魁!楓塾
「楓お姉ちゃん、宿題でわかんないとこがあるんだけど…」 「…どこ?」 「ん。ここだよ」 「…英語……I like…」 「うん。その後の単語が、わかんなくって」 「…C、U、R、R、I、E、D、R、I、C、E…」 「うん、なんて読むのかなあ?」 「ですから、C、U、R、Rと…」 「アルファベットは、読めるってばあ」 「……」 「楓お姉ちゃん、ひょっとして、その単語、読めないの?」 「…読めます」 「そうだよね、高校生だもんね」 「…初音」 「うん」 「この単語は、別に難しい単語ではありません」 「そうなんだあ」 「はい。書いてある通りに、発音すればいいんです」 「そうなの?」 「そうです。そして、書いてある通りに読めば、あなたもよく知ってる言葉を、思い出すはずです」 「ええーっ」 「では、ヒントを差し上げます。最初のほうは、『クリ』」 「クリ?んーと…クリ、何かなあ…栗饅頭とか、栗キントンとか?」 「ハズレです。不正解な初音には、寝癖を一年分、プレゼント」 「そ、そんなのやだよお」 「では、第2ヒントで正解したら、ナシにします」 「う、うん。私、頑張るね」 「では、第2ヒント。最後のほうは、R、I、C、Eと書いてありますが、CEは、実は、『ス』と発音しないと、こ の場合、意味が通らないようです。誤植なのかも知れませんね。つまり、『リス』と読んでください。さて、正解は?」 「え、ええっと…最初が、『クリ』で、最後の方が、『リス』だから…え!?」 「わかりましたね、初音」 「わ、わかったけど…い、いいのかなあ、こんな言葉、教科書にのっけて…」 「最近は、そういう事を早めに教えるそうですから、大丈夫なんでしょう」 「で、でも、それだと、これを訳すと、私は、そのク…スが、好きです、って、なるよ?」 「きっと、男の人なんでしょう」 「そ、そうかもしれないね」 「でも、女でも、好きな人は、いるでしょう。初音は、好きですか?」 「や、やだあ、楓お姉ちゃんたらあ」 「初音とも、こういう女同士の話ができるようになって、とても嬉しいですよ」 「え、えへへ…」 「では、忘れないうちに、すぐノートに書いておいた方がいいでしょう」 「うん。ありがとう、楓お姉ちゃん。明日は、先生にあてられる順番だから、すごく助かっちゃった。えへ」 そのやり取りを聞きながら、俺、柏木耕一は思った。 ああ… 明日… 初音ちゃんの学校に、行きてえええええええええええっ!!