で瑠璃子先輩から弁当箱を受け取るが、ちょっと不満そうな顔になった。  原因は判っている。 「先輩が先だったけどな」 「え? ‥‥あっ」  自分でも気づいたらしい。 「‥‥‥」  意味ありげに目を細めて見つめると、瑠璃子先輩は困ったような表情になる。  恋愛経験は今までなかったというのは本当らしく、この手のことになると今までの 余裕な態度が嘘のように大人しくなる。  このギャップがオレは溜まらなく好きだった。  だからわざと意地悪な態度をついついとってしまう。 「コホン。じゃあ言い直すわね。‥‥はい、どうぞ。大輔」  わざとらしく咳き込んでから、改めてお弁当を渡してくれる先輩に吹き出さないよ うに堪えて笑顔で受け取る。 「ありがとう。瑠璃子」 「うん‥‥」  俯き加減になりながら、頷いてくれた。  この照れる顔がもう溜まらない。  最強だ。  年中笑顔な人の笑顔よりも、普段きりっと引き締まった人のこういうオレだけに見 せてくれる笑顔は数百倍の価値があるとオレは思う。 「好きだよ、瑠璃子せ〜んぱい」 「きゃっ!?」  ふざけた口調で瑠璃子先輩に寄りかかるようにして身体を預けると、そのまま唇を 奪った。 「ん‥‥」 「んんっ‥あっ‥‥んぁっ‥‥」  弁当を落さないように目の端で確認しつつ片手で丁寧に置くと、その手を先輩の制 服の上から膨らみに伸ばす。 「‥‥んっ‥んんっ!?」  流石にそこまでされるとは思っていなかったらしく、キスを続けながら驚いたよう な表情でオレを見る。  そこまで動揺されると、期待に応えたくなってしまうのはオレだけだろうか。 「んっ! んぁっ‥‥あ‥‥‥はぁっ‥‥」  舌同士を絡めるようにしながら、スカートの中に手を伸ばす。 「‥‥‥あっ、だ、駄目っ!!」  慌てたようにその手を止めようとするが、既にオレの指は彼女のショーツの隙間に 差しこんでいた。 「ひあっ! ぁ、そこっ‥‥」  ビクッとした大きな反応。 「瑠璃子先輩」 「‥‥‥」  オレの呼びかけに真っ赤になって顔を逸らす。 「せーんぱい」  わざとらしく、間を空けてみる。 「‥‥‥」  更に俯く。  顔を真っ赤にしているが怒っているわけではない。  それはこの手の中の感触でわかる。 「やぁっんっ! んぁっ‥‥はぁっ!」  膣に入れた指を動かすたびに、瑠璃子先輩が二度三度と激しく反応する。 「ば、馬鹿ぁ‥‥」  俺の行動を止めきれなかった手を口元に当てながら、目を潤ませつつ恨みがましい 声をあげる。 「先輩。脱がそうか」 「え‥‥ええっ!?」  一瞬、ピンとこなかったみたいだが、オレがショーツの端を摘んで引っ張ると、主 語に気付いたらしい。 「今ぐらいならいいけど、これ以上濡らしちゃうと‥‥」 「い、言わないでよ‥‥」 「脱がしちゃって、いいよね?」 「‥ま、待って!」  手でオレの胸を押すように抵抗するが、殆ど力は入っていなかった。 「だってこのまま中途半端なのは嫌だし」 「‥‥‥」 「駄目?」 「あ、後でなら‥‥ね?」  今はまだ昼休みだし、と瑠璃子先輩は口の中をもごもごとさせる。  オレの意気込みに押された上での彼女らしい妥協だった。  妥協している以上、その言葉は絶対の拒絶ではないと判断して、オレは敢えて何も 答えずに目だけで訴えてみる。 「‥‥‥」 「だ、だから‥‥その‥‥」 「‥‥‥」 「ええと‥‥」 「‥‥‥」 「ううぅ‥‥」 「唸っても駄目」  諦めたように俯くのをいいことに、抱き寄せるように身体を密着させて両手で彼女 の下着を降ろした。  スカートの下から捲り上げられるショーツを見て、欲情しない方が嘘だろう。  もうさっきからズボンの中が痛くて仕方がない。  屈んだ体勢であるのも原因ではあるのだが。 「‥‥‥」  御薗瑠璃子先輩をここまで虐められるのはオレだけだろう。  そう思うとまた股間が固くなる。  脱がされたままでいた先輩は、顔を真っ赤にしながらも拗ねた口調で呟く。 「だから‥‥」 「え?」 「キミってば、本当に強引なんだから‥‥」 「あ」  その強引さが思わぬ科白を引き出した。 