『届かぬ想い』(いや、無理)


2001/01/23


「すまない……」
 口をついたのは、ただ一言。
 そんな言葉は何の償いにもならない事も、むしろ何も言わない方がまだしも
彼女は救われるであろう事も、分からない訳ではなかった。
 だが、俺にはそう言うしかなかった。俺の脆弱さは、自分が苦しみ続ける事
より彼女に傷を押し付ける事を選択していたからだ。
 情けなかった。自分で自分を唾棄したい思いだった。きっと、彼女もそうだ
ろう。
 けど――彼女は。
「……そうですか」
 ただ、優しく。そして、酷く哀しく。
 千鶴さんは、微笑んだ。
「分かっていました……耕一さんの心の中に住んでいるのは、私じゃないって」
「……」
 ……痛すぎる。
 彼女の微笑みは、直視するには――痛すぎる。
 見えざる手で押さえつけられたかのように、俺は俯いていた。
「……夢を見るんだ……」
 もう、逃げ出したい。胸中のその声を、俺は自分の中の強さをかき集めて封
じ込んだ。彼女を傷つけてでも決着させることを選んでしまった以上、せめて
最後まで決着させる事が俺の責務なのだから。
「夢……ずっと、ずっと昔の夢。
 俺はそこで、一人の少女に出会った。
 そして……愛した。
 その少女が、いるんだ。現実に、俺のそばに。
 だから……
 ……だから……」
 ふざけた言い訳。誰が聞いても、そう思うに違いない。
 彼女がそう思い、俺を侮蔑したら――俺はどんなにか、楽になれたろう。
 だけど、彼女は……頷いた。
 全てを許容する瞳。
 ……彼女は俺に、復讐しているのだろうか? どんな態度を取れば、俺が一
番苦しむかを知っていて……。
 だとするなら――なんて、優しい、残酷な復讐。
「行ってあげて下さい」
 春の氷のような笑みを浮かべながら、彼女はかすれた響きを持つ声でそう言
った。
「私には、分かります。……分かるんです。
 いえ……知っています」
 彼女は、ちら、と視線をそらした。
 つられて動いた俺の眼が――ふと、二階の窓からこちらを見下ろしていた影
が逃げるように消え去るのを捉えた。
 顔はよく見えなかったが、あの肩の上で切り揃えられた黒髪は……
「その子も、耕一さんのことを待っているって。
 だから――早く」
 そこまで、だった。
 彼女は口を押さえ……鳴咽をこらえた。
「早く……行ってあげて……」
「……」
 俺は、彼女に背を向けた。
 本当は、別の事をしたかったのだ――彼女に駆け寄り、肩を抱き、涙を拭っ
てやりたかったのだ。だが、それだけはしてはいけないと、今の俺にそうする
資格はないのだと、痛いほど知っていたから――
 走る。
 一秒でも早く、彼女の前から姿を消すために。一秒でも早く、彼女が好きな
だけ泣き叫べるように。
 俺は走った。
 心の中で、口に出来ない謝罪を叫びながら。
 ――すまない。
 すまない、千鶴さん――


 そして、俺は……彼女のもとへ行った。
 五百年の時を越え再会した俺の恋人は、切れ長の眼、美しい黒髪をそのまま
に、そして――


耕一「エディフェルゥゥゥ!! 俺だ、次郎衛門だよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
綾香「きゃー!? 何よあんたはぁぁぁぁぁぁぁ!!??」(げしゃ)


 ハイキックが得意だった。




                            人違いエンド。

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 えー。何となくタラタラと書いてみた話です。
「エディフェルと綾香って似てるよなー。あ、これギャグにならんかなー」と。
 それなりにウケてもらえれば本望ってとこですか。
 全然面白くなかったら済みません出直してまいります味噌汁洗顔して。

 また何か書いたら送り付けるかもです。そん時はどーかまたよろしく。
 ではー。



 わざとだな! わざとに違いないっ!!
 柏木耕一っ!! 千鶴さんが許しても俺は許さんっ!!

 もうプンプンです。
 クリリソが死ん時(三度目か四度目)と、  昔、誰かが書いた耕一と綾香がくっつくSSを読んだ時ぐらいに超激怒しております。
(いや、どっちの時も怒ってないけど)


 危うく即削除っぽいメールタイトルで送られてきたハイドラント様のSSです(爆)。
 現在HPが更新が停止していて、帝政暗黒世界から共和制暗黒世界に名前が変わっていたりしますが近況はたまに更新しているようです。
 いや、いるところにはいるらしーですが(何が意味ありげな言い方(爆))

 久しぶりにハイドラント様のSSを拝見しましたが、サクサクしたノリは意外でした。
 きっともっとドロドロした三角関係と痴情の縺れが入り乱れるお子様には読ませられそうも無いSSが出ているかと思ったのに……プレゼントしてくれると思ったのにー(眼窩無き人っぽく号泣)
 と、ここまでマトモに書いていないのは本当に申し訳無いので……目のつり上がり方、好戦的な性格、猫属性、どれをとってもエディフェル=綾香説は頷けないことも無いですね。
 一発ギャグとして終わらせるには勿体無いテーマかもしれません。
 そんなことをあれこれと考えさせる楽しさがこのSSにはありました。

 ハイドラント様、本当にありがとうございました。



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