番猫
「はぁ」 感心したのか呆れたのか、先輩の口調から読むことは出来なかった。 「遠野君らしい判断ですね」 感心の方か、呆れた方か、やっぱりそこからは読めない。 「でも・・・・」 「はい?」 複雑な表情の先輩。 俺がレンと契約を結んだことに支障はないらしいけど、どうしてこんな顔するんだろ う。 「あの使い魔も気の毒というか救われない運命というか・・・・・」 表情が憐れみへと変わる。 「生存時間が長くない主人に作られ寝てる時間が長い仮主人に引き取られ、やっと結 んだ契約相手が長生きしそうにない人なんて・・・」 「・・・・・・・・・ほっといてください・・・」 「それであの子に何か指示は出しているんですか?」 「いや別に。勝手気ままにいてもらってるよ。家の連中からも可愛がられているみた いだし。せいぜい家の中で俺以外の前で「人型」にならないことと夜外に出ないよう に、ってことぐらいかな」 指示を出すというのはそれぐらいか。 「使い魔にも本能というものがあるのは遠野君も知っているでしょうけど・・・・」 意味ありげな顔を向ける先輩。 「あの妹さんや割烹着のメイドさんによくなついてますね」 ・・・・・・・・・・・・・・なるほど、そういうことか。 「ご推察のとおりだよ先輩。秋葉や琥珀さんが一方的に可愛がっているだけさ」 レンが懐いているのは翡翠だけだ。 秋葉や琥珀さんにはあくまで「義務的に」なついているだけだ。 特に琥珀さんにはかなり警戒心を抱いている。 「・・・・・・・・・・・・・・・なるほど」 納得と満足、その二つを合体させた表情を見せる先輩。 そして にまっと笑う。 何かろくでもないことを考え付いたかのような笑いだった。 前にメシアンに忍び込もうとした時と同じ顔。 「何か企んでいるんですか?」 「いえ全然」 即答。 怪しさ大爆発。 この人結構狸だから。 「遠野君、今無礼な発想しませんでしたか?」 「いえ全然」即答返し。 「・・・まあいいです。それで遠野君、いい案があるのですが・・・」 「兄さん、少し疲れていませんか?」 いつもの夕食後のお茶会。 「え?そう見えるか?」 「翡翠もそう思うでしょう?」 秋葉が翡翠に振る。 「はい。朝も起きられる時間が遅くなっていますし・・・・」 心配げな顔。 心当たりがある分辛いものがある。 実は最近毎晩アルクェイドが押しかけてくるんだ。 真夜中に忍び込んできては夜明け少し前までお喋りに付合わされている。 結果寝不足になり、起きるのが遅くなって翡翠に迷惑をかけ、朝秋葉に嫌味を言われ ・・・さっきも先輩にそれを指摘された。 アルクェイドと話をすることについては苦痛じゃない。 むしろ楽しい。 あいつの表情が豊かだから、あいつが楽しそうに話をするから。 だが実際のところこう毎日続くと辛い。 寝不足になって疲れも溜まる。 「志貴さん、お薬お出ししましょうか?」 「いや、いいよ。大丈夫」 琥珀さんの申し出を丁重に断る。 「俺は大丈夫だから。大体本当にしんどかったらここにいないで休ませてもらってる って」 「・・・それは、そうですけど・・・」 ・・・・・・・・・まいったな。 秋葉が本当に心配そうに俺を見ている。 翡翠も同様に。 琥珀さんも。 こういう時は気を逸らすしかない。 と、その時。 とことこと歩いて来る黒い影。 レンがのんびりと舞い込んできた。 「あら?」 それに琥珀さんが気付く。 「いらっしゃい、猫さん」 膝まずいて話し掛ける。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 猫状態のレンはすかした顔で部屋を歩いている。 「紅茶・・・よりもミルクの方がいいかしらね」 秋葉の気もレンに向いてくれたようだ。 秋葉はレンを気に入っている。 『上品な感じがしますからね、この子、気品があるというか・・・』 秋葉に気に入られたらこの家での生活は保障されたと思っていいだろう。 人型になっているところを見られたらアウトだろうけど。 