『ごめんなさい』
――俺は彩の…あの彩らしいマンガが好きだったから ――…………………………… やっぱり… やっぱり言い過ぎちまったかな… いくら何でも、あそこまで言う必要はあったのか… 「彩……………」 ・ ・ ・ サァァァァァァァ… ん…… 「…………」 寝ちまったのか… サアァァァァァァァァァァァァ…… この音……雨か… ガチャッ… ベランダの窓を開けると、湿気と冷たい風が部屋の中に入ってくる。 サアァァァァァ…… 「………」 ふぅ……さむ… もう少し寒くなったら、雪に変わるかな…… サアァァァァァ…… 「……………」 もう…閉めるか……ん? 今、向こうの道路の物陰で何か動いたような? もしかして……人? 「………」 まさかな。この雨の中、人が傘もささずにあんな所にいるわけないか。犬かなんか だろ。 ガチャン 「さて、明日に備えて寝るとしますか……」 そして俺は暖かな寝床に身を沈めた。 おやすみなさい。 ・ ・ ・ 「………………」 そして俺は翌朝、目を醒ました。 目の前には彩がいた。 そして割れた窓からは外の風がビュンビュン吹き込んできていた。 外から投げ込んだらしい石もガラスの破片と共に床に転がっていた。 「………」 「ごめんなさい……」 彩は俺の隣で同じ布団で寝ていた。 「…………」 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 ずっと雨曝しになっていたのか彩は着ていたものを全て脱いでいた。 「……………」 「ごめんなさい………ごめんなさい…………ごめんなさい…………」 何故か俺も裸だった。 「………………」 「ごめんなさい………ごめんなさい………ごめんなさい………ごめんなさい………」 ベッドの中は赤と白のエクスタシーが刻まれていた。 今は風化してやや黒と黄色っぽくなっていたが。 「………………」 「わたし……和樹さんに……ずっと…迷惑かけてた……」 「………………」 「いつも……和樹さんが描くの……邪魔してた……」 「………………」 「もう……これ以上…迷惑かけたくなかったから……」 「………………」 「でも…一緒にいたかったの……」 「………………」 「ずっと……ずっと側にいたかったの……」 「………………」 「だから…」 「………………」 「だから……既成事実を作って身篭る事に成功したら……そしたら和樹さんも観念す るしかないから……」 「………………」 「描く時も……こみパの時も……ずっと一緒にいれると思ったから……」 「………………」 「お願い……嫌いにならないで……」 「………………」 「何でも言うこと……聞きます……」 「………………」 「どんなプレイをしても……いいですから……」 「………………」 「だから……」 「………………」 「だからわたしを…嫌いにならないで下さい……」 「………………」 「ずっと…側にいさせて下さい………」 「………………」 あまりのことで何を言っていいのかわからない俺に彼女の謝罪の言葉は続く。 「ごめんなさい……」 そして目を伏せる。 「お布団を汚してしまって……」 ちょっと待て、コラ。 <おしまい>