「え? ‥‥あっ」 「‥‥‥」  彼女も一瞬しまったという表情を作る。 「え、ええと‥‥今のは」 「NGワードだよね」 「その‥‥」  瑠璃子先輩とオレとではお互いに取り決めがあった。  実際の恋愛経験が乏しい先輩は、見た目とは裏腹に恋に恋しているところがあった らしい。  オレ達は卒業するまで学校内など人前では今まで通り「麻生君」と「御薗先輩」と 呼び合うものの、二人きりの時には互いの名前で呼び合うことになっていた。  だからこそ、さっき弁当を貰う時も呼び方を二人きりの時の呼び方に戻したのだ。  初めの頃はその割りきり方に慣れなくて、随分と瑠璃子先輩の機嫌を損ねたもので ある。  瑠璃子先輩は恋人同士の名前の呼び合いにずっと前から憧れていたらしく、だから こその拘りだった。  そんな風に押しつけられた格好だったので、オレの方からも取り決めを追加させて もらった。慣れるまではオレが付き合い出してから使い出した「瑠璃子先輩」という 呼び方でもOKにして貰うことと、瑠璃子先輩がオレを「キミ」呼ばわりする言い方 も改善してくれるようにと。  あまり身勝手とか我侭とかに縁のない先輩だけにこの取引は妥当に写ったらしい。  すんなり受け入れてくれていた。  そしてそれ以降、さっきまでの通り瑠璃子先輩よりもオレの方が呼称の切り替えは すんなりいっていた。 「罰ゲーム」 「‥‥え、ええと」 「罰ゲームだよね、瑠璃子先輩」 「ど、どうしても?」  上目遣いをする瑠璃子先輩が可愛い。  勿論、虐め続行だ。  当然といった顔を作って頷く。 「い、今?」 「勿論‥‥」 「そんな‥‥キャッ!?」  大きくスカートを捲って、その中に頭を突っ込んだ。  瑠璃子先輩は慌ててスカートを抑えようとするが、その前にスカートの中に潜入し て目的の場所に辿り着く。  下着を取って剥き出しになっている秘所は、オレを待ち構えていたかのように潤ん でいた。  迷わず唇を押し付ける。 「あ‥‥ひゃっ!?」  そのまま舌を少し伸ばして秘唇を舐める。 「んはぁっ! んふぁぁぁぁぁっっ‥‥んあっ、ぁあっ‥‥んぁはっ!」  舌を動かして表面だけを満遍なく舐めまわすと、自分の唾液に混じって瑠璃子先輩 のむわっとした女の匂いと共に零れてくる液体がじわじわと溢れてくる。 「っぁぁ‥‥あ、ぁぁぁっ!」  暖かな液体の涌き出る場所を中心に舌を這わし、手を入れてその入り口の熱さを実 感する。 「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥んんっ、もぅ‥変態‥‥」  スカートの中で愛撫を続けられ、瑠璃子先輩はどうすることもできずにスカート越 しにオレの頭を両手で抑え、途切れ途切れになりながら文句を零す。 「いいよ、変態で」  手による愛撫は続けたまま、一度口を離してそう言うと、指で捲り上げた彼女のク リトリスに舌を伸ばした。 「んはぁぁぁぁぁっ!!」  一際大きい先輩の声が聞こえる。 「んんぅく‥‥やぁぁっ‥‥だ、駄目‥‥んはぁっ!」 「もうグショグショになってるよ」  スカートの中に顔を入れているのでその表情を見ることはできない。 「んぁ、も、もっとや、やさ‥‥あああぁぁっ‥‥あうっ!」 「瑠璃子先輩のここを可愛がれるのなら変態でいい‥‥」  彼女の荒い呼吸を感じて口を離すと、瑠璃子先輩のすべすべした太股、ふくらはぎ を順に撫でながらそう答える。 「ば、馬鹿ぁ‥‥」 「お漏らししているみたいだ‥‥可愛いよ、瑠璃子」  弄るのを止めてもそこからは次々と溢れ出して止まらなくなっている。  もう一度、手で掬ってから口をつけて啜り上げた、 「あ、んはぁっ!? んああああぁぁぁぁっ‥‥!!」  瑠璃子は壁に寄りかかっていられなくなったらしく、横滑りにずり落ちる。  オレがようやく顔を上げると、瑠璃子先輩は無理な体勢で横になったので制服の上 着がズレかかっていた。 「ぁっ‥‥あ‥‥」  焦点の合わない虚ろな瞳がオレを見つめている。 