「・・・・・どうぞ」 この中で一番なついている翡翠が皿にミルクをあけ、レンの前に差し出す。 本来レンはミルクなんて飲む必要はないのだが、それでもちゃんと飲んでくれている。 「本当に気品があるわね、あなたは」 優しくレンを撫でる秋葉。 こうやってみると本当にハマる。 いつもこうだといいんだけどなー・・・ 「兄さん。思うことがあるのなら声に出して下さい」 ・・・・・・・・・・・鋭い奴だな相変らず・・・・ 「別に」 そう答えておこう。 そんなまったりとした時間を過ごし、夜のお茶会は終了した。 レンはいつのまにか姿を消している。 たぶん部屋に戻ったのだろう。 各自部屋に戻っていった。 さて。 これからが問題の時間だ。 きっと今夜もアルクェイドはやってくる。 来たら来たでしょうがないけど、できれば遠慮願いたい。 そこで昼に先輩に言われたことを思い出す。 『使い魔に妨害してもらえばいいんじゃないですか?』 レンぐらいに自我が目覚めている使い魔ならできることらしい。 そして言われるままにレンにそのことは頼んである。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 レンは何も言わない。 ただ、笑って頷いた。 それに一抹の不安が残る。 レンとアルクェイドは知らない関係じゃない。 レンの前の飼い主、といったところだからな、アルクェイドは。
そこが不安だったりする。 レンにそんなことをさせたらアルクェイドはどうなるのか。 (元)飼い犬に噛まれ・・・もとい(元)飼い猫に引っかかれるようなものだからな。 きっと逆上するぞ。 そんなことさせていいんだろうか・・・・・ ぽす っと、膝の上に黒いものが乗ってきた。 そして一瞬の間に姿を変える。 人型に。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 何も言わないけどにこっと笑って俺の首に手を回す。 心配しないで大丈夫 目がそう言っていた。 それと同時に頬を染める。 だから、力を頂戴 疲れが倍化しそうだな、こりゃ・・・・・ そして深夜――――――――― 軽やかに遠野家の塀を乗り越える白い影。 月光に白が鮮やかに映える。 「ふーんふんふふーん♪」 声も本人も弾んでいる。 純白の姫アルクェイド。 今夜も元気だった。 「今日は何の話をしようかなー♪」 あれこれと話題を考える。 「でも志貴の話も面白いんだよねー♪」 志貴の話は面白い。 「この間の「足が痺れて立てなくなる」話も面白かったし・・・」 ずっと「正座」ということをしていると足が痺れるという話を聞いて志貴の部屋で本 当に試してみた。 本当だった。 「くすぐったくって足に触るとびりびりした。面白かったなー」 実は今でも家でアルクェイドはやっていたりする。 「今日も面白いこと教えてもらいたいし・・・」 弾む。 金色の髪が、ロングスカートが、心が、身体が。 「早く会いたいよ、志貴」 森を越え、中庭に入ろうとした時――――――――― 「ん?」 見覚えのあるものを発見した。 黒い四足で動く生き物。 猫と同じ、その姿。 「レン?」 呼ばれたものの目が呼んだ方を向く。 特有の瞳が月光に輝く。 「なんであんたがこんなところにいるわけ?」 家からいなくなった時から探し出そうともしないでほったらかしにしていた元飼い主 を一瞥する。 「こら。何か言いなさい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ぷい。 しばらくアルクェイドを見つめた後、レンはぷいと横を向く。 「むー。あんたわたしに喧嘩売ってるわけ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ぷい。 おなじ態度。 「・・・・いくら温厚なわたしでも怒るわよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」たたっ 一瞥をくれた後レンが走り出す。 