僕等のパンチラ大作戦

文章:久々野彰  イラスト:あどべんちゃら様 

2000/12/31


 俺は今回の作戦を、『川澄舞 校内人気者化計画』と称し、ひとり暗躍しようとしていた。

 昼休みになると、俺は嬉々として踊り場に姿を現していた。
「舞、これをやろう」
「……?」
 隠し持っていた風呂敷きに包んであった物を、舞に手渡す。
 箸を止めた舞が俺の顔とそれを交互に見比べる。

「開いてみろ」
 舞がそれをするすると解いてゆく。
「………」
 そして朱塗りの地に黒字で「祭」と白く縁取られたそれの、ケバケバしく描かれた部分をジッと凝視する。
「……?」
 横から佐祐理さんも一緒になって食べかけのエビフライの尻尾を口からはみ出させたまま、止まっていた。
「ふぇ〜…なんなんですか、これ…」
 最初に口を開いたのは佐祐理さんのほうだった。
「お祭りなんかで使う団扇だ。正式名称は知らないが、見たことあるだろ?」
「ええ、それはわかりますけど。どうするんですか、これを?」
「舞が持って立つんだよ」
「え? そうなんですか?」
「舞がどうしてもやってみたいって言うから、調達してきたんだよ」
「はぇ〜っ…舞、そんなこと祐一さんに頼んでたんだぁ」
「………」
 相変わらず舞は否定しないので、佐祐理さんは本当に舞が自主的に頼んだものと信じている。
 佐祐理さんは、今までの舞を一番よく知っている人間である。
 その佐祐理さんの反応も窺いたかったから、俺は佐祐理さんにも今回の作戦の件は黙っておくことにした。
「明日の昼休みからやるんだよな、舞。この学校の中庭でな」
 時間と場所をそれとなく指定してやる。
「………」
 聞いてるのか聞いてないのか、舞は食べるのも忘れて、団扇と向かい合ったままだった。
 これは、舞の顔に似合わず子供っぽいところと(俺が勝手にそう決めただけなのだが…)、日本の男性中心社会に積極的な姿勢を昼休み中の同校の男子生徒たちに見てもらおうという作戦である。
 で、翌日。





「こ、こ、こんなことさせる人、だいっ嫌いです!!」


 一人の女生徒の信望を失いはしたが、全国のパンチラファンにはうけた模様。


「…相沢君」
「…どうした?」
「……」


 追記。
 姉公認。



                                   <おしまい>




 あどべんちゃら様のらくがきイラストに触発されて書いた即興SSの一つです。
 当時あちらのサイトでは空前のパンチラブームが起きていて、パンチラサイトとしてその名を馳せることに。

 再掲載に当たってあどべんちゃら様よりイラストの転載許可を頂きました。
 絵描きにとって昔のイラストを、しかも落書きという形のものをわざわざ引っ張り出されるのは困惑でしょうが、このSSのきっかけとして我侭を言わせていただきました。
 快諾してくださったあどべんちゃら様、本当にありがとうございました。



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