「‥‥きつかっただろ。外してあげるね」  オレはそう言って彼女の上着のボタンを外す。  白いブラウスの胸のあたりが上下するのがはっきりと見て取れた。 「‥‥‥」  直ぐにでもはだけさせて中を覗きたいのを我慢して、再び今度は指だけを使って下 半身の方に攻撃を集中する。  瑠璃子先輩に我に返させたら負けである。  ここは堪えきれなくなるまで攻め続けるしかない。 「‥‥瑠璃子、綺麗だ」 「あっ、ああっ‥‥」  陳腐な言葉ではあったが、嬉しそうに目を細める先輩の表情を見ていると幾らでも 言ってあげたい気分になる。 「んん‥‥」  音を立てて、啄ばむように二度三度と唇を重ねる。  舌を絡めてきたのは瑠璃子先輩の方からだった。 「ぁぁ‥‥んぁっ‥‥あん‥‥」  彼女のブラウスのボタンに指をかけながら、耳たぶやうなじを舌でくすぐる。 「ん‥‥はぁっ‥んんんっ‥‥‥」  彼女は切なそうな吐息を漏らしていた。  ブラウスのボタンを外し、細い彼女の身体を抱きしめるように腕を回す。  そしてホックを指で探り当て、ゆっくりと外した。  下着から解放された彼女の胸が一瞬、膨らむように見える。 「‥‥ぁ」  露わになった膨らみを下から持ち上げるように触れると、そのまま軽く捏ねるよう に手を動かす。 「‥‥んぁぁ‥‥」  乳房に顔を近づけると、乳首を唇で軽く挟み込んだ。 「んっ、んんっ‥‥んぁあっ‥‥っ!」  手でもう片方の乳房を弄りながら、嬌声をあげ続ける先輩の乳首を強く吸う。 「ん‥‥くぅんっ‥‥」  手順としては遅かったかも知れないと思いながら、彼女のスカートのホックを外し てジッパーを下ろして脱がせる。  そしてそのまま自分のズボンのファスナーも下ろした。 「大輔‥‥もっとしっかり、抱きしめて」 「ああ」  瑠璃子先輩の要望に応えて、彼女の身体をより深く抱きしめる。  彼女の柔らかい乳房の感触がオレのシャツごしに伝わってくる。  今まで散々弄っていたのだが、直に感触を味わえないことがちょっと残念だった。  その分、抱きしめる腕に少し力を込めた。 「ん‥‥はぁん‥‥んんっ‥‥っん‥‥んんぁ‥‥ぅぅ‥‥」  互いの口を吸うようにキスをする。  その隙にパンツから自分のモノを取りだし、避妊具を装着する。 「‥‥‥」  反り返ったものが、先輩の身体を欲していることを主張する。 「あっ‥‥? ‥んんああぁぁっ!! ああっ‥‥ああぁんっ!!」  一気に突き入れると、そのまま激しく腰を動かした。 「んはぁぁぁぁっ!! ひぁっ、ふぁぁ!! ‥‥んぁっ!!」  思ったよりもキツく、思った以上に熱い。  中で熔け落ちてしまいそうな程の快感が、背筋を通って伝わってくる。  その快感がまた、更なる快感を求めだす。 「ちょ‥‥んぁぁぁっ‥‥だ、あ、あああああぁぁぁっ!」  刺激が強過ぎたらしい急激に速度を落す。 「っく‥‥はああぁっ‥‥はぁっ‥‥はぁっ‥‥んあぁっ‥‥」  すると彼女の乳首が痙攣しているのがわかった。  いや彼女の豊な胸が、身体全てが波打つように震えていた。 「はぁ‥ん‥‥んはぁ‥‥あっ、ああっ‥‥」  切なそうな、苦しそうな吐息。  その声に誘われるように、深く大きくスライドを繰り返す。 「んぁ‥‥やぁぁ‥‥あっ、あっ、ああぁっ、っく‥‥!」  貪っている。  この言葉がこれほど似合う交わりは始めてだった。  愛し合っていることよりも強く、深く、強烈に彼女を感じる。  また彼女もオレを感じてくれている。  ただ激しく交わっても、これだけの快感を味わうことはできないだろう。  心の快楽があってこその、身体の快楽だ。  今、間違いなく二人は満たされていた。 「はぁ‥んんぁっ‥‥んあっ‥‥ああぁぁ‥‥あぁ‥‥んぁ‥‥はんっ、はん‥‥あ は‥‥はあっ!」  ぶつかる音。  擦れあう感触。  溢れて零れ落ちる愛液。  激しい息遣い。  全てがただ更なる快楽を押し上げるために働いていた。  脳が痺れる。  もう何も考えたくなかった。  ただ、先輩の奥底で果てたい。  出し尽くしたい。  