「あ!こら!待ちなさい!」 それを追いかけるアルクェイド。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・くー」 志貴の部屋。 志貴は眠りについていた。 が、 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん」 目を覚ます。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 半開きの目で時計を見る。 「・・・・・・・・・・・くそ・・・まだこんな時間かよ」 ため息をついてそう呟く。 「アルクェイドの押しかけにこの時間に起きる癖がついちまったなこりゃ」 時計はアルクェイドが来る時間を指している。 「そろそろか・・・・やれやれ」 志貴は寝るのを諦めた。 「どうせあいつは来るに決まっている」 レンにどうこうできるはずもない。 「観念して起きていよう」 「お困りのようですね」 「どわああっ!」 不意に背後からかけられた声に飛び上がる。 かなりの速さで走るレン。 「こらっ!待ちなさいよレン!」 それを追うアルクェイド。 当然言うことを聞くはずもなく、逃げ続けるレン。 「もうっ!本気で怒るわよ!」 どう考えても既に本気で怒っているような声で叫ぶアルクェイドを無視。 足を止めずに一目散。 中庭から建物の中へ。 ちら、と後ろを向く。 すごい形相で追ってきていた。 走る 追う 走る 追う 走って走って 追って追って 屋敷の中を縦横無尽 途中何度か志貴の部屋の前を通っているにもかかわらず入る素振りも見せずにレンを 追いかけている。 今彼女の頭にはレンを捕まえること以外になかった。 そしてレンは一つの扉の前で止まった。 「・・・・・・・・・・観念したようね・・・・」 アルクェイドの眼が怪しく輝く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 対してレンはあくまでもクール。 「・・・・・なら大人しく・・・・・」 アルクェイドの動きに合わせ身体を屈める、瞬時に逃げられるように。 ・・・・・・・・・・・・・どこから? 目の前の凶悪な顔をした元主人から。 どこに? 「その態度を改めさせなさい!」 正面に! レンが駆け出す。 アルクェイドが来る方向へ! 「・・・・な!」 面食らうアルクェイドの脇を電光石火の速さで駆け抜けていくレン。 「・・・この・・・逃がさないっての!」 と、踏み込んでバックステップをしようとした時・・・・・ だごんっ! 壮絶なキスをした。 開かれたドアに。 ひらひら〜とアメコミアニメのように紙のようになって倒れるアルクェイド。 「・・・・・・ったぁい・・・・・」 さっきまでの殺気はどこへやら、赤くなった鼻を涙目でさすりながら恨めしげに開い たドアを睨みつける。 「誰よ!危ないじゃない!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 誰かが出てくる。 その出てくる人物の放つ異様なプレッシャーにアルクェイドが引く。 「な・・・・なに・・・・?」 吸血姫アルクェイドにプレッシャーを与える人物がゆっくりとその姿をあらわした。 その人物は――――――――――――――――― 「あ、妹だ」 「その呼び方はやめてくださいと言ったはずです!」 遠野家当主、遠野秋葉その人。 仁王立ちでアルクェイドを睨みつけている。 「だいたい何故あなたが屋敷の中にいるんですか!」 その迫力にたじろぐアルクェイド。 「え、ええっと・・・そりゃあ、志貴に会いに来たに決まっているじゃない・・・」 ぴきっ 秋葉の顔が引きつった。 「あなたですね・・・・・・・兄さんが最近疲れている原因は・・・・・」 「ええっ?」 秋葉の言葉に大げさに驚く。 「いつも志貴、元気だよ?」 