『はるかとカラーひよこ売り』
冬弥「あ、はるか……こんな所で何してるんだ?」 はるか「ひよこ」 冬弥「あ、ああ。そうだな。これ売ってるのか?」 はるか「見てる」 冬弥「見てるだけか?」 はるか「私はね。で、冬弥が買うの」 冬弥「……決めるな」 はるか「50年生きるよ」 冬弥「で、明日死んだら「昨日が49年364日目でした」とか言うのか?」 はるか「ううん」 冬弥「じゃあ何て?」 はるか「明日は別の通学路で売るから」 冬弥「カタ屋かよ」 弥生「いえ、カタ屋はドロンです。それは怪しげなマジック道具セット売りです」 冬弥「や、弥生さんっ!?」 はるか「あ、オーナー」 冬弥「オ、オーナー!?」 はるか「赤鬼マイク」 冬弥「それはホーナー! しかもマイクは青鬼で赤鬼はトムだ!!」 弥生「はるかさん、売れていますか」 はるか「冬弥が全部買うって」 弥生「そうですか。お買い上げ有り難うございます」 冬弥「そんなこと言ってないっ!!」 はるか「うそつき」 冬弥「どっちがだっ!!」 弥生「占めて50円です」 冬弥「だから買わないって……って50円?」 弥生「はい。全部で50円です」 冬弥「ず、随分安いですね」 はるか「冬弥にだけ特別ご奉仕価格。今ならこのカラー鶏もついてくるよ」 冬弥「成長しただけだろーが」 弥生「如何ですか? それとも、50円も払えませんか?」 はるか「冬弥、貧乏だから」 冬弥「だからって50円も出せないほど貧乏じゃないぞっ!!」 弥生「無理にとは申しませんが……どうします?」 冬弥「…………」 弥生「由綺さんはたった50円を惜しむ自称恋人さんの行為をどう思いましょうか?」 冬弥「自称は止めて下さいっ! 買いますよ、買えばいいんでしょっ!!」 はるか「わーい」 弥生「では、明日トラックで自宅まで運ばせますから」 冬弥「ったく、どーやって始末すれば……って、トラック?」 はるか「世話が大変だね」 弥生「はい。50円で50万匹のひよこを……」 冬弥「ちょっと待てっ! ここにあった全部の値段じゃないのかよっ!!」 弥生「ではまた明日」 はるか「じゃあね、冬弥」 冬弥「おいっ! 待てコラっ!!」 はるか「カラー鶏も宜しくね」 冬弥「待てーっ!!」 理奈「ねぇねぇ、弥生さんから聞いたんだけど、冬弥君って動物好きなんだって?」 冬弥「……」 理奈「あ、あれ……冬弥君。泣いてるの? どうして!?」 <おしまい>