やけに静かな夜だった

ただ満月だけが怪しく光る夜空で白い物が踊っていた

歌が聞こえる

楽しそうな歌だ

それは歌い手の気持ちそのままに軽やかに夜空を彩った

彼女は幸せだった

この時はまだ

 

 

 

 

 


遠野志貴ゲット“チキチキ”十番勝負

一番勝負:アルクェイド・ブリュンスタッドVSレン

作/柴レイ


 

 

 

 

 

「志貴!志貴!志貴志貴志っ貴!!」

「いまいくわ!すぐいくわ!だからついたらいかせてね!!」

真祖の姫は体中から湧き上がってくる欲望を思いっきり発散していた

もう我慢できない!いえ我慢する必要なんてなかったのよ!じゃあなぜはやく志貴の元にいかなかったの?

「みんなルービックキューブがいけないのよ!!」

最後に夜の公園で逢引した時、これをあげるからやってごらん

なんて直死の魔眼で誘惑したのよ

見事に正六面体の各面をそれぞれに色を同じに出来たら、ご褒美あげるって

ご褒美って言葉を聞いただけで絶頂をむかえそうになったの

そして一週間寝ずにやったのに出来ないじゃない!!

粉々にしてやったわ

いけない!志貴がわたしにくれた大切な物なのに

あわてて再生しようとしたら

なんだ最初からこうすればよかったじゃない!!

手元にはきれいな正六面体

これでご褒美もらえるわ

わたしって本当に志貴にいかれてしまったのね

一度は17分割された

そして次は心を17分割されてしまったのよ

今度は再生不可能だわ

「わたしをこんな女の子にした責任とってもらうわよぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

そんな風に叫んでいる間に、あっという間に志貴の部屋の窓の外に辿り着いたアルクェイド

窓を勢いよく開け放つ

ベッドを見ると志貴がすやすや眠ってる

 

 

 

 

 

ああああなんて可愛い寝顔

やっちゃお!!

高鳴る鼓動を抑えて志貴に近づく

その顔が直ぐ側まで見えてくると

あれっ?

なんか志貴の顔が赤い

はぁはぁいってる

なんだ志貴も準備OKなのね!!

 

 

 

 

 

アルクェイドが勢いよく、志貴がかぶってる毛布を剥ぎ取った

するとベッドの上には、両手で股間のあたりを押えている志貴と

アルクェイドを細い瞳で睨む黒猫の姿が

予想だに出来ない事態に口をパクパクさせてるアルクェイド

そして黒猫は、にゃぁ〜と鳴く代わりに

ごっくん・・・・

 

 

 

 

 

志貴の部屋の温度が急激に下がった

一触即発の危険な空気が流れる

そして息も出来ないような沈黙は絶叫で破られた

 

 

 

 

 

 

「ナニやってるのよぉ・・レン!!」

にゃぁ〜

「にゃぁ〜じゃないわよ!!あんたねぇ!!最近見ないと思ったらこんなところにいやがったのね!!」

にゃぁ〜

「よりによって志貴の部屋に潜り込んで、それで同じベッドの毛布の中でナニをやってたのよぉ!!」

ニャァニ

「ざけんじゃないわよ!!」

ふぅ〜!!

 

 

 

 

 

 

絶叫をやめないアルクェイドに、果敢にも毛を逆立てて威嚇するレン

そして部屋の隅っこで「ぐうぐう・・」と目をつむりながらいそいそとズボンを履く志貴

すると部屋の扉がトントンとたたかれた

 

 

 

 

 

「志貴さま・・どうなさったのですか?」

志貴付のメイド翡翠がやってきたようだ

「失礼します・・」

扉が開けられた

そして翡翠は部屋の様子を見て、はっと息を呑む

今まさに悪鬼の形相のアルクェイドが両手でレンを捕まえようとしている所だった

「志貴さまの部屋で何をしているのですか?」

翡翠は怒気を込めてそう叫んだ

「邪魔をするな!!」

アルクェイドの目が金色に輝き翡翠を鋭く射抜いた

ふらっと翡翠は床に倒れた

そのまま意識を失う

何故かその右手には、濃紺の液体の入った注射器が握られていた

そして翡翠(?)に注目をそらして隙を作ったアルクェイドに

チャンス逃すまじと、レンが右前足の爪を振るった

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・!!

赤い鮮血が一飛沫

「いゃああああ!!!!」

アルクェイドが両手で顔を覆って仰向けに倒れた

そして床を激しく転げまわる

「あああああああああ・・・・・・・・・」

血飛沫が巻き散らかされた

流石に志貴も目を開けて口をあんぐりとしていた

にゃぁ〜

レンが快心の一鳴き

 

 

 

 

 

やがてバタバタ暴れながら叫んでいたアルクェイドの動きが止まった

「・・・・・・して・・・・あげる・・・・・」

「し・・・せん・・・にし・・・・・る・・・・・」

「・・・・・せんのか・・・・・に・・・・・してあげる・・・・・」

「くくく・・・・・」

背筋の凍るような途切れ途切れの呟きと笑い声が

「三味線の皮にしてあげるわ・・レン」

ふぅ〜!!