そんな思いだけが頭を占めていた。  避妊具をつけていることなど、覚えていないほどに夢中にそれだけを思っていた。  この先輩の熱い膣をいっぱいに感じながら。 「んんんっ、んんぅ‥‥んぁ‥はぁっ‥‥はぁっ‥‥」  激しく絞めつけられる。  押し寄せる激流を感じて、オレは目一杯激しく腰を打ちつけるように動かした。 「んあぁぁぁぁっ、あんっ‥あんっ‥‥あんあっ‥‥あっ、んはぁっ!!」  髪を振り乱し、必死にオレに縋りつく先輩。  力を入れ過ぎたと後で思うほど、強く抱きしめる。 「っく、っく、っく‥‥あぁ、あはぁっ! はぁっ、はぁっ、あああぁっ、あ、ああ ‥‥んんんぅ‥‥あっ」 「も、もう‥‥」  限界はもう過ぎていた。  辛うじて、それだけ伝える。 「あくぅっ、くぅっ‥‥あ、あああっ、あん、あああああああっ‥‥ああああ!!」  首をがくがくと動かす仕草は頷いているらしい。  彼女にも余裕はないようだった。 「んあっ‥‥‥んあっ‥‥‥んあっあっあっあっあっあぁぁぁぁぁっ」  ラストスパートというよりも出す為の最後の前準備のように腰を振り続けた。  それしかできない生き物のように。 「ひゃ‥‥んぁ、んはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」  叫ぶ彼女の声をろくに知覚する事もできないまま、ありったけの精をオレは吐き出 していた。  吐き出す分身の感触だけが、オレの脳裏を占めていた。 「ぁあ‥‥」  最後の掠れた先輩の声でやっと、オレという人間を思い出すことができていた。  オレは瑠璃子先輩とセックスをした。  弛緩しきった先輩の身体を繋がったまま抱きしめながら、そんなことに今やっと自 覚できた。  風がなくて本当に良かった。  陽射しが暖かいので、季節の寒さを感じさせない。  暖められた空気だけが、オレ達を包んでくれた。  勿論、とっくに昼休みの時間は終わっていたりする。  屋上から下手に顔を覗かせればグラウンドで体育の授業をしているクラスに見付か る可能性もあるので、後始末をして服を着直すと、そのまま大人しく階段口の壁に寄 り掛ったままでいた。 「ごめんな、瑠璃子」 「‥‥いいわよ、もう」  呆れたような困ったような顔。  既に怒る機会は逸したというところだろうか。 「授業には出損なったとか、背中が痛かったとか、スカートに染みがついちゃったと か‥‥私、全然気にしてないから」 「御免」 「ふふっ‥‥」  これ位の反撃で済むのであれば喜んで受け入れよう。  オレがもう一度謝ると瑠璃子先輩は嬉しそうに微笑んだ。 「ん‥‥」  寄り添った先輩の肩を抱きながら頭を優しく撫でる。  艶やかな髪のサラサラとした感触が手の平いっぱいに広がる。  指をその髪の間に通して梳くように流してみる。 「先輩の髪、綺麗だな」 「‥‥‥あっ‥‥ん‥‥ありがとう‥」 「撫でられるのは嫌か」 「ううん。こんな風に頭を撫でられたのっていつが最後だったかなって‥‥」  うっとりしたように目を細める。 「なあ、瑠璃子先輩」 「改まって、何?」 「今日の放課後もしよっか」 「‥‥調子に乗らないの」  ジト目で睨まれた。  でもすぐに目元が緩み表情が崩れる。 「気分‥‥いいわね」  そう言うと首を傾けて、オレに身体を預けてくる。 「たまにはいいだろ。こういうの」 「‥‥うん」  目を閉じたままで答えると、そのまま眠りに入ったようだった。  規則正しい静かな寝息が聞こえる。  そんな無防備の先輩の寝顔を見つめつつ、オレは首を曲げて空を見た。  どこまでも蒼く透き通った空。  果てしなく見渡せそうなその空は、必要以上に開放感を味合わせてくれたようだ。  深呼吸をしてから、オレも目を閉じた。  次の授業ぐらいまでには起きないといけない。  そんなことを思う暇もなく、眠りに落ちていた。                            <完>

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