困ったような照れくさいような、そんな感情が入り混じった表情でいつも志貴は待っ ていてくれる。 そうアルクェイドは思っている。 「兄さんは人がいいからそんな素振りを見せないだけですっ!」 どうせ断り切れずに迎え入れているんだろうと秋葉は決めてかかっていた。 そしてそれは正解だったりする。 「あ、それはそうかも。志貴っていい人だよねー」 能天気な賛同をさえぎるように 「とにかく兄さんに害を及ぼす存在は放ってはおけません!」 言い放つと同時に秋葉の髪が紅に染まる。 「あ、すっごーい、手品みたい」 秋葉の変色した髪を珍しそうに見つめるアルクェイド。 「ねえねえ妹、それどうやってやるの?」 無邪気に笑うアルクェイド。 だがそれも一瞬のこと。 気付いた。 ただならぬ冷気に。 「・・・・・・・・・・なんか・・・・寒いわね」 そしてその冷気の元に。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妹・・・なんか怖いんだけど・・・」 見えた。 秋葉の背中に得体の知れないオーラが。 ゴゴゴゴという字まで浮かんで見える。 「・・・・・・遠野家当主として・・・・・」 「・・・・・・・・えーと・・・・・・・・」 殺気。 尋常じゃない殺気に思わずたじろぐ。 「排除します!」 言うと同時に紅が線を引くようにアルクェイドに迫る! 「・・・・・・・・・・て」 撤退。 そう言おうとした、が、それよりも紅が早い! ・・・・・・・・・った−いっ!」 それでもかわしながら叫んで、逃走する。 「・・・・・・・・・・・・・逃がさない!」 秋葉も態勢を立て直し、すかさず追撃に移る! 「なんか外賑やかじゃないですか?」 「え?そうですか?」 ここは琥珀さんの部屋。 疲れが溜まっているように見える俺をアルクェイドから逃がしてくれた。 ・・・・・・・・・て、ことなんだけど・・・・・・・ 俺、誰にも言ってないよな・・・・アルクェイドが毎晩部屋に押しかけてくるって。 どうして琥珀さんそのこと知ってるんだ? 「ささ志貴さん、お茶をどうぞ」 「あ、どうもありがとう」 出されたお茶を飲み干す。 「あ、これ梅昆布茶だね」 「ええ、対志貴さん用究極兵器です」 心にまで染みてくる暖かさ。 まさに俺用究極兵器だな。 「・・・・・それにしても」 「はい?」 「やけに散らかっているね、部屋」 琥珀さんの部屋は服の生地らしきものが散乱していた。 「ええ、ちょっと服を作ろうと思いまして」 脇にスケッチらしきものがある。 これを作ろうとしているのか。 ・・・・・・・・・・・・・ん? やけに可愛らしい服だなこれ。 胸にぼんぼんがついていたりするしスカートも膝上だったりする。 まるで子供用だ。 「もうすぐ完成するんですけどねー」 ハンガーには完成直前のものがあった。 改めて見ると完璧に子供服だった。 「これ、誰の用?」 秋葉にも翡翠にも当然琥珀さんにも絶対に似合いそうにない服だぞ。 「またまたー、志貴さんたらおとぼけなんですからー」 どごんと背中をど突かれる。 「あたっ!な、なんなんですかっ!」 この人いきなりだから何がなんだかさっぱりだ。 「あんな可愛い子を独り占めしようなんて、卑怯ですよー。まあ気持ちはよーくわか りますけどねー」 ・・・・・・・・・・・・・・・・え? い、今琥珀さんなんて・・・・・? 「私知っているんですから、ねーレンちゃん」 言われて気付いた。 部屋の隅で丸くなっているレンを。 そして見た。 琥珀さんの声で顔を上げるレンを。 「あの・・・まさか琥珀さん・・・・・」 「レンちゃんこっちきてー」 言われてととっと琥珀さんに駆け寄るレン。 そして琥珀さんの膝上に収まる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 唖然。 「本当かわいーですねー♪」 なでなで。 レンはされるがままでじっとしている。 信じられない。 「てゆーか、いつの間に?」 「いつだっていいじゃないですか。