 

 

 

 

 

右頬から右目のあたりまで赤い三本の線を走らせた悪クェイドが笑いながら立ち上がった

レンも再び毛を逆立て唸り声を上げつつ威嚇する

志貴はガタガタと震えていた

すると再び部屋の扉が勢いよく開けられた

 

 

 

 

 

「志貴さまぁ!!大丈夫ですか!!」

翡翠がまた現れた

「翡翠が二人!?」

志貴が目を白黒させる

白と黒の猫はメイドが一人増えようが二人増えようが関係ない

二人目の翡翠は何故か普段着なれたメイド服ではなく、ブラとパンツのみの萌え〜な格好だった

そんな萌え〜翡翠の足を、床に寝ていた翡翠(?)が払った

「あっ・・」

バランスを崩して前方に・・悪クェイドにむかって倒れようとする

「くっ・・」

今度は悪クェイド、レンの隙を与えることなく、さっと萌え〜翡翠をかわした

レンもこれは攻撃できない

しかし、レンと萌え〜翡翠をかわした悪クェイドだったが、床に寝ている翡翠(?)の側にきて無防備に背中を向けた

 

 

チクッ

 

 

「しまった!!」

舌打ちする悪クェイド、しかし悔しがるのは一瞬だった

「ああああんーー」

艶かしい喘ぎ声が漏れた

アルクェイドが再び身悶えて倒れ床を転げまわる

先程から志貴の部屋で叫ぶ転げまわると大暴れだ

何故に秋葉は気がつかないのだろう!?

 

今日は胸に睡眠薬の軟膏を塗っておきましたからね・・

 

 

 

 

 

「あっあっ・・ああああ・・・もうダメぇ・・・」

当初の目的通りの喘ぎ声を出せてよかったね、アルクェイド

「一人じゃダメよぉ!!」

「ひっ!!」

はあはあ興奮しながら立ち上がったアルクェイドの一番側にいたのは、萌え〜翡翠だった

「もう誰だっていいわぁ〜!!」

「いやぁ〜!!」

「ごめんね・・・翡翠ちゃん・・・」

そこまで呟いてもう一人の翡翠(?)が意識を失った

 

 

 

 

呆然としていた志貴だったが

にゃぁ〜・・ペロ

レンが可愛く鳴いて頬を舐めたので我に返った

そしていつのまにか窓から優しい朝の陽射しが

「朝だね・・・じゃぁ行こうか、レン」

にゃぁ〜ゴロゴロ

喉を鳴らして足元に顔を擦り付けてきたレンを志貴は抱き上げ

そして健やかな顔で部屋を出て行った

「お腹空いたね、秋葉にミルクでも用意してもらおうな」

胸に抱いたレンの顎の下を優しくさすりながら志貴はそう語りかけた

ゴロゴロ

レンも気持ちよさそうに目をつむって喉を鳴らしていた

 

 

 

 

 

 

「あああん・・あっあっ・・覚えてらっしゃいよ、レン!!」

「志貴さま・・・・・なんて酷い・・・・・・」

 

 

 

 

 

部屋のドアが静かに閉じられた

ダブル翡翠の乱入にて、ノーコンテスト

遠野志貴ゲット“チキチキ”十番勝負は始まったばかりである

 

 

 


 

始めまして・・・柴レイと申します

月姫のSSに初めて挑戦してみましたが・・・

こんな感じに仕上がってしまいました(^_^;)

十番勝負とか書いてますが、続きの構想は今のところありません

久々野さん、掲載ありがとうございます

そしてすみませんでしたぁ m(__)m



 柴レイ様より戴きました。

 破天荒SSとでも呼べば良いのでしょうか……初っ端から最後までブッ飛び続けております(笑)。
 全身から欲望をダダ漏れさせながら疾走する白猫な姫君と、既に馳走を済ませている使い魔の黒猫の諍い。
 特殊なのは既に志貴自身は黒猫陣営にいるっぽいところが(笑)。最初の某玩具を与えていた時点で厄介払いっぽいですし(爆)。
 作品の内容もさることながら、これだけの欲望に満ちたテキストを書ききった貴方に驚嘆!な久々野デス(笑)。
 凄まじい熱量を感じました。我々に「萌え」なんてまだまだ甘っちょろいということを教えてくださいました(爆)。
 さり気なく琥珀が地味に消えている(地味だったか?)ところが特にもう。
 真打の秋葉やシエル先輩の出番がなかったですが、そこまで絡めると呼吸困難に陥りそうです(笑)。
 柴レイ様、本当にありがとうございました。



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