あ、安心してください。秋葉さまにも翡翠ちゃん にも内緒にしておきますから」 「あ、それは是非!」 懸念事項の一つはすんなりと取り払われた。 と、それは置いといて。 「それより志貴さん、どうですか?そこの服。似合うと思います?」 「え?」 聞くつもりが先に聞かれてしまった。 「レンちゃんがご主人様の反応を知りたがっていたので、本人の目の前で率直な感想 を聞かせてあげて欲しいんですけど」 本人と言うより本猫ではないかと思いつつ、 「あ、ああ。似合うと思う」 とゆーか、いつもの服と同じデザインじゃないかあれって。 「よかったねーレンちゃん」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 心なしか嬉しそうに見える。 ・・・・・・・・・・ま、いいか。 「てったーい!てったーい!」 「生かして屋敷から出さないわ!」 「・・・・・・・外、騒がしくない?」 「ああ、多分秋葉さまが闖入者さんを追いかけているんだと思います」 ちん・・・・にゅうしゃ、ってひょっとして・・・・・ 「レンちゃんが一人でアルクェイドさんを追い払うのは難しいって悩んでいたみたい ですから助言してあげたんですよ、いい方法を」 「・・・・・・・・・その方法って?」 想像できるが一応聞いてみよう。 「対処しやすい人に対処してもらうのがベストですよ、って言いました」 ・・・・・・・・・この人・・・・・・・本当に怖い。 逆らわないようにしよう、絶対に。 「それより志貴さん、せっかくだから少しお話しませんか?」 にこっと微笑む琥珀さん。 「あ、はい。そうしましょう」 底知れぬ怖さから同意するしかなかった。 「で、どんなお話をしますか?」 「それはやはり、この屋敷にまつわる話を」 前言撤回。 同意しかねることもある。 「俺、そろそろ部屋に戻ります」 目線を合わせないようにして立ち上がる、と。 「・・・・・・あれ?」 くらっと・・・・頭が・・・ 「あらあら。無理ですよ志貴さん」 「・・・・え?」 「余計な力を入れないでいられるように筋弛緩剤をお茶に入れておきましたから動け ませんよ」 ぞく 背筋が凍りつく。 「落ち着いてください、大丈夫ですから。一晩立てば元に戻りますから」 で、でもその一晩の間俺はどうなるというんだ! 「それに怖がることないですよ、所詮噂話。ちょっと信憑性があるだけですから」 し、信憑性があるなら嫌ですって! こ、これは駄目だ! そうだ!レンに助けを!・・・・・・・・・・・・・って 「レ、ンは?」くそ・・・呂律が回らない・・・ 「ああ、レンちゃんならさっき出て行きました。私たちに気を使ってくれたんですね きっと」 に、逃げたのか? ず、ずるいぞレン・・・・ 「ささ志貴さん、そこで横になったままでいいですから聞いてくださいねー。まだ夜 明けまで時間はたっぷりありますから、ゆっくり話をしますねー」 く、くそ!こうなったら最後の手段だ! 自力で眠りに突くしかない! 気を落ち着けて・・・・・・そう、リラックス。 そうすれば段々と・・・筋弛緩剤の効果も手伝って・・・・・ 「てったい!てったいーっ!」 「逃がさないと言ったはずです!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・くそ。 「やかましくて眠れないじゃないか!」 「え?志貴さん寝ていたんですか?」 し、しまった! 「仕方がないですねえ、じゃあ始めから言いますから今度は寝ないで下さいね」 ・・・・・・・・・これなら。 素直にアルクェイド待ってた方がずっとよかったんじゃないだろうか・・・・・ レンはとてとてと歩いて、志貴の部屋に入る。 そしてベッドに潜り込む。 それが志貴をアルクェイドから守るためだということは誰にもわからないだろう。 右を向き、左を向く。 そして小さく欠伸をして・・・・・・・・ そのまま眠ってしまった。 『教訓;猫に番は勤まりません